第15話 事情に詳しい変態王子
「ご注文はお決まりですか?」
「レモンティーとココアです」
「かしこまりました