第13話

「まぁ、検査はいつも通り採血とレントゲンね。最近はどうだい?」


「最近ですか? まぁ……相変わらず女性はダメですね……」


「そうか、そうか……それはまぁ、精神的な問題だろうしね……過去のトラウマはなかなか消えるものじゃない……」


「………そうですね」


「まぁ、まだ君は若い……ゆっくり克服して行けば良いさ。それよりも私は君の体の方が今は心配だよ」


「俺の体は……どうなんですか?」


「……毎月の検査を見ているけど……体に異常は無い……やはり薬の方に何かがありそうだけど……」


「……あの薬は危険です」


「わかっているさ……でも君の体に今でも影響が残っている……薬の成分を解析することでわかることもあるってことさ」


「……そうですか」


 雄介は先生と話しをしながら眉をひそめる。

「ま、そう深く考え無くてもいいさ、君は体の事と過去のトラウマを克服する事を考えるといい」


「……でも、あの女は捕まっていない……」


「雄介君!」


「………」


「君が考えることじゃない……あとは大人に任せるんだ」


「………はい」


 雄介はそう言いつつも心のどこかでは納得していなかった。

 その後、雄介は病院内で検査を受け、病院を後にした。

 検査の結果はいつも通り、一週間後に教えてもらえる。


「疲れたな……さて、家に帰るか……」


 雄介は家に向かって歩き始める。


「……俺が考えることじゃないか」


 雄介は先程先生に言われた事を思い出しながら帰り道を歩く。

 病院に行く度に雄介は昔の事を思い出していた。

 思い出したくもない、嫌な過去を……。


「ただいま」


 病院から自宅に帰ってきた雄介は、リビングに向かう。

 まだ里奈は帰ってきていないらしく、家には雄介が一人だけだった。

 雄介は自室で制服から私服に着替えを済ませ、夕飯の用意を始めた。


「さて、冷蔵庫には何があったかな?」


 雄介はエプロンを付けて冷蔵庫を開け、今日の晩飯の献立を考え始めた。

 

「今日はそうだな……たまにカレーでも作るか」


 作る物を決めると、雄介は調理を開始した。 それから少しして、玄関のドアの鍵を開ける音が聞こえてきた。

 里奈が帰ってきたのだろうと思いながら、雄介は料理を続ける。


「ただいまぁ~……」


「おかえりなさい里奈さん、今日は遅かったですね」


「二学期の行事の準備とか、予算の振り分けとか……色々やることがあってね」


「そうなんですか、お疲れ様でした。何か飲みますか?」


「麦茶はある? 喉渇いちゃった」


「はい、今持って行きます」


 雄介はそう言って料理を中断し、里奈の元に麦茶を持って行く。

 

「あ、ありがとう! あと、お帰りなさいのチューはいつしてくれるの?」


「しません。飯が出来るまでもう少し待っててくださいね」


「ぶ~意地悪ぅ~。じゃあ一緒にお風呂に……」


「入りません」


「じゃあ、一緒にベッドで……」


「寝ません」


「えぇ~! じゃあ何ならしてくれるの!? SMプレイ? それとも赤ちゃんプレイ?」


「しません!! なんでそんな特殊なプレイばっかり……」


「むー……あれもダメ、これもダメ……わがまま言わないでよ!」


「どっちがですか!!」


 雄介はそんなツッコミをしながら、カレーを作っていく。


「ねぇ、今日は大丈夫だった?」


「何がですか?」


「二年生のクラスまで聞こえてきたわよ? 加山さんがユウ君に告白されたって」


「二年にまで……はぁ……」


(まさかそこまで広まっているとわ……なんだか気が重くなってきたな……)


「で、本当に大丈夫だったの?」


「大丈夫ですよ、心配しなくても俺は俺でなんとかしますから」


「本当? 何か困ったらちゃんとお姉ちゃんに言うのよ?」


「わかってますよ」


 ……とは言った物の雄介はあまり里奈には頼りたくなかった。

 理由は簡単だ面倒な事になるからだ。

 雄介がそう言うと里奈は自分の部屋に鞄を置きに行った。

 雄介はカレー作りを続行しながら、優子の事を考えていた。


「あいつ……なんで俺の事を?」


 一人でそんな事を呟きながら、雄介は眉をひそめて、どうやったら諦めてくれるかを考え始めた。

 

(うーん……どうするか……簡単には諦めてくれないだろうし……)


 早くなんとかしないと、クラスの男達はもちろん、他のクラスの男達も騒ぎ出すかもしれない。

 

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