俺はクリスマスが大嫌いだ
第1話 クリスマスの馬鹿野郎!
俺は始発電車を降り、自宅へ向かってトボトボと歩いている。
周囲の人通りは少なく閑散としていた。
昨夜は散々な目にあった。
付き合っていた彼女と午後8時に待ち合わせをしていた。
ちゃんと約束した。
メールも残っている。
12月24日の午後8時に待ち合わせすると。
俺はその場所で9時間待った。
寒かった。
他の沢山のカップルの笑顔が眩しかった。
俺ももうすぐああいう笑顔に出会える。
あと10分待とう。
そうすれば必ず彼女は来る。
そう信じて5時間待った。
しかし、彼女は来なかった。
携帯にメールしたが返事は来なかった。
終電がなくなったので駅前で朝まで過ごした。
体は半分凍ってしまったかのようだった。
俺は自宅へ向けトボトボと歩いている。
寒風の中一晩立ち尽くした疲労からだろうか、俺の歩みは老人のように緩慢としていた。
目の前の信号が青に変わり、俺は横断歩道に出る。
やはり疲れていた。道路を横断するのにいつもの倍は時間がかかっているだろう。
俺は心の中でブツブツとつぶやいていた。
「クリスマスの馬鹿野郎、お前なんて大嫌いだ……」
「危ない!」
近くを通りかかっていた人が大声で叫んだ。
眼前の信号は青。
何が危ないのだろうか。
俺は右側を見た。
轟音を立てて大型トラックが走ってくるじゃないか。
運転手は寝ているのか?
マジかよ。
その大型トラックはブレーキもかけず交差点に突っ込んできた。
丁度その時、目を覚ましたであろう運転手の驚愕した表情が印象的だったのだが、俺はそのままトラックにはねられた。
クリスマスの馬鹿野郎。
俺はその時、繰り返し繰り返し心の中で罵倒していた。クリスマスのおかげでこんな酷い目に遭ったと。
そして、俺の意識は途絶えた。
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