第34話作戦会議
「それでは第一回我がパーティ、フィリアの作戦会議を始めます!」
なんか桜が取り仕切ってる。
いつの間にかパーティ名も決まってるのだが……
「桜、フィリアって何?」
「かっこいいでしょ! ギリシャ語で友情って意味なんだって!」
いや意味とか聞いてるわけじゃなくてだな……
まぁいいや。作戦を立てなくてはいけないのは事実な訳だし。
俺は人数分のコーヒーを用意し、話を始める。
「パーティ名はいいとして…… 一応聞いておく。アバルサの町を助けることに異存はある者はいないか? いないのであれば話しを進める」
「異議なし!」「大丈夫です!」
はは、聞くまでも無かったか。
じゃあ次だ。
「この町を救うためには二つの問題を解決しなくちゃいけない。そうだな…… 応急対策と恒久対策の二つだな」
「応急と恒久? どう違うの?」
「応急対策は起こってしまった事実に対し、それを解決する方法を探って処置を行う。恒久対策は今後起こりえないようにどう動くかを考えて実行するってところだ」
「んー…… 難しいよ。つまりどういうこと?」
ははは、桜にはまだ分からないか。
これは俺が会社の部下に常々言っていることだからな。
まだ幼い桜には理解出来ないだろう。
「応急対策。これは担当を決めたい。桜、お前に頼みたい。もちろん空いた時間で俺とフィーネも手伝うから」
「いいよ、でも何をすればいいの?」
「この町の人の多くは命は助かったがまだ怪我から完治していない。戦える状態じゃないってことだ。桜はこの人達の治療を続け、戦える状態にまで持ってくること」
桜は俺達の中で唯一回復魔法が使える。
その力を使えば戦える者も出てくるはずだ。
「そういえば桜の回復魔法ってどんな感じなんだ? 俺達には使ったことないだろ? どの程度の力を持ってるのか知りたいんだが……」
「んーとね、口で説明し辛いなぁ…… そうだ!
そうか。でも分析にそこまで細かく相手を見る力ってあったかな?
まぁ分析自体のレベルも上がってるし…… やってみるか。
目にオドを込める。
桜の持つ回復だけに注視する……
そして目の端にステータスが映し出される……
名前:サクラ シブハラ
種族:人族
年齢:14
Lv:22
HP:14543 MP:39048 STR:9021 INT:44998
能力:舞10 武術10 創造 10 分析5 魔導弓8(爆裂の矢 氷結の矢)
亡き母の加護:他言語習得 無限おにぎり 無限ラーメン 無限調味料
New! 回復2(MP一割でHP全回復、二割でHP全回復と状態異常回復、五割で前項目回復と欠損箇所再生)
なるほど。MPは一定量を使うのではなく割合で消費するのか。
コスパは悪いがこの五割の回復が凄いな。
欠損箇所の回復か。チートだな……
「桜、このMP五割使う回復ってさ……」
「すごいでしょ!? 一応エクストラヒールって名付けました!」
いや名前は聞いてないんだが。
「分かりやすいようにヒール、ハイヒール、エクストラヒールって区別してね!」
「ははは、分かったよ。とりあえずは怪我の酷い人から優先だ。まずはこれ以上犠牲を出しては駄目だ。ヒールでいい。重傷者をヒールで癒してくれ」
「分かった! じゃあパパ達は何をするの?」
ここからはフィーネが重要な役割を担う。
危険な役目だ…… 彼女はやってくれるだろうか?
