第16話 大人気ない

負けず嫌いです。




ポチポチッ!

『YOU WIN!』


タンッ!

『YOU WIN!』


ガチャガチャッ!

『YOU WIN!』



忘れない。

あの目を忘れない。



この前、彼と格闘ゲームをした時に大敗しました。


その時、彼は勝負がつくたびに、

『弱すぎる。』

みたいな目をしたのだ。



(まったく男の人はすぐ調子に乗るんだから。)

(少しゲームが強いからって馬鹿にして。)


『YOU WIN!』


(酷いと思わないのかしら。)

(ゲームとはいえ、か弱い乙女をコテンパンにするなんて。)


『YOU WIN!』


(本当に大人気なくて嫌だわ。)


あの目、

忘れない。ワスレナイ。



『YOU WIN!』







「つ、強ぇ。なんだあのカワウソ。さっきから負け無しじゃねぇか」


駅前のとあるゲームセンター。

連日、学生やゲーマーで賑わうなか、1匹のカワウソが何人もの対戦者を叩き潰している。


『YOU WIN!』

また1人…。


まるで鬼神の如き強さだ。


そこに集まるゲーマーたちは、カワウソの闘いぶりに敬意を表してこう呼んだ。


「閃光の強連打」と。






(ふふふ。早く次の休日にならないかしら。)


ガチャガチャッ!ダンッ!


『YOU WIN!』










ゾクゾク

ブルッ


「おう、どうした?風邪か?」


なんだ?いきなり寒気が。






負けず嫌いです。

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