第4話 朝
……俺は今、困惑している。
色々な意味で困惑している。
休日をフルに使って、カワウソの飼い方を調べて試していたが、
どうやら、さくらさんは飼われるというのを嫌うらしい。
ことあるたびに、達筆な「×」を披露してくる。
例えば、餌のドライフードをケースに入れてあげても、「×」をつけられる。
その後、キッチンからお皿を自分で持ってきて、ジャンプして冷蔵庫を器用に開けて、中から魚肉ソーセージを取り出し、芸術的に盛り付けていました。
また、水浴びをさせようとお風呂に連れて行っても、恥じらう。めちゃくちゃ恥じらう。
全然触らせてもらえない。
結局、これまた器用にシャワーを使いこなしていました。
さらに、何故か「さくら」と呼んでも却下される。
色々試したが「さくらさん」と呼んだら、
満足そうにキューっと鳴いていた。
なんだろう…姉御肌なんだろうか…。
とにかく、さくらさんは飼うというより、本当に「住む」という感じだった。
あ、流石に床に油性ペンで書かれるのは嫌なので、ホワイトボードを用意しました。
そして、さくらさんがやって来てから、初めての出勤日。
トントントンと小気味よい音で目が覚めた。
お腹の上で寝ていたはずの、さくらさんがいない。
音とさくらさんの行方が気になってリビングに行くと、
鮮やかな彩りで盛られたサラダ。
香ばしい匂いのベーコンエッグ。
どこか懐かしい感じのするお味噌汁。
自然にお腹が鳴ってくる。
極めつけは、
お茶碗によそわれている、炊きたてなのか、とてもツヤツヤした…
魚。
サバ?
「キュー!キュー」
キッチンからさくらさんが、果物ナイフを使って魚肉ソーセージを芸術的に刻みながらこちらを見ていた。
……俺は今、困惑している。
色々な意味で困惑している。
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