第20話 買い物

百聞は一見にしかず。




「おっ、例の兄ちゃんか!うちのサバは美味いだろ?いつもありがとな!」


……。



「あんた、こんなできたカワウソ他にいないよ?大事にしなさいよ?」


……。



俺は今、さくらさんと買い物に来ている。


最近寒くなってきたので、買い出しのついでにさくらさん用にマフラーを買うつもりだ。


しかし商店街のやつらは、カワウソに対して何も思わないんだな…。




ーーーーー




ショッピングモール 3F ペットショップ


「いらっしゃいま……あ…エプロンの…」


怯えるな。


「あの…どんなご用件で…」



今度はエプロンじゃなく、マフラーが欲しいと伝えた。


「さくらさん出てきていいぞ」


「キュイッ」


商店街でさくらさんに人が集まってきて面倒だったので、途中から鞄の中に隠れてもらっていた。


店員はさくらさんを見て安心したのか、急に笑顔になった。


「どういう柄をお探しですか?」



「俺は何でも良いから、さくらさん、どんなのが良い?自分で選んできて良いよ」



スンッ


店員は俺の発言を聞いて恐怖したのか、急に真顔になった。




さくらさんは特に気にせず、マフラーが置いてあるコーナーへと向かって行った。


くるっ

「キュイ?」


くるっ

「キュイ?」


どうやら赤と緑のチェックか、薄いグレーかで悩んでいるらしい。



「キュー」


おっ、今度はどんなやつだ?




「…キュ…///」



なんで黒のレースなんだよ!

そんなに透けてて、マフラーの使い道わかってんのか?


やめろ!

「恥ずかしいけど、あなたが着て欲しいなら…」

みたいな顔するな!


それはマフラーだ。




「ジトーッ」


おい!店員!

お前も「この変態が」みたいな目で見るのをやめろ!


それはマフラーだ。






「あのカワウソ、いったい何なんですか?」


「ハイスペックなカワウソです」


これからもお世話になる店だ。

今のうちにさくらさんに慣れてもらおう。




百聞は一見にしかず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る