第92話ダンジョンでデート 其の四

 更に一日をかけてピラミッド型ダンジョンの九階層に到着。

 昨日と同じように十階層に続く階段の踊り場をキャンプ地とした。


「ここをキャンプ地とする!!」

「ん? はい、分かりました」


 ちょっとテンション高めに言ったのだが、どうやら滑ってしまったようだ。

 フィーネにこのネタは分からないもんな。


 簡単に食事を取ったあとここまでの戦果を確認する。

 作成クリエイションでちゃぶ台は作ってあるが手に入れた宝石はその上に乗り切らない。

 透明度が高く、なるべく大きい物を置いて床にはそれ以外を。


 一時間かけて数を確認する。


「九十八、九十九…… 百! それと二つです!」

「ありがとな。全部で千五百二個か……」


 すごい量の宝石が並ぶ。どれも見事な宝石だ。

 しかし俺は宝石の価値は詳しくない。総額いくら位になるのだろう? 

 一度換金に戻ってもいいかもな。


「とりあえずドロップ品を集めるのはここまででいいだろう。フィーネ、ご苦労様」

「それにしてもすごい魔物でしたね…… 今回も初めてみる魔物ばかりで……」


 そうだろうな。俺は見たことある奴らばかりだったが。

 五階層から九階層では映画やテレビで見たモンスター、魔物のオンパレードだった。

 黒光りするボディで人に卵を産み付ける宇宙のモンスター。

 ぴょんぴょん跳ねて移動する東洋の妖怪。

 水をかけると狂暴化する見た目はかわいいあいつ…… 

 フィーネが知らないのも無理はないだろう。


「フィーネ…… ダンジョンに出る魔物は主たるダンジョンマスターの種族、属性に左右されるんだったよな?」

「はい…… あくまで俗説ではありますが……」


「そうか。もう一つ聞いておく。この世界には俺のように転移してやってくる人間もいるんだったよな?」

「はい。ネグロスが転移する際に発生させる霧が稀に意図せぬ転移者を招くというのは聞いたことがあります」


 やはり…… ならここにいるのは…… 

 恐らくだがここのダンジョンマスターは地球人だ。

 いや地球人だったというべきか。そうでないと説明がつかない。

 だってそうだろ。ゲームや映画。神話、昔話で見たり聞いたりした魔物がここに現れるんだ。


「人がダンジョンマスターになる可能性はあるのか?」

「聞いたことはないですが……その可能性はありますね。だってアンデットなんかは人の躯が悪意のある魔力干渉を受けて生まれるんですから。最初に訪れたヴェレンのダンジョンの主はバンシー。あれはアンデッドでしたからね」


 そうか、ならこの上にいるのは……


「フィーネ。今日は早めに休もう。体力を整えてからダンジョンマスターに挑む」

「はい! でもその前に…… ライトさん、ステータスを確認しておきませんか?」


 ステータスを? 何か理由でもあるのかな? 

 分析を発動しステータスを確認する。



名前:ライト シブハラ

種族:人族

年齢:40

Lv:134

HP:209842 MP:359042 STR:163245 INT:290874

能力:剣術10 武術10 創造 10 料理10 結束 分析10 作成10 障壁10 閃光10

魔銃10(ハンドキャノン ショットガン ロケットランチャー スナイパーライフル アサルトライフル TLS)

亡き妻の加護:他言語習得 無限ガソリン 無限メンテナンス 無限コーヒー 無限タバコ

アルブの恩恵8:フィーネと性交渉をすると発動。致死攻撃回避、MP自動回復、フィーネの能力を一つだけコピー可能 

付与効果:幸運(中レベル)



名前:フィーネ・フィオナ・アルブ・ビアンコ

年齢:20

種族:アルブ・ビアンコ

Lv:132

HP:156241 MP:187490 STR:118741 INT:187434

能力:剣術8 武術7 火魔法9 水魔法9 風魔法9 空間魔法 生活魔法 結束

付与効果:来人の愛(HP、MP自動回復。状態異常回避。一度だけ致死攻撃から回復。来人を守るため各ステータス+100000)幸運(中レベル)



 二人でステータスを見比べる。

 ん? レベル134? 

 ダンジョンに入る前はレベル80にもなっていなかったような気がしたが…… 

 それにいつの間にかフィーネ以上に強くなっている。

 それを見てフィーネが少しがっかりそうにしているのだが。


「あーん…… せっかくライトさんより強くなったと思ったのにー……」

「ははは、そう言いなさんな。それにしてもこんなレベルが上がってるなんてな」


 でも今思い返せばおかしくも何ともない。

 だって九階層に上がってくるまでに千五百体もの魔物を駆逐したんだ。

 これまでこんな数の魔物を退治したことなんか無いし。

 レベルが上がったことでステータスがインフレを起こしているな。


「ライトさんのステータスすごいですね……」

「そういえばフィーネよりステータスの伸び率が高い気がするんだけど…… なんでなのかな?」


 レベルが一つ上がる度にステータスも向上する。

 だが現地人のフィーネに比べて上がる数字が確実に高いんだよな……


「分からないですよ…… 異世界人だからですかね?」

「そうかもな。ん? あれ? 何かおかしいな……」


 見慣れたフィーネのステータスだが…… 

 何か違和感が。そうだ! 年齢が上がってる! 

 二十歳になったんだ!


「フィーネ! 誕生日おめでとう!」

「え!? 誕生日!? そういえば今って…… 天龍月の十八日ですか!?」


 天龍月がいつのことか分からないがステータス表記は二十歳になってるからな。間違いないだろう。


「帰ったら誕生日パーティをしような。何か美味しいものを作るよ」

「パーティ……?」


 不思議そうな顔をしてる。この世界では誕生日に祝うという習慣は無いのかな?


「俺の世界ではね、誕生日にその人を祝う習慣があってね。帰ったらお祝いしなくちゃだな」

「そ、そうですか…… うふふ、楽しみにしておきますね」


 フィーネは戸惑いながらも喜んでいるようだ。二十歳の誕生日か…… 

 この世界では成人という定義は無いようだが、ここは日本式でいこう。

 何か贈り物を…… そうだ、いいこと考えた。

 それはこのダンジョンを出てからだな。


「すまんな、せっかくの誕生日なのに。こんな所で満足に祝うことも出来なくて」

「ううん…… 嬉しいです。ライトさんがそう思ってくれてるだけで……」


 フィーネは顔を赤くして微笑む。

 柄じゃないけど…… フィーネを抱きしめてキスをする。


「んむぅ……? ライトさん?」

「せっかくだ。何かしてほしいことはあるか? 今日ぐらい何でもしてあげるよ」


 誕生日ってのは特別だからな。

 プレゼントをあげられない代わりに何かしてあげたくてね。


「してほしいこと……? うーん…… そうだ! お風呂に入りたいです!」

「風呂? 今日も入ろうって言ったじゃん。他に無いの?」


「それじゃ耳を噛んでフィオナって呼んで下さい!」

「毎日やってるじゃん……」


「それじゃ愛してるって……」

「毎日言っとるわ!」


 思わず突っ込んでしまう。何か無いのか? 

 こう、特別な誕生日を祝うようなお願いは!?


「難しいですよ~…… だってしてもらいたい事はもう全部やってもらってますし……」


 むう。確かに急過ぎたのかもな。それじゃ肩でも揉んでやるか。


「フィーネ、そこに座って」

「座る? はあ…… ん!?」


 フィーネの肩を揉み始める。やはりかなり凝ってるな。

 かみさんと一緒だ。凪の肩もカチコチだった。いや、凪以上だな。

 重い鎧を着て、剣を振るう。更には巨乳ちゃんだ。

 肩が凝るのも無理はない。



 グリィッ ギュギュッ



「ん!? んあっ! そこ!? そこいい! 気持ちいいのぉ!?」


 肩のツボに親指を押し込む! 

 喰らえ! 指圧の心、母心!


「んああぁぁぁっ!!」

「ここか!? ここがいいのか!?」


 次だ! 凝っている部分を揉みほぐす!


「ああん! そこ! そこいいのぉ! こんなの知らないぃ!!」


 フィーネが脱力して床に倒れこむ。しかし俺の攻撃は終わらない。

 肩が凝っている女性は腰の状態もよろしくない。

 俺の経験上そうなだけだが。


 フィーネにまたがり腰を押し始める!


「んっ。んっ! んっ!! んっ~~!!」


 腰への指圧を終える。フィーネは息も絶え絶えだ。

 やり過ぎたかな? ちょっと心配。


「フィーネ?」

「ん…… ライトさん……」


 フィーネはよたよたと起き上がり抱きついてくる。

 耳元で甘く囁くように……


「今の…… またやって下さい……」


 ははは、マッサージが気に入ったか。

 フィーネは日向で寝ていた猫のようにクタクタだ。

 風呂も入らずそのまま寝てしまった。


 明日はダンジョン最上階に挑む。

 どんな魔物が待っているのだろうか?

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