第14話 風邪
寒さにご用心。
くしゅんっ
けほっけほっ
ガタガタッ
さくらさんが震えている。
先日のゲームで燃え尽きたせいか、体調を崩してしまったらしい。
病院に連れて行った方が良いか?
人間と違ってただの風邪でも大変かもしれないし。
近くに動物病院ってあったかな?
会社に休む連絡をいれる。
この前の早退の件もあるのか、心よく受け入れてもらえた。
動物病院は車で行けば近い所にあった。
さくらさんを連れて行こうとすると…
達筆な字で近くの総合病院の名前を書いてきた。
そこ?
動物病院じゃなくて良いの?
とにかくそこに連れていってみよう。
自分から言い出すくらいだし何とかなるだろう。
「あら、さくらちゃん。今日はどうしたの?」
どうやら来たことのある病院らしい。
診察券も持っていた。
あ、こういう時の苗字って俺と同じになるんだ。
てか、総合病院って文字通りの総合なの!?
種族関係なし!?
「カワウソのさくらさん。カワウソのさくらさーん」
しばらくして、さくらさんが呼ばれる。
なんだよ。カワウソのさくらって。さっき何のために名前書いたんだよ。
周りの人がビックリしてるだろ。
俺を見て、お前の診察じゃないのかよみたいな目をしてるじゃないか。
「少し熱があるね。喉も赤いし、典型的な風邪だね」
はたしてカワウソに典型的な風邪が当てはまるのか質問してみたい。
「そういえば最近は火傷しなくなったね」
なるほど。
火傷で通院していたのか。きっと料理のときのだよな。申し訳ない。
さくらさんは嬉しそうにエプロンを先生たちに見せている。
はしゃぐ姿を見ていると、本当に具合悪いのか疑いたくなる。
「ではお大事に」
薬をもらって帰る。
ちなみに調剤薬局でも、「カワウソのさくらさん」と呼ばれた。
また周りから、お前じゃないのかよって目で見られた。
家に帰ってきて、お昼ご飯の準備をする。
さくらさんは風邪なので寝ててもらっている。
さくらさんには魚肉ソーセージとタマゴ粥。
俺はインスタントラーメンで良いか。
久しぶりにジャンクフードだ。
さくらさんの手料理とは比べ物にならない。
初めは普通だったさくらさんのご飯は、今では絶品と呼べるまでに昇華されている。
うちに来てからそんなに時間が経っているわけでもないのに、短期間ですごい成長だ。
お弁当は相変わらず、魚肉ソーセージまみれだが。
いただきます。
ズルズル
ちゅるん
さくらさんは、目の前でインスタントラーメンを食べる俺をジーっと見ている。
「やれやれ、私がいないとダメね」みたいな目だ。気のせいではないはずだ。
そんな目で見るくらいなら、早く風邪を治してくれよな。
寒さにご用心。
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