第91話ダンジョンでデート 其の三

 現在ダンジョンの四階層。

 構造は単純で一本道を進み階段を上がって上の階層に進む。


 構造は単純だが魔物が多い。道中の戦闘でかなり時間を喰った。

 時計を見ると…… もう午後六時か。


「フィーネ。五階層に上がってから休もう。そこで一泊だ」

「そうですね。ちょっと疲れました。お腹ペコペコです……」


 ちょうど付近には五階層に続く階段がある。

 通路は魔物が出るが何故か階段を上がっている間はエンカウントしなかった。

 しかも階段には踊り場もあり、そこでなら魔物に襲われることなく休むことが出来るだろう。


 階段を上がり踊り場に到着。念のため一応障壁をはっておく。

 オドを練ってからの……


「障壁! これでよし。さぁ、少し休むか」

「ふぅー! 疲れた! ライトさん! ごはんにしましょ!」


「作るよ。何が食べたい?」

「ラーメン! 野菜がいっぱいのいつものラーメンが食べたいです!」


 ラーメンか。作るのも簡単だし、すぐ出来る。

 今日はラーメンにするか。先に作成クリエイションでちゃぶ台を作っておく。


 ではフィーネに食材を出してもらい調理開始。

 っていうか、インスタントのラーメンに茹でた野菜をドサッと乗せるだけだからな。

 あっという間にいつものラーメンが出来上がった。


 器から野菜がこぼれ落ちないよう気を付けながらラーメンをフィーネの前に。

 ラーメンを見つめるフィーネの笑顔……

 ははは、もう待ちきれないって感じだな。


「さぁ食べようか」

「はい! いただきます!」


 幸せそうにラーメンを啜る。

 あ、そうだ。桜に用意してもらったあれを使うか…… 

 リュックの中から各種調味料を取り出す。


「ん? これはなんれふか?」

「調味料だよ。醤油ダレ、粗挽き胡椒、ニンニク、背油。野菜にかけてごらん。味に飽きたら使うといい」


 俺はまずは胡椒から…… これを使うと味が引き締まるんだ。

 胡椒をかけて野菜を一口。うん、いつもの味だ。美味いな。


「へー、私もやってみよーっと」


 フィーネはニンニク、背油をチョイスする。

 若いな…… 俺は最近、背油は使っていない。

 四十になってから食が細くなったし、胃がもたれるのだ。

 昔だったら増し増しぐらいペロッと食えたのだが、今は増しでも残すかもしれん。


「すごい! もっと美味しくなりました!」


 フィーネはニンニク背油がお気に召したようだ。

 フィーネだったら日本に連れてっても問題無く暮らしていけるかもな。

 日本食は好きみたいだし。


 その後もガンガン食べ進め…… 

 器の中は空になった。早いな……


「もう一杯食べるか?」

「はい! いただきます!」


 ははは、いいともさ。俺は二杯目のラーメンを作り始めた。



◇◆◇



「んー! 満足しましたー! ごちそうさまでした!」

「はい、お粗末様。ほら、食後のコーヒーな」


 フィーネの前にコーヒーを。

 それを飲みながら今日の戦果を確認するか。


 ちゃぶ台の上にドロップ品を置いていく。

 大小様々な宝石だ。それが三十個以上…… 


「こうして見るとスゴいですね……」

「あぁ…… いくらになるか分からないけどな」


 リアンナ奴隷解放戦線が今後活動していくのに必要な額は五十億オレン。

 見事な宝石だがさすがに一つ一億オレンはしないだろう。


「少しここに籠ってドロップ品を捕り続けるしかないだろうな」

「そうですね。でも不思議なダンジョンですね。今まで見てきた魔物とは全く違う。あんなの見たことありません……」


 そうなんだ。一階層からここまでで戦闘があったのだが、フィーネの知らない魔物ばかり出現していた。

 いや、むしろ俺が知っている魔物…… 俺が知っていると言ってもRPGだったり、神話や昔話で見たり聞いたりした魔物や妖怪だがね。


 一階層ではマミー、ミイラのことだな。

 二階層では牛頭ごず馬頭めず。三階層は河童と天狗だ。

 四階層に至っては某悪魔を召喚する有名RPGのご立派なアイツが出てきた。

 そのご立派な魔物を見たフィーネが顔を真っ赤にしてたな。


 フィーネが知らないで俺が知っている魔物ばかり…… 

 これは一体どういうことなのだろうか?


「フィーネ。このダンジョンの魔物なんだが、俺は知ってるんだ。これってどういうことなんだろうな?」

「私も詳しくは分かりませんが…… こんな話を聞いたことがあります。ダンジョンに出る魔物はそこの主たるダンジョンマスターの種族、属性に左右されると……」


「つまりここを支配する魔物も俺の知っている魔物かもしれないと?」


 いや、そうだろうな。だって日本の妖怪とか出るんだ。

 それにあのご立派なやつはゲームの中での姿その物だったし。


 このダンジョン…… 一体なんなんだ? 

 理由は分からないがもしかしたら…… 


「フィーネ、俺達は金を稼ぐのが目的だ。無理にダンジョンを攻略する必要は無い……んだが、もしフィーネさえ良ければ……」

「うふふ。行きたいんですね? 最上階に」


「いいのか?」

「もちろんです! 大丈夫です。ライトさんは私が守りますから……」


 そう言って寄り添ってくる。俺に体を預け…… 

 潤んだ瞳で俺を見つめる……


「フィーネ…… ここではダメだぞ……」

「えー、いいじゃないですかー。せっかく二人っきりなのにー……」


 こんなとこでできるか。

 しょうがないので軽くキスだけしておく。


「んふふ……」

「これで勘弁な。そうだ、寝る前に体でも拭こうか」


「えー、お風呂にしませんか? ライトさん! お願いします! 私お風呂に入りたいです!」


 風呂? ダンジョンの中で? 

 まぁやれなくはないが…… まぁいいか。


 作成を発動し、浴槽と給湯器を作る。

 ダンジョンの中の浴槽…… 違和感半端じゃないな。


「それじゃ水を頼む」

「任されました!」


 フィーネが魔法で浴槽に水をはる。給湯器に灯油を入れて…… 

 因みにこの灯油は俺の加護の力で取り出せる。無限ガソリンという加護だ。

 ガソリンは揮発性が高く扱いが難しいと聞く。

 なのでオドを使いガソリンを灯油に変化させる。


 イメージする……


 たしか灯油の化学式は……


 C11H24からC14H30ぐらいだったかな?


 イメージのままオドを手に送る…… 


 その手を給湯器に置いて…… 

 燃料タンクが灯油で満たされていく…… 

 これでよし。


「それじゃお湯が沸くまでゆっくりするか」

「それまで甘えててもいいですか?」


 再び抱きついてくる。はは、しょうがないな。少しだけだぞ。


 俺もフィーネを抱き返してお湯が沸くのを待つことにした。



◇◆◇



 さて、お湯も沸いたようだし、お風呂にしますかね。

 服を脱いで前を隠す。フィーネとは裸を見せ合う仲だが一応エチケットだ。

 そのフィーネは俺の前ですっぽんぽんなのだが……


「前を隠しなさい……」

「んふふ。ライトさんのエッチ」


 イタズラっぽく笑う。見慣れてきたとはいえ、いい体をしている。

 胸は大きく、腰はくびれて。全体的に細い感じがするが、しっかりと筋肉がついている。

 細いんじゃなくてしまってるって言った方がいいか。


 体を洗ってから二人で湯船の中へ……


「「あ~~~……」」


 二人でおっさんみたいな声を出す。俺は既におっさんだけどな。


「気持ちいいですね……」


 そう言ってフィーネが俺に体を預けてくる。

 ダンジョン風呂をすることに戸惑いはあったが…… 

 疲れは取れるし、入って正解だったな。


「数日はここに籠ると思う。明日も風呂に入ろうな」

「明日も!? 嬉しい!」



 ムニュッ



 フィーネは湯船の中で抱きついてくる。

 おぅ…… 色んなところが当たって…… 

 落ち着けマイサン。こんな所で自己主張しては駄目だ。

 フィーネは俺の体の変化に気付いたのか……


「あ…… ライトさんのエッチ……」

「しょうがないだろ。体は正直なんだよ」


「それじゃ……」


 フィーネが情熱的なキスをしてくる。

 ははは、その気は無かったんだけどな。まぁいいか。


 そのまま風呂の中ですることにした。

 ひとしきり燃え上がった後は寝るだけだ。

 二人抱き合うように眠る。


「んふふ…… ライトさんお休みなさい……」


 お休みな。明日も頑張ろうな。

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