第8話

 雄介と慎はそんな事を話しながら、廊下をあるいて教室に向かう。


「あ、そう言えばお前に相談したい事があるんだが……」


「そうだん? なんだ? おすすめのエロサイトか?」


「ちげーよ、あほ。実は昨日色々あってな……」


 雄介は昨日の話しをしながら、屋上に向かった。

 雄介は屋上に向かう階段の踊り場で、慎に昨日起こった出来事を話した。


「それってマジか?」


「マジだよ、なんで俺がこんな嘘を付かないといけないんだよ」


「まぁ、確かにな……お前の女嫌いは筋金入りだし……こんな嘘を言うメリットも無いもんな……」


「わかってくれたか?」


「あぁ、しかし大変だな。これからどうするんだよ?」


「なるべく加山と接触しないようにしたいんだ。お前も協力してくれ」


「接触しないようにって……お前の前の席は誰だっけ?」


「……だよなぁ……はぁ……教室戻りたくねぇ……」


「まぁ、確かに……この事実が教室の男共にバレてみろ? お前……殺されるぞ」


「うちのクラスはなんでそんなに血の気が多いんだよ……てか、流石にそこまでは……」


「俺は何度か殺され掛けたぞ?」


「悪い……実体験だったか……」


 雄介はため息を吐きながら慎と話しを続ける。

 屋上に繋がる階段はあまり生徒が来ないので、こう言う内緒話をするには丁度良かった。

「まぁ、クラスもそうだが……学校の男共には気を付けた方がいいぞ」


「そこまでか?」


「お前は加山の人気を軽く見過ぎだ。加山はかなり人気だぞ」


「そ、そうなのか……」


「集団でお前をボコりに来たりして」


「怖い事言うなよ」


「そうか? お前だったら返り討ちだろ?」


「俺は喧嘩をするために武術を学んだんじゃない」


 慎の言うとおり、雄介は護身術程度の武術を習っており、そこら辺の不良よりは戦い方を知っていた。


「まぁ、俺よりも里奈さんが強いし……俺なんかまだまだだよ」


「お前の姉ちゃん凄いもんな……しかもブラコン」


「それを言うな……」


 雄介達がそんな話しをしている間に、授業開始二分前になってしまった。

 雄介達は立ち上がり、自分の教室に戻り始める。


「はぁ……加山、教室で変な事してこなきゃ良いけど……」


「まぁ、加山もそんな大ぴらには言わないだろ?」


「だと良いんだけどな……」


 雄介と慎はそんな話しをしながら、教室のドアを開けて教室の中に入った。

 優子はいつも通り、クラスのみんなに囲まれていた。

 雄介はそんな優子に告白されたことが、いまだに信じられなかった。

 一時間目の授業が始まり、雄介は授業を聞きながら優子の事を考えていた。


(あいつ……なんで俺なんか……)


 目の前の優子の背中を見ながら、雄介はそんな事を考える。

 他にも男なんて星の数ほど居るだろうにと思いながら、優子がなぜ自分を選んだのかが気になっていた。


「はぁ……面倒くさい……」


「何が面倒くさいの?」


「へ? ……おわっ! 加山……」


 雄介が正面を見ると、そこには優子の顔があった。

 どうやらいつの間にやら授業が終わっていたらしい。

 考え事をしていた雄介はその事に気づいていない様子だった。


「な、なんだよ……何かようか?」


「ん? 用がないと話しちゃいけない?」


「そう言う訳じゃないけど……って、手を握ろうとするな!」


「っち……バレたか……」


「舌打ちすんな!!」


 隙さえあれば、雄介に触れようとしてくる優子。

 雄介はそんな優子をうざったらしいいと感じたのか、教科書を仕舞って席を立つ。


「ねぇ、どこ行くの?」


「どこだって良いだ……ろ!?」


 雄介が席を立った瞬間、優子は雄介の手を握って引き留めてきた。

 女性嫌いの雄介は手だけでも女性に触れられるのは嫌なので、優子の急な行動に驚く。


「な、何するんだよ……」


「別にぃ~、ただどこに行くのかな? って」


「ど、どこだって良いだろ……」


「えぇ~じゃあ私も行く」


「なんでそうなる!」


「良いじゃん」


「行くのはトイレだ!」


「行く」


「来るなボケ!!」


 優子と雄介がそんな会話を大声でしていると、クラスメイト達がそんな優子と雄介に気がつき始めた。

 クラスの人気者とクラスでも目立たない雄介の絡みは珍しかったのだろう、みんな雄介と優子を見ていた。

 それに気がついた雄介は早くこの場を脱しようと、優子の手を振りほどく。


「あん! 少し位良いじゃん!」


「みんな見てるだろ……俺はもう行く」


「良いじゃん、みんな見てても」


「良くねーよ! っておい! 離せ!!」


「えへへ~、やーだよ!」


 優子はそう言って再び雄介の手を握った。

 今度は腕まで絡めてきたので、雄介は段々体調が悪くなるのを感じた。


「お、おまえなぁ……」


 雄介が苦しんでいる最中、クラスの男子達の目線は雄介に集まっていた。

 しかし、それは賞賛や尊敬の視線では無く。あくまでも嫉妬の視線だった。


「今村の奴……いつの間に加山と仲良く?」


「くそぉ~! 羨ましいぜ!! 俺も手を握って欲しい!」


「俺だって! 俺の息子を握……」


「「それ以上はやめとけ」」

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