第14話
「ユウ君」
雄介がそんな事を考えていると、私服に着替えた里奈がリビングに戻ってきた。
「なんですか?」
「まだ晩飯までは時間が……」
「違うわ、実は大切な話しがあるの」
「大切な話し?」
雄介は鍋の中に野菜を入れながら、里奈に聞き返す。
すると、里奈は雄介にソファーに座るように指示する。
雄介は鍋の火を消して、里奈の目の前に座った。
「今から家族会議を始めます」
「家族って言っても俺と里奈さんだけじゃないですか……」
「良いから、聞きなさい」
「あ、はい」
里奈は真剣な表情で腕を組みながら話し始める。
「実は……お父さんとお母さんが近々家に帰ってくる事が決定したわ」
「え? じゃあ仕事が一段落ついたんですかね? 父さんや母さんが帰ってくるのか~、楽しみですね」
家族仲は良好だった。
雄介は義理とはいえ、両親を心から尊敬し、身よりの無くなった自分を引き取ってくれた事に心から感謝していた。
「全然楽しみじゃないわよ!」
「え? な、なんでですか?」
「だって、私とユウ君の新婚生活が終わっちゃうのよ!?」
「始まってすらいねーよ。何を言ってるんですかまったく……」
「だって! ユウ君は良いの!? もうお姉ちゃんのお風呂とか覗き難くなっちゃうよ!」
「人が毎回覗きをしてるみたいな言い方やめて貰えます?」
「こっそり夜這いにだって行けなくなるし……」
「むしろ来ないで下さい」
雄介はため息を吐きながら里奈の話しを聞いていた。
「今日、ユウ君と加山さん校門で見て思ったのよ……このままじゃユウ君がヤバイって……」
「ま、まぁ……でも里奈さんに心配される必要がないようには……」
「心配よ! このままじゃユウ君の貞操はあっと言う間に加山さんに!!」
「いや、何の話しだよ!」
「奪われる前に私が奪おうと思ってたのに! お父さん達が帰ってくるって言うし! このままじゃ私の有利がなくなっちゃう!」
「家で俺に何をする気ですか!」
「ナニをするつもりよ!」
「ダメだこの人……早く帰ってきて父さん母さん……」
雄介がそんな事を考えていると、いつの間にか里奈は雄介の隣に座っていた。
「ねぇユウ君? この部屋……暑くない?」
「な、なんですか急に……エアコン聞いてるはずですけど……」
里奈はそう言いながら、雄介に少しづつ近づき、雄介の手をそっと握る。
「あ、あの……何か?」
「私は暑いなぁ……」
「じゃあエアコンの温度を下げますか」
「あぁ~暑いなぁ~服脱いじゃおうかなぁ~」
「なんでそうなるんですか、てかなんで脱ぎ始めてるんですか!!」
里奈はそんな事を言いながら来ていたTシャツを脱いで下着を露わにする。
「はぁ~汗ばむなぁ~……クシュンッ!」
「思いっきりくしゃみしてるじゃないですか……もう、早く来て下さい」
「良いのぉ~お姉ちゃんの下着姿にドキドキしてるんじゃな~い?」
「いや、全然」
「えい」
「うぷっ!」
立ち上がろうとした雄介の顔を里奈は自分の胸に押しつける。
「もう、強がっちゃってぇ~、本当はこうして欲しいんでしょ~」
「む! むぅ-!! むぅーう!!」
「え? 何? そんなに気持ちいい?」
(い、息が……出来ない……)
里奈の胸に顔を押しつけられ、雄介は窒息寸前だった。
雄介は力いっぱいに里奈を引きがし、里奈の拘束から抜け出す。
「ぷはっ!! はぁ……はぁ……!! し、死ぬかと……思った……」
「もう、顔を真っ赤にして息を荒げて……そ、そんなに興奮したの?」
「死ぬ掛けたんですよ!!」
顔を赤らめながら言う里奈に雄介は声を荒げる。
このままじゃ色々な意味でヤバイと感じた雄介はソファーから立ち上がり、キッチンに戻った。
「さっさと服を来て下さい、料理ももうすぐできますから」
「む~……なんでユウ君は私の気持ちに応えてくれないの?」
「姉弟だからです」
「義理なのに……知ってる? 血縁関係が無ければ結婚は出来るのよ?」
「知ってます。それでもです、里奈さんにはきっといつか素敵な人が現れますよ」
「それがユウ君なんだけど」
里奈はつまらなそうな顔でそう言いながら、Tシャツを着てソファーに寝っ転がる。
「じゃあ、約束して! ユウ君はお姉ちゃん以外の女の子と一線を越えるのは禁止!」
「里奈さんと一線越える方がまずいのでは?」
「あと、一緒に帰るのもダメ! お姉ちゃんと帰るの!」
「そんな事を言われなくても、俺にそんな機会は来ませんよ」
「本当~? な~んか怪しいんだよねぇ~」
里奈はそう言いながら頬を膨らませ、スマホを操作し始める。
「まぁ、今日のところは一緒にお風呂で許してあげるわよ」
「入りません」
「じゃあ添い寝!」
「しません」
「もう! わがまま言わないでよ! お姉ちゃん困っちゃうでしょ!」
「困ってるのは俺です!」
この家も少しの間ではあるが安全では無い、雄介はそう思い始めた。
「……はぁ……早く帰って来ないかな……父さん母さん……」
雄介はため息を吐きながら、出来上がった料理を皿に盛り付けていく。
草食系男子が肉食系女子に食べられるまで Revision Joker @gnt0014
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。草食系男子が肉食系女子に食べられるまで Revisionの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます