コタツ戦線異状なし
第1話 強盗は自動人形を狙う
小雪が舞い寒風が吹きすさぶ。こんな寒い夜はコタツに入ってゆっくりと寛ぐに限る。
我が家のリビングには立派な掘り
俺は極寒の夜道を歩き、ようやく自宅にたどり着いた。だが、玄関前で何やら人が争っているではないか。
そこには武器を持った
一人は自動拳銃を構え、一人は大型のナイフを
「お前が500億の人形か?」
「そうよ」
ナイフを持った男の問いに答えている女。
その肌はダークメタリックで金属的な艶があり、瞳は赤く輝いている。我が家に居候しているトラントロワ型自動人形だ。この自動人形が大変高価だという噂が流れており、我が家には度々強盗がやってくる。
「痛い目に遭いたくなかったらついて来るんだ。逆らうなよ」
「こっちだ」
ナイフ男が誘導する。拳銃を突き付けられた自動人形は、素直に従い歩き始めた。その先に駐車していたのは黒塗りの高級車だった。
「さあ乗れ。変な真似するんじゃねえぞ」
「もたもたするな。早くしろ」
拳銃男が声を荒立てる。
自動人形はその男をちらりと一瞥した後、車両後部へと歩いていった。
「まさか、トランクに乗るつもりか?」
「違うわよ。こうするの」
右脚を後部バンパーに引っ掛けた自動人形は、その右脚を上方へと振り抜いた。
黒塗りの高級車はふわりと浮き上がってからひっくり返った。周囲に轟音が響き渡る。
「てめえ何てことしやがるんだ」
拳銃男が発砲した。自動人形は二発の弾丸を両手の人差し指と親指で摘まんでいた。シューと摩擦音がし、指先からは僅かに白い煙が上がっていた。
ナイフ男が腰にナイフを構え、その体ごと自動人形にぶつかっていく。摘まんだ弾丸を投げ捨てた自動人形は、その刃を左手で掴んで男を押し返した。男は吹き飛ばされて高級車のバンパーに頭をぶつけて昏倒した。自動人形はナイフを右手に持ち替え拳銃男に向かって投擲した。ナイフは拳銃男の右肩に刺さり、男は拳銃を手放した。そして、自動人形の回し蹴りが男の側頭部を捉えた。
肩にナイフが刺さったままの男は、路面に倒れて意識を失った。
「あら、お兄様。おかえりなさい。状況の説明はお任せします。うふふ」
怪しく笑う自動人形は玄関から我が家へと入っていく。
パトカーのサイレンが鳴り響く。
この寒風の中、俺は警察官に状況の説明をしなくてはいけない。
俺の桃源郷。
愛しの掘り炬燵。
極楽を味わうのはもう少し後になりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます