第10話
「そう言う認識だったのか……」
「それがなんだ! 気がついてみれば、加山さんはお前に横から掻っ攫わされてる始末だ!」
「そんなの俺は知らん」
「知らんじゃないんだよ! お前! 一体どうやって加山さんをゲットした!?」
「別にゲットしなくて良い」
雄介はクラスの男子達にため息を吐く。
好きで優子から言い寄られている訳では無い雄介に取っては、この状況も優子のせいで起きたトラブルであり、ただ迷惑なだけだった。
「別に俺は加山と付き合ってる訳じゃない!」
「え? 付き合ってないの?」
「違う、あいつが付きまとってくるだけだ」
(付き合ってないと別れば、こいつらも俺から興味を失うだろう……)
雄介はそう思っていたのだが、実際はそうでは無かった。
「な、なんだとぉ!? 加山さんからの告白をお前は断ったと言うのか!?」
「まぁ、そうなるな……俺は別に加山の事好きじゃないし」
「なんだとぉ!? 貴様! 我らの女神を愚弄する気か!!」
(おい、こいつら女神とか言い出したぞ……あんな厄介な女神が居てたまるっての)
クラスメイトにこの作戦は逆効果だったと、雄介は言った後で気がついた。
クラスの男子生徒達は雄介を睨み、今にも襲いかかってきそうな感じだった。
「おい、少し落ち着け……」
「お前わぁ~……我々の女神を~」
「待て、落ち着け! 別に何もしてない!」
「「「加山さんに好かれてる事がお前の罪だ!!」」」
「本当に理不尽だな! お前ら!!」
「問答無用!!」
「おい! 待て待て!!」
そう言ってクラスの男子達は雄介に襲いかかってくる。
雄介が逃げようと、座って居た席から立ち上がると雄介と男子生徒の間に一人の女子生徒が割り込んできた。
「ねぇ、お取り込み中悪いんだけど、私からも今村君に聞きたい事があるの、借りていっても良い?」
「え? ま、まぁ……良いけど……」
「おい、勝手に決めるな!」
「そ、じゃあ借りていくわ」
「おい! 俺の意見は!?」
間に入ってきたのは、同じクラスの秋葉沙月(あきばさつき)だった。
優子の友人であり、雄介はあまり沙月とは話したことがなかった。
雄介は無理矢理沙月に腕を引っ張られ、屋上に連れて行かれる。
「お、おい! 引っ張るな! 自分で歩ける!」
「ん? あぁ、そう? はい」
「はぁ……まったく……」
雄介の顔は少し青白くなっていた。
どうやら、沙月に手を握られた影響で拒絶反応が出てしまったようだ。
雄介はそのまま沙月の後に付いて行き、屋上にやってきた。
「んで、話しって何?」
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど……優子に何をしての?」
「いや、それは俺が聞きたいんだが……」
「そう……」
「秋葉さんの方が、そこら辺は知ってるんじゃないの? 俺よりも加山と仲良いだろ?」
「そんな私でも知らされてなかったから、貴方に聞いたの。でもそっか……今村君もなんで好かれてるのかわからないんだ」
「あぁ、昨日いきなり家に来て告白された、それだけだ」
「そっか……あの子積極的だからなぁ……」
(積極的過ぎるっつの……)
雄介はそんな事を考えながら、屋上を後にしようとする。
「じゃあ、話しが終わりなら俺は戻るぞ」
「あ、まって! 今戻ったら、男子に何されるかわからないよ?」
「ん……それもそうか……」
すっかり忘れていた雄介だったが、沙月の言葉でクラスの男子達のあの殺気だった様子を思い出した。
「教室に居るのは嫌でしょ?」
「確かにな……その様子だと秋葉はまだ俺に話しがあるのか?」
「うん……こっちが本題かな?」
「何?」
雄介がそう聞くと、沙月は気まずそうに話し始めた。
「あ、あのさ……あの子の思いに答えてあげることは出来ない?」
「は?」
そう言われた瞬間、雄介は沙月の顔を見る。 その言葉に不快感を覚えながら、雄介は沙月に尋ねる。
「なんで秋葉が俺にそんな事を?」
「ごめん……でも勘違いしないで! 別に優子から言われて言ってる訳じゃないの! これは完全に私のお願い!」
「……加山だって余計なお世話だろ……悪いが俺の答えは変わらない」
「それはわかってるの……でも……あの子には幸せになって欲しいから……」
「それは加山の為にもならないし、逆に迷惑かもしれないぞ……それに悪いが、俺の答えは変わらない」
雄介は沙月にそう言うと、沙月は寂しそうな顔をしながら雄介に言う。
「そ、そうだよね……ごめん、変な事を言って」
「いや、別に……わかってくれれば俺はそれで良い。だが、なんで俺にそんな事を?」
「それは、優子が始めて好きになった人だから」
「初めて? あんなにモテるのに?」
「そう、優子とは小学生の頃から一緒だったんだけど……あの子が誰かをあんなに好きになるなんて初めてなのよ……」
「意外だな……高校生になって、誰でも良いから彼氏が欲しかったとかそんな感じじゃないのか?」
「あの子はそんな理由で恋愛なんてしないわよ……」
「ん? どう言う意味だ?」
何か訳ありそうな様子に気がつき、雄介は沙月に尋ねた。
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