第11話 エプロン②
俺は間違っていた。
さくらさんのエプロンを買いにやって来た。
今はまだ夕方前だから、さくっと買っていつもより早く帰れば、さくらさんが夜ご飯を作るまでに間に合うだろう。
ショッピングモール 1F 雑貨屋さん
店内を探し回るのも面倒なので、早速店員に話しかける。
「エプロンが欲しいんですけど置いてますか?」
「はい。こちらです」
売り場に案内された。
結構種類がありそうで良かった。
心配なのはサイズだな。
「かなり小柄なんですけどサイズはありますか?」
「一応サイズは一通り揃っているので大丈夫だと思いますよ。ちなみに、何センチくらいの方ですか?」
「尻尾抜きだと50センチくらいですね」
………。
………………。
「は?」
ショッピングモール 2F 子供服屋さん
「かなり細身なんですけどサイズはありますか?」
「一応サイズは一通り揃っているので大丈夫だと思いますよ。ちなみに、どのくらいの方ですか?」
「多分500ミリのペットボトルより、少し太いくらいですね」
………。
………………。
「は?」
ショッピングモール 3F ペットショップ
さすがにペットショップなら置いてるだろう。
「カワウソ用の服って置いてますか?」
「珍しいですね。カワウソ用はないですけど、もしかしたら小型犬のなら入るかもしれません」
「ちなみにどのような物をお探しですか?」
「エプロンです」
………。
………………。
「は?」
………………。
「あ…えー…カワウソですよね?エプロンみたいなデザインってことでしょうか?」
「無ければそれでも構いませんが、出来ればちゃんとしたエプロンが良いです」
「料理する時に油が跳ねて熱そうなので」
………。
………………。
「は?」
結局、犬用の泥はね予防の前掛けを買った。
サイズが少し合わないかもしれないが、さくらさんのことだ。何とかするだろう。
しかし、今日1日のみんなの反応をみてわかったことがある。
むしろ思い出した。
なぜ俺はカワウソが普通に料理をすると思っていたのだ。
最初は俺も信じられないって思っていたじゃないか。
さくらさんがあまりにも自然に家事をこなすから、すっかり当たり前になっていた。
これからは気を付けないと、そのうち変なやつ扱いされてしまう。
すでに今日行ったお店の人達は、店から出る俺を完全に怯えた目で見ていた。
きっと頭のおかしい奴だと思われたに違いない。
まったく、俺は何をしているんだ。
普通のカワウソは、せいぜい字を書くくらいしか出来ないはずだ。
ん?
俺は間違っていた。
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