第44話来人の気持ち

名前:ルカ・ルクレツィオ・アルブ・ネグロス

年齢:25

種族:アルブ・ネグロス

Lv:124

DPS:892

HP:3043 (10000) MP:7432(10000) STR:1990(10000) INT:8771(10000)

能力:剣術8 火魔法7 風魔法7 

武具による能力補正:各ステータス+10000



 分析アナライズでこいつのステータスを確認する…… 

 かなり強いな。ステータスは俺より低いがレベルが高い。

 それに装備している武器や防具の補正効果。

 各ステータスがプラス一万か。


 DPSは892。油断出来ないな。

 連撃を喰らえばあっという間にHPを削られて一たまりもないだろう。


 俺のルカに対するDPSはどんなもんかな? 

 道中戦闘を行うことである程度はレベルも上がったしな。


 自身に分析アナライズをかけると……



名前:ライト シブハラ

種族:人族

年齢:40

Lv:28

DPS:503

HP:26201 MP:59877 STR:20004 INT:55310

能力:剣術8 武術10 創造 10 料理7 分析6 作成6 障壁5

魔銃8(ハンドキャノン ショットガン ロケットランチャー スナイパーライフル)

亡き妻の加護:他言語習得 無限ガソリン 無限メンテナンス 無限コーヒー 無限タバコ

New! アルブの恩恵1(フィーネと口付けを交わすことで発動。一度だけ致死攻撃回避)



 おや? 何だか新しい能力が追加されてるな。

 アルブの恩恵か。発動条件がちょっとアレだが致死攻撃を避けられるのは嬉しい。


 さぁ、そろそろルカのクソ野郎に痛い目を見せてやるか。

 フィーネもそろそろ離してくれないかな? 

 未だ俺の口を吸い続けるフィーネを強引に引き剥がす。


「ん…… ライトさん……」

「フィーネ、話は後で聞く。今はそれどころじゃないみたいだからな」


 ルカはプルプル震えている。かなり怒ってるな。

 そりゃ面子を潰されたんだ。

 求婚した相手に断られ、目の前でキスをされる。

 予想外の出来事でこいつのプライドはズタズタだろう。

 俺も予想外だったけどな。


「ルカだったな? お前の挑戦…… 受けよう。せっかくだ。ただ決闘するんじゃもったいない」


 固唾を飲んで俺達のやり取りを見ている祭の参加者全員に向かって。

 出来る限りの大声で……


「皆様! 大変お騒がせしました! 私はアルブ・ネグロスの皇子! ルカと決闘を行います! ですが! この闘いを私闘として終わらせるのはもったいない! 今は建国祭の最中です! 確か催しの中に武道大会があったと聞いています! その前哨戦として私はルカと闘い皆様を楽しませたいと思います! いかがでしょうか!?」

「「「おぉー!!」」」


 パチパチパチパチパチパチパチパチッ


 大広間からは歓声が沸き起こる! 

 ははは! そうか、みんなも俺達の闘いが見たいか!


「なっ!? 貴様! 何を勝手にそんな……」

「怖じ気づいたか?」


 間髪入れずに挑発を入れる。

 ルカは短気な性格なようだ。乗ってくるに違いない。


「いいだろう…… 必ず後悔させてやるからな……」


 憎々しげに俺を睨み付ける。

 ルカは今にも襲いかかってきそうなほどの殺気をはなっているが…… 

 騒ぎを聞いた衛兵が俺達に詰めよってきた。

 先頭にはシーザーがいるな。


「ライト殿! この騒ぎは一体!?」

「いや、なんでもないさ。シーザーさん、すまないが武道大会に俺とルカ皇子も参加出来るかな? 二人で祭を盛り上げようって話しになってね。エキシビジョンマッチでいいから参加させてもらえないか?」


「エキシビジョン?」

「はは、エキシビジョンってのは模範試合みたいなもんさ。俺達の闘いを皆さんに楽しんでもらいたくてね」


「なるほど…… 素晴らしいお考えですな! ヴィルジホルツの皇子ルカ殿の剣の腕は我が国でも有名です。それが聖女の父、ライト殿とぶつかる…… 武道大会は盛り上がりこと間違い無しでしょうな! さっそく参加枠を設けるよう責任者に伝えます!」


 よし、これで公式にルカをぶちのめす機会を得ることが出来たな。

 ルカは俺を睨み付けながら寄ってくる。


「首を洗って待っていろ…… 必ず殺してやる……」


 はは。言う事が三下だ。

 ルカは言い終えるとその場を去っていく。

 さて試合開始まで俺もゆっくりするとしますか。


 歓声渦巻く広間を出て自室に戻る。

 ん? 桜が心配そうな顔をしてるが……


「パパ…… 何だか大変なことになっちゃったね……」

「あぁ。でもある程度は予想してたことだ。想定の範囲内ってとこだな」


「どういうこと?」

「王様は言ってただろ? 各国から重鎮を招いているって。ネグロスの連中も顔を出す事ぐらい予想してたさ」


「でもさ…… だったらあの場にフィーネちゃんがいない方が良かったんじゃないの? そうすればパパが戦うことにはならなかったんじゃ……」

「確かにルカとぶつかることになるとは思わなかった。でもフィーネは俺達といるべきだったと思うぞ。例えばフィーネが一人でいる時にネグロスの連中と出会ったとしたら? 運良くネグロスを退けられたとしてもここは城の中。祭りの最中に刃傷事件なんか起こしたら王様の面子は丸潰れだ。

 それに万が一フィーネがネグロスの連中に捕まったとしたら? 少なくとも俺達と一緒にいれば身の安全は保障される。な? そう考えるとフィーネは俺達と一緒にいて正解だろ?」


「なるほどねぇ…… パパってすごいよね。普通そこまで考えつかないよ」


 いやそんなことはないぞ。

 会社勤めをしてたらある程度の危険予測は身に付くもんだ。

 例えば繁忙期なのに部下が病欠したら? 

 生産性ばかり気にして利益が出るぎりぎりの人件費で稼働を組んでも、何かあったときに対応出来ない。


 リスクを予想して、且つ対応策を考えてから事に臨む。

 こうすることで何かあった時にスムーズに対応出来るようになるんだ。


「桜も大人になればこれくらい出来るようになるさ」

「そんなもんかなぁ……? あ、そういえばフィーネちゃん、大丈夫?」


 フィーネ? そういえば部屋に連れて帰ってから一言も発してないな。

 仲間の仇であるネグロスが現れたんだ。

 そしてその仇から求婚される。

 予想外の出来事にショックを受けてないといいのだが……


「フィーネちゃん? フィーネちゃん!?」

「んふふ…… ふぁっ!? あれ? サクラ? ごめん! 聞いてなかった! どうしたの?」 


 あんまりショックを受けてる様子はないな。

 取りあえず安心していいだろう。

 とはいえ一応フォローしておいた方がいいかな?


「桜、すまんがフィーネと話したい。少し別室に行くがいいか?」

「う、うん…… でもパパ……」


 桜もフィーネのことが心配なのだろう。

 気持ちは分かる。いつも仲良くしてるもんな。

 ん? なんか桜が耳打ちをしてくる。


「でもパパ…… フィーネちゃんの気持ちは知ってるよね……? 結局パパはどうしたいの……?」


 そっちの心配かよ。一応は俺の気持ちは決まっている。

 だがもう少しだけ考える時間が必要でな……


 桜の問いに答えることなくフィーネを別室に連れて行く。


「ラ、ライトさん…… さっきは我を忘れてしまって…… 私ったらあんなことを……」

「気にするな。色々聞きたいことはあるけどな。フィーネが気にしてなければそれでいい」


「でも…… 私のせいでルカと闘うことになるなんて……」


 そういえばフィーネはルカと面識はあるのかな? 


「ルカってどんなやつなんだ? 嫌なやつだってのは理解出来たが」

「ある程度しか知りません…… 王位継承権一位を持っていて、剣の腕は大陸一だとか……」


 大陸一かどうかは知らんが、かなり強いのは間違いないだろうな。

 あのステータス…… 下手に戦ったら俺は負けるだろう。


「ライトさん…… ごめんなさい…… 私のせいでこんなことになるなんて……」


 フィーネはシクシクと泣き出してしまった。

 気にすることないのに。ある程度は俺が望んでやったことだ。


「フィーネ。君のせいじゃない」

「だって…… だって……」


 泣き止まんな。しょうがない。

 少しだけ俺の気持ちを伝えるか。


「フィオナ」

「…………?」


 フィーネの嗚咽が止まる。

 やはりこの名は彼女にとって特別な意味を持つのだろう。


 何が起こったのか理解出来ないようにフィーネは焦り始める。

 

 彼女にゆっくり近づいて……



 ギュッ 



 優しく抱きしめる。



 言葉には出さない。でも少しだけ俺の気持ちも知っておいてもらいたい。



 抱きしめたまま優しくフィーネの顔に触れる。



「ラ、ライトさん? んむぅ……」



 チュッ……



 キスをする。先程したような大人の口付けを。

 


 フィーネ……



 これが俺の気持ちだ。すまん。言葉にするのはもう少し待っててくれ。



 ゆっくりと口を離す。フィーネの視線が定まってない。熱に浮かさせたようなポヤーっとした表情を浮かべる。



「フィーネ。心配しなくていい。安心して俺の帰りを待っててくれ」

「は、はい……」


 フィーネは潤んだ瞳で見つめてくる。


 もう一度…… フィーネと口付けを交わす……



 バタンッ



「パパー! 武道大会の準備が……」

「「…………」」


 あ、桜が部屋に入ってきちゃった。

 すごく気まずい空気が流れる。


「…………」


 桜は何も言うことなくドアを閉める。

 後で説明しとかないとな。

 フィーネが恥ずかしそうな表情で……


「ライトさん…… 頑張ってくださいね……」

「あぁ。それじゃルカをぶん殴ってくるわ」


 さてと、気持ちを切り替えていきますかね。

 久々の対人戦だ。

 俺の力を生意気な若造に見せつけてやるとしますか!


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