「フィーネ…… これから話すことだが、まずは言っておく。かなり危険なことをやってもらわなくちゃいけない。だからこれを断る権利があるってことを理解しておいてくれ」
「…………」
黙って頷く。彼女は冒険者。
ある程度は死線をくぐってきているはずだが……
これは本当は俺の役目なんだ。だが敵はオーク。
奴らの目的は苗床になる女性を攫うこと。つまり……
「フィーネには囮をやってもらいたい。森に入ってオークの注意を引いてくれ」
「それって…… ヘイトを取って来いってことですか?」
そういうことだ。この町は森で囲まれている。
オークはそれを利用して全方位から襲ってくるだろう。
それをフィーネという目標に向かわせて一網打尽にする。
「これがライトさんの言う恒久対策ってことですか?」
「そうだ。今後町を襲わせないよう、オークを全て倒す。だがかなり危険だ。フィーネ、やってく……」
「やります」
俺が言い終わる前に言葉を被せてくる。
おいおい、俺に最後まで言わせてくれよ。
「ふふ、心配ないですよ。それにライトさんはちゃんとオークを倒す方法を考えてるんでしょ? なら私はライトさんの考えに従います。だってライトさんは私達のパーティ、フィリアのリーダーなんですから」
はは、フィーネもその名前が気に入ったのか。
それにしてもいつの間にかリーダーになっちゃったな。
「すまんな。なるべくフィーネに危険が及ばないように努力する……」
「信頼してますから…… でもちゃんと守ってくださいね……」
もちろんだ。必ずフィーネは守る。
頼んだぞ……
「あー、ごほん。何かいい雰囲気になってるところごめんね。でさ、パパはどうやってオークを退治するの? フィーネちゃんと二人で森に入るとか?」
「いや違う。俺まで森に入ったら万が一オークが町に入った時に対処出来ないだろ? 桜が強いのは知ってるがお前には怪我人の治療に専念してもらいたいしな。だからこれを使う……」
久しぶりに創造を発動。
イメージする……
且つてはまっていたFPSを……
俺は前に出て戦うのが好きだったのでこの武器はあまり使わなかった。
でも使えない訳ではない。
これを使って30連続キルをしちゃった時に世界各国のプレイヤーからファンメが届いちゃってね……
それ以来PVEでしか使ってなかったな。
遠距離から敵の攻撃が届く前に静かに敵の頭を撃ち抜く。
長い銃身…… 付属のスコープの倍率は俺が一番使いやすい8倍……
ズシン
両の手に重量を感じる。俺の両手にはスナイパーライフルが握られていた。
「パ、パパ…… その銃って……?」
「これか。スナイパーライフルだ。セミオートだから次弾装填をする必要が無く、目標を狙い続けることが出来る。有効射程は八百メートルってとこだな」
「いや、そんなこと聞いてるんじゃないよ……」
「ん? じゃあ何が聞きたいんだ? そうか! 心配はいらないぞ! 基本的にスナイパーライフルの弾は風や重力の影響を受けて完全に真っ直ぐは進まないんだ。だけど俺のライフルは特別だ! スマートバレットを使っている! ある程度だが軌道を変えて有効射程なら直進することが出来る優れ物だ!」
「あはは…… もういいよ…… その銃があればオークを倒せるんだよね?」
「あぁ。ヘッドショットを狙えば一撃だろうな」
使うのは久しぶりだな。
腕が鈍ってなければいいが……
「そう…… それじゃパパ達はすぐに出るの?」
「いやまだだ。桜には他にもやってもらいたいことがある。フィーネにも協力してもらいたい。みんな外に出てくれ」
二人を連れて外に出る。
町の中央には仮設の救護テントが設置されており、中には多くの怪我人で溢れかえっている。
さて次に行うのは……
オドを練る……
使う能力は
イメージする……
可能な限り大きく……
そうだな…… 百人は同時に入れる大浴槽を……
【
ゴゴゴッ……
俺が一言発するとそこには巨大な浴槽が出現する。
「ラ、ライトさん…… これはお風呂ですよね?」
「あぁそうだ。今この町の人は恐怖で怯えている。心の癒しも必要だ。これがあれば気分転換になるだろ。桜、燃料の灯油は用意しておく。風呂の管理は任せていいか?」
「あはは…… うん! 任せてよ!」
「フィーネ。悪いが一日一回これに水を張ってほしい。MPを消費させて悪いんだが…… お願い出来るか?」
「ひゃ、ひゃい! 大丈夫です! ライトさん達の付与効果があれば多少MPを使っても問題ありません!」
「よし! じゃあ作戦決行は今夜だ! だがその前に!」
「その前に?」
「風呂だ! 各自用意せよ!」
「「了解!」」
さて、一っ風呂浴びたらオーク退治だ!
みんな頑張ろうな!
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