プロローグ2 俺、雑魚ゴブリンだけどなんとか生き延びて人間になりたい!
気づくと突然ゴブリンになってた。
何を言ってるのかわからねーと思うが……いやそれはいいか。
お仲間っぽいゴブリンにいまにも犯されそうな女の子のピンチに、馬車が通りかかった。
ちなみに俺は見てるだけ。
俺ゴブリンだしね! スキル【覗き見】あるしね! いやいま助けようと思ってたところだから! ちょうど馬車が来たから見守ろうと思って!
『**********!』
『****、*********!』
やって来た馬車から飛び降りる男一人と女二人。
あと御者席のところにいた女が、立ち上がって杖をかざして、よくわからない言葉を叫ぶ。
え、マジで? めっちゃ魔法使いっぽいんだけどまさか、とか俺が思ってると、女の杖の先に火の玉が生まれた。
飛んで行く火の玉、呆然と見送る俺。
火の玉は倒れていた馬車に当たって、爆発した。
飛び散る馬車の残骸、呆然と立ち尽くす俺。
いや、ヒザ立ちで低い木の陰から覗いてるから立ち尽くしてはないけど。
女の子を囲んでたゴブリンたちはやっと人間に気づいたらしい。
「新しい敵だ! 男は殺せ! 女は犯せ! ヒャッハー、おかわりゴブ!」
…………。
アレだな、ゴブリンってバカなんだな多分。
馬車から下りて走っていた男が、腰に差してた剣を抜いて振り切る。
え、まだ届くわけなくね? アイツもバカじゃね? とか思った俺がバカだったらしい。
四匹のゴブリンが崩れ落ちた。
下半身を残して、体を両断されてぐちゃっと。
「飛ぶ斬撃を、見たことあります」
俺が呟いたのもしょうがないだろう。ゲギャグギャ言ってるだけだけど。ハハッ!
あ、倒れてた女の子にゴブリンの血とモツがかかっちゃってる。かわいそうに。
とか思ってる間に、馬車から下りた二人の女の子が残るゴブリンを斬り殺してた。
瞬殺じゃんね。
あんな魔法使える人間たちなら当然かもしれないけど。
この人間たちが強いのか、それとも俺の予想通りゴブリンが弱いのか。
俺、そのゴブリンだけどね! ゴブリンで弱くてチートなしってキツくね? スキル構成、覗き魔特化だよ?
でも、うん、ゴブリンが弱いせいであの子が死ななかったんだから良しとしよう。
襲われてた女の子を助け起こす男。
イケメン死ね。
あとお前、巨乳見すぎだろ。死ね。
ともかく、俺のお仲間? な気もしないけど同族っぽいゴブリンが死んで、女の子は危機を脱したらしい。
男一人に女三人のハーレムチームに助けられて、女同士の戦いとかエロそうなイケメンから貞操を守れるかは知らんけど。
よかった、と胸を撫で下ろす。
仲間っぽいゴブリンの死より、女の子が助かったことが嬉しいみたいだ。
いきなりゴブリンだったし、ゴブリンが仲間って言われても実感ないじゃんね。
俺は、ふうっと息を吐いた。
吐いてしまった。
『*******!』
『****、********!』
八匹のゴブリンを瞬殺した四人が、森に目を向ける。
俺が隠れて覗いていた、森に。
ゴブリンが人間を襲っていて、後から来た人間がゴブリンを殺した。
そんで、俺=ゴブリン。
……あれ?
これ俺、見つかったら殺されるんじゃね?
覗き見ていた俺は、ヒザ立ちからゆっくり、ゆっくり腰を下ろして低木の陰に隠れる。
そのまま音を立てないで、祈る。
頼む、さっさと行ってくれ。
ほら、女の子が返り血で汚れちゃってるから洗ってあげないと!
ぷるぷる、ぼくわるいゴブリンじゃないよ!
イケメン死ねとか言ってごめんなさい!
…………。
祈りが通じたのか、四人の人間たちは女の子と、倒れていた二人の男(の死体だと思う)を馬車に乗せて去っていった。
ひょっとしたら【覗き見】とか【逃げ足】のスキルとか、【森の臆病者】とかいうふざけた称号が役に立ったのかもしれないけど。
ありがとう神様!
でもいきなりゴブリンになっててチートなしだから、やっぱりいまの感謝はなしで!
馬車の音が聞こえなくなって、それでもしばらく待って。
ようやく俺は立ち上がる。
あ、ちなみに素足でした。足も緑です。ハハッ!
俺は、仲間? かもしれないゴブリンに近づく。
馬車を襲って、女の子を襲って、あっさり殺されたゴブリンたち。
同じ種族なのに、かわいそうとか哀れみの気持ちはわかない。
あれだけエンジョイ&エキサイティングしてたらそりゃ死ぬだろ。殺されて当然だろ。どう考えても人類の敵じゃんね。
気がついたら森の中にいて、ゴブリンになってた。
よくわからないし、【スキル】とか【称号】とか謎だけど、とりあえず。
とりあえずアレだ、生き延びよう。うん。
元の世界に帰りたいとか人間に戻りたいとかいろいろあるけどそれどころじゃないから! ゴブリン弱すぎだから!
よし決めた。
今日から俺は、ゴブリンサバイバーだ!
……
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