第5話
余計面倒な事になってしまった。
雄介はそんな事を考えながら、肩をがっくり落としてため息を吐く。
「はぁ……なんでこうなるかな……」
「雄介! お姉ちゃんと結婚しない方が良いよ! 世間的に!」
「そもそも結婚する気がない」
「ユウ君! こんな女ダメよ! どうせビッチよ!」
「里奈さん口が悪いです」
俺はため息を吐き、とりあえず優子を説得しようと優子に話し始める。
「加山、悪いけど俺はお前と付き合えない。さっきお前が俺に抱きついた時、俺は気絶しただろ? あんな感じで俺は女に触られると体が拒絶反応を起こしてあぁなっちまうんだ。だから付き合うのは無理なんだ」
「でも、さっきお姉さんに抱きつかれた時は大丈夫だったじゃない」
「それは家族だから……」
「お姉ちゃんが大好きだからよ!」
「里奈さんちょっと黙って!」
「あうっ!」
雄介は横から口を出してきた里奈の頭にチョップを食らわせる。
里奈は雄介から振られたショックもあって涙目だ。
「家族は大丈夫なんだよ、でも他は無理なんだ」
「お姉さんだって大丈夫なら、私だって大丈夫になるかもしれないでしょ!」
「無理だって」
「やってみないとわからないでしょ!」
「そ、それは……」
「もう、いい加減諦めなさい! ユウ君はお姉ちゃんとの結婚ルート以外は無いの!」
「そのルートもねぇよ」
「でもユウ君、私以外の女の子に触られも触ることも出来ないじゃない、それなら私と結婚するかしかないのよ!」
「なんでそうなるんですか! お姉さんは雄介のお姉さんじゃないですか! 世間的に結婚なんて無理です!」
「義理だから良いのよ!! 加山さんもしつこいわよ!!」
「しつこくないです! 雄介は私のものです!!」
「お姉ちゃんのよ!」
「誰のものでもねぇよ……」
雄介を置いて優子と里奈が喧嘩を始める。
雄介は疲れ果て、もう勝手にしてくれといった感じで二人を放置して、夕飯を作り始める。
三十分ほどが達経ち、ようやく落ち着いたのか二人は大人しくなった。
雄介は食事の支度を一旦やめ、二人がいるリビングに戻る。
「落ち着いた?」
「えぇ……だ、大丈夫よ……」
「ユ、ユウ君……お水……頂戴……」
「はいはい」
雄介は二人に水を渡した。
「んで、加山は諦めてくれるのか?」
「諦める? いいえ、むしろやる気が入ったわ!」
「は?」
加山の意外な一言に呆気にとられる雄介。
「絶対に雄介は私のものにしてみせるわ!! 女の子が苦手だって言うのも克服させてみせる!!」
「なかなか根性のある子じゃない……良いわ、お姉ちゃんも本気で相手をしてあげる……」
なんだ、このRPG見たいな会話……。
雄介がそんな事を思っている間も、優子と里奈の間には火花が散っていた。
「絶対にお姉さんには負けないわ!!」
「フフ、望むところよ! 私の力を見せてあげるわ!」
「俺の意見は?」
「「そんなのありません!!」」
二人の声が重なる。
雄介はそう言われた瞬間、もうダメなんだと思いながら、ただ立ち尽くしていた。
「とりあえず今日はも帰るわ」
「あぁ、気を付けてな……」
雄介は肩を落としながら、加山を玄関まで送る。
「雄介」
「ん?」
「私……本気だから」
「お……おう」
優子の真剣な眼差しに雄介は押し切られてしまった。
しかし、雄介は優子の今までの言動を見て、考えが変わってきていた。
優子はもしかしたら自分の事を真剣に考えてくれているのでは無いかと……。
雄介は優子がドアを閉めた後、ドアを見つめながらそう思った。
「……だとしたら……早く諦めさせないとな……あいつに悪い……」
雄介はそう呟き、リビングに戻る。
明日からの事を考えると、雄介は自然とため息が出た。
今日から家だけがオアシスだろう。
そう考えながらリビングに戻った。
「ユウ君! これからは私と毎日お風呂に入りましょう! それと寝るときも一緒よ!」
「………」
どうやら、雄介のオアシスはどこにもないようだ。
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