第7話施設案内

「説明も終わりましたところで、施設案内していきますね。紀世彦さん以外はこの後は自由行動で大丈夫です。」


「姉さん、私は部屋に戻るね。」


「ありがとうねサンちゃーん」


 軽く手を振り部屋から出て行くサンダルフォンに対しメタトロンは大きく手を振って見送った。


「さて、私達も行きますか。」


 そう言って、外に出て行ったメタトロンの後ろを紀世彦はついて行った。


「紀世彦さんが使える施設は3つあります。食堂、トレーニングルーム、図書室です。1番近い図書室から案内させていただきますね。」


 廊下を歩きながら軽い説明をしてくれた。少し歩いたところの扉をくぐったら、大量の本がギッシリと本棚に並んでおり、図書室というより図書館なのではないかと思ってしまうほどでかい部屋だった。


「これはすごいな」


 紀世彦は思わず口に出して言ってしまうほど驚いていた。


「ここにはさまざまな魔法書や武術書などが置いてあります。それらを読む事により詠唱や武術の形を知識として覚えられます。ですが、覚えたからと言ってすぐに使えるわけではないので注意してくださいね!」


「知識としてだから実際に練習なりして身につけろってことか。」


「その通りです!なので、知識だけで強くなったと過信しないでくださいね??」


「さすがにそこまで馬鹿な奴はいないだろ。」


「それがたまにいるんですよね…」


 困った顔でそういうので、軽く察した紀世彦はこれ以上言うともっとひどい奴とかもいそうだと思い何も言わなかった。


「図書室はわかった、次の案内をしてくれ。」


「わかりました。次はトレーニングルームですね。」


 そう言いメタトロンは歩き始めた。また少し歩くのだろうと思っていた紀世彦だが、真向かいの部屋に案内された。


「ここがトレーニングルームとなっております。」


 そこに広がっていたのは、ジムなどに置かれている筋トレマシンがずらりと並んでおり、奥にはひらけた場所あり、そこで先ほど案内された図書室で得た知識を練習し、習得できる感じになっていた。


「こりゃすごいな。」


 思わず声が出てしまう程にちゃんとしたトレーニングルームとなっていた。


「ここではマシンを使ったステータスアップと、奥で修練や模擬試合ができる格闘場がございます。」


「ここの設備は本当に使いたい放題なのか?」


「はい、ご自由に使って頂いて構いません。けれど、紀世彦さん達の出発は明後日なので明日くらいしか使えないかもですが…」


「でも、世界の均衡を保つ事、ようは魔王を倒せば戻ってくるんだよな?」


「その通りですね。戻ってくることがあるので、個人部屋なども用意してあるわけですし。」


「じゃあとっとと魔王倒せば戻ってこれるのか。」


「すごいやる気ですね。筋トレそんなに好きなんですか??」


「好きっていうか、ステータスや技、魔法を鍛えたり覚えたりしなきゃ強くなれないだろ。」


 ちょっと引いた目で紀世彦を見るメタトロンだったが紀世彦の説明を受けなるほどと納得していた。


「そうだ、聞きたいことがあったんだ。さっきの説明だと魔法書などを読むことで知識を得られると言っていたが、ステータスに火魔法や片手剣といったスキルがある。スキルのレベルを上げていけば覚えるわけじゃないのか?」


「そのことですが、本によって知識を得るか、使える人に教わることで習得自体はできます。それを鍛錬することで使えるようになります。ものによっては、スキルレベルが一定以上上がっていないと習得することができないものもあります。そして、スキルレベルを上げる事により魔法や技の威力が上がります。」


「じゃあ、スキルの魔力はなんなんだ?属性魔法のスキルを上げれば威力上がるなら魔力なんて項目いらないのではないのか?」


「魔力も魔法の威力をあげるスキルです。属性魔法は魔力の威力上昇と比べたら、補助くらいにすぎません。威力を上昇させるのであれば魔力をあげることをお勧めします。」


 少し難しい話になったので紀世彦は一人でブツブツ言いながら色々考えていたが時期にわれに戻り、最後の食堂への案内をお願いした。食堂までの道のりは、最初に顔合わせで使った部屋まで戻ってきてさらに奥へと進んでいき、少し入り組んだところを抜けた場所まで案内された。


「ここが食堂になります。基本いつでも食事をとることができます。」


 やや広い空間に長机がいくつか置かれており、カウンターの奥では天使や人間が料理を作っていた。驚いたことに人間といっても様々な種族がおり、人族や獣人族、リザードマンといった個性豊かな人が集まっていた。


「人間は人族だけじゃないんだな。」


「はい、今回召喚させてもらった方はみんな人族でしたが、あなた達の先輩にあたる人達は様々な種族となっております。」


「なるほど、種族によってステータスの良し悪しはあるのか?」


「若干の良し悪しはありますが、鍛え方によっては全然関係ないかと思われます。」


「なら、様々な種族を召喚する必要性はあるのか?」


「ステータス的に見た場合そこまでないかもしれませんが、種族によって環境適正が異なるので、世界によってはとても重要なこともあります。」


「なるほど、確かにそうだな。」


 そのような話をしていたら、紀世彦のお腹が鳴った。


「飯の匂いに負けて腹が鳴ったか。」


「あら、可愛いところもあるんですね!」


「おちょくっているのか?」


「そんなつもりはありませんよ??お腹空いているなら食べていきますか??私もまだ食事を取れていないのでできれば食べたいのですが…」


「そうだな、食べるとするか。」


 そう言いながらカウンターに向かっていった。カウンターにはメニュー表が置いてあり、ページごとに天使、人族、獣人族と分かれており、種族によってのベース料理が書かれていた。人族でも他種族の料理を食べることも可能だが、味付けや使われている食材が違うためあまりオススメできないらしい。


