第33話 デート

結局こうなる。



「んふふ〜♪」


「おい、もっとちゃんと歩かないと転ぶぞ?」


 ……デートか。


 デートと言われた時の後輩の目。

 あんな期待に満ちた目をされて、無視できるほど俺は鬼じゃない。

 なぜ俺に好意を寄せてくるのかはわからないが。




 だが、今はそれ以上にわからないことがある。






 何故だ。何故ついてくるんだ、さくらさん。



 さくらさん、普通カワウソが街中を歩いてたら目立つんだよ。そんなことできるの、さくらさんしかいないから。


 街ゆく人が「カワウソだ」って指さしてるからすぐわかったよ。

 ほら、人だかりができてるじゃないか。



 いや、「野生のカワウソです」みたいな顔しても無駄だからな。

 街中に野生のカワウソがいる方が不思議だから!


 捕獲されても知らんぞ。

 ここはあの商店街じゃないんだ。


 どうして変なところでポンコツに…



「先輩どうしたんですか?」


「いや…ちょっと…ね」


「そういえば、この辺に水族館ができたらしいですよ?行ってみませんか?」



 水族館だと…?

 そんなところに行ったら、カワウソが脱走したって大変な騒ぎになってしまう。


「他にも、ちょっと距離がありますけど、動物園もあるみたいですよ?」


 動物園だと…?

 そんなところに行ったら、カワウソが脱走したって大変な騒ぎになってしまう。


 わかっててやっているのか?


 ……仕方ない。


「先輩どうしますか?」


「……うちに来ないか?」


「えっ?」


「やっぱり今日はうちに来ないか?」


「え?え?…………それって///」


「あぁ。……さくらさんがついてきてる。このまま外にいるのは面倒なことになる」


「……………」



ーーーーーーーーー



「「「カワウソがいる!!」」」


「どこかから逃げたのかな?」


「「「ヤバイ!可愛いー」」」



(何なの?彼が見えないじゃない)


(っ!!彼がこっちを見てる!)


「キュー。キュー」

(私は野生のカワウソですよー)


「「「鳴いてる!!可愛いー」」」


(あぁ、どうしよう!こっちに歩いてくる)




「さくらさん。何してるんだ?」


「キュー。キュー」

(私は野生のカワウソですよー)



結局こうなる。

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