第12話 プレゼント
いつもありがとう。
エプロンもどきを買って家に帰ると、さくらさんはテレビを見ていた。
こっちに気づき、いつもより早く帰ってきた俺に驚いていたが、すぐにコーヒーと魚肉ソーセージを用意して迎えてくれた。
どうやら一緒にテレビを見たいらしい。
さくらさんが見ていたのはクイズ番組だ。
いつもはサスペンスが多いのに珍しい。
ふと、さくらさんの手元に目をやると何かが書かれた紙が置いてある。
どうやら、クイズの答えが書いてあるようだ。
おぉ、達筆。
しかも、全部ご丁寧に赤丸がついている。
……全問正解か。
相変わらずのハイスペック具合である。
テレビが終わり、さくらさんがご飯を作ろうとしていたので、買ってきたエプロンもどきを渡した。
「これ使って。油跳ねると熱いでしょ?」
「!!!!」
「キュー!キュー!」
良かった。喜んでくれたみたいだ。
尻尾がすごい勢いで振られ、心なしか残像がハートマークに見える。
サイズが合わないことを伝えると、
すぐに裁縫道具を持ち出し、ものの数分で、パリコレも真っ青な前衛的なエプロンの出来上がりである。
あれ?柄が変わってない?
……まぁ、いいか。
さくらさんが着ると、まるでオーダーメイドのようなフィット感。
本当にさくらさんの為だけに作られたみたいだ。
青と白のストライプを基調とした柄を買ってきたのだが、
今のそれは、ストライプはそのままに、邪魔にならない程度に、所々桜の花びらが散りばめられていて、見る角度によって桜の花が咲いたり色が変わったりする。
相変わらずのハイスペック具合である。
プレゼントを貰った小さい子供のように、
目の前でくるくる回って見せてくれる。
その姿を見れただけでも買って良かったと思う。
そして、さくらさんが何かを書いている。
感極まったのか、久々に床に大きく油性ペンで書かれていた。
『Thank you』
まさかの英語。
やれやれ。
せっかくだし、これは消さないでそのままにしておくか。
うん。
こちらこそ、
いつもありがとう。
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