「いつものでお願いしま〜す!」


 紀世彦が何にしようか悩んでいるとメタトロンは元気よく厨房にいる人に声をかけていた。


「俺は親子丼をお願いします。」


 紀世彦もなるべく早めに決めて奥にいる人に注文した。少しして注文した料理が完成したして渡されたので、それを持ってメタトロンが座っている場所の方へ歩いていき、わざと3〜4席離れたところに座った。


「なんでわざわざ離れて座るのですか??」


「だって俺や他の召喚されたやつと話すとき敬語を使っているだろ?気を使わせているようだから飯の時ぐらい素に戻った方がいいのではないか?」


「だってそれは、タメ語で馴れ馴れしい天使がいきなり説明を始めても不快な印象を与えるだけだと思って…」


「わかった。なら俺には敬語は不要だ。確かに第一印象を気にしたりするのはわかるからな、だからこれから俺に対しては素でいい。」


「わかりました。」


 そう言うとメタトロンは料理の乗っているオボンを持ち紀世彦の向かいの席に移動した。そして満面の笑みを浮かべていた。


「改めてこれからよろしくね、紀世彦さん!」


「そこまで砕けて言うのであれば、さん付けもやめていいのではないか?」


「そう??じゃあそう言うならそうするね、紀世彦。」


 流石の紀世彦もむず痒い感覚を感じながら料理を食べ始めた。


「メタトロンの食べてる料理は何なんだ?見たことのない料理なのだが。」


「これはザラマギルという料理で、紀世彦達で言うところのお米の上にマギルという植物系の食べ物をのせた食べ物です。ちなみにザラが紀世彦達の言うところのお米にあたります。」


 見た目はアサガオの葉が器の中にどっさり盛り付けられていて、その上にドラゴンフルーツの果実のように黒いつぶつぶのようなものがあるのだが、一般的に知られている赤や白の実ではなく空色の実をした果実が3つほどのっかっていた。


「俺からしてみるとものすごくゲテモノ感が漂ってくるな。」


「なんなら一口食べてみますか??」


「いや、遠慮しておこう。」


 間を空けずに否定した紀世彦だがちょっとだけ興味は持っていた。


「紀世彦の食べているのはなんなのです??」


「これは親子丼だ。」


「あー、聞いたことある!確か鳥肉と卵を使ったDON物だよね!!」


「そうだ。誰かから聞いたのか?」


「うん!サンちゃんがいろんな種族の料理に手を出してるから、色々教えてくれるよ!」


「サンちゃんって確かさっき説明してくれた天使だったか?」


「そうそう!私の双子の妹なの!」


「メタトロンって双子だったのか」


「あなた達に何かしら関わり合いがある天使の中だと私とサンちゃんくらいかな双子なのは。」


 そんな会話をしながら料理を食べていたらあっという間に食べ終わってしまった。


「それでは最後の案内、紀世彦が割り当てられている部屋に行きましょうか!」


「現状明後日にはエイピオスに旅立つ予定なのにな」


「それは今回がイレギュラーなせいですっ!」


「広さはどれくらいなんだ?」


「紀世彦のいた世界の言い方?いや、紀世彦の住んでいた国の言い方だと10畳ほどの広さかな??」


「住んでいた国までわかるのか」


「天使を、いや、私を誰だと思っているのかな??こう見えて二つ名持ちにして第1のセフィラ、ケテルを守護する守護天使でもあるんですよ??」


「二つ名?何?厨二病なの?しかもセフィラってなんだよ。」


「けっして厨二病なんかじゃありません!神から召喚権利を託されているので『契約の天使』ともいわれているんですぅ!!それにセフィラは生命の樹セフィロトを守る結界のことですぅ!!」


「え!?そんのに凄い天使なの?俺的に雑用押し付けられるようなとこくらいなのかなって思ってたわ。」


 移動しながらそんな話をしていたらあっという間についてしまった。


「ここが紀世彦の部屋になりますよ〜。ここら一帯が人族の居住区となっていて、他にも天使達の居住区や獣人族の居住区など種族ごとに分けてあります。種族ごとの習慣や生態が違うので、いざこざを防ぐためってのが理由かな。」


「確かに居住区を分けて問題解決するのはいいことだな。じゃあ早速中に入っていいか?」


「どうぞどうぞ。」


 そう言い2人は部屋の中に入って行った。


「中は特に変わったかんじせではないんだな。」


「種族によって内装も違うから、ここは紀世彦に合わせた感じの作りになってるんだよ!」


 部屋間取りは1kとなっておりトイレとお風呂は別になっていた。


「トイレと風呂が別なのは嬉しいな」


「前にかなりの数の要望があったので別にしました。ちなみに、言ってくれれば和室??に変更も可能だよ!」


「和室にもできるのか!」


 今までに見たことのないほどのテンションでくいついてきた紀世彦だったが、和室にはしなかった。


「これで一通りの案内は終わったよ!けど話があるから少しいいかな??」


「前々から話があるって言っていたからな、なんの話か少し気になっていたんだ。だから話を聞こうじゃないか。」

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