第42話 とあるカワウソの…
ある愛の物語。
昔々あるところに、おじいさんカワウソとおばあさんカワウソがいました。
おじカワは川へサバ狩に。
おばカワも川へ心の洗濯に行きました。
川で、おじカワは居るはずもないサバを探し、おばカワは確かな心の浄化を感じていると、ドンブラコ、ドンブラコと大きな桃が流れてきました。
そして、その桃を……
スルーします。
2匹は巣へ戻る途中、綺麗に咲く桜の木の下に1匹の赤ちゃんカワウソを見つけました。
「きゅーきゅー」
玉のように可愛い雌の赤ちゃんカワウソです。
顔にある桜のマークがとってもキュート。
可哀想に。親に捨てられたに違いない。
カワウソの世界は厳しい弱肉強食の世界。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。
おじ&おばカワは、この赤ちゃんカワウソを育てることにしました。
それから数年。
おじカワは、いかにサバが素晴らしいかを熱心に教えーーー
おばカワは、決してブレることのないメンタルを丁寧に鍛えましたーーー
なんということでしょう。
2匹の匠の手によって、玉のように可愛かった赤ちゃんは、誰もが振り向く、美カワウソへと変貌を遂げたのです。
3匹はその後も仲良く本当の家族のように暮らしていました。
しかし別れは突然やってきます。
おじカワが病に倒れてしまいました。
おじカワは最期にわが子に伝えました。
『サバは良い。もし運命の雄に出逢えたらサバをいっぱい食べさせてやれ。ばあさんを頼むぞ』
コクコク。
娘は涙を流しながら何度もうなずきます。
悲しいけれど笑顔で見送りました。
「今までありがとう」
と感謝を込めて笑顔でお別れをしました。
これからは残された2匹で懸命に生きていかないといけません。
だけど間も無くして、おばカワもおじカワの後を追うかのように、ひっそりと息を引き取りました。
『あたしとじいさんは、あんたを育てられて本当に幸せだった。だから、あんたも幸せにおなり。良いかい?いい雄に出逢えたら決して諦めちゃダメじゃ。愛があればどんな障害も乗り越えられる。無理なことなんてないんだよ。あたしとじいさんも若いころは色々あってねぇ。それはもう結ばれるまで苦労したさ。あの頃のじいさんは本当にカッコよくてーーーそしたらーーーー駆け落ちーーーーー。だから、ちゃんと幸せになるんだよ』
おばカワは長々と…コホンッ。おばカワはひっそりと息を引き取りました。
とうとう独りぼっちです。
それでも生きていかねばなりません。
幸いなことに、恵まれた容姿のせいか、すぐに
これで生きることに困ることはありません。
ただ他のカワウソ達とすこし狭い所で好きに過ごすだけの、簡単なお仕事のはずでした。
しかしそこには人気がものをいう、厳しい現実が待っていたのです。
美カワウソは思いました。
なぜ、二足歩行の得体の知れない巨大な生物に媚びへつらわなければならないのか。
なぜ得体の知れない生物にベタベタ触られないとならないのか。
そんな考えでは当然他のカワウソ達と馴染めるわけもなく、どんどんと孤立していきました。
こんなんでは、幸せなどいつまで経っても訪れないでしょう。
「もう
そんなやさぐれていた時です。
運命の彼に出逢ったのは。
ある愛の物語。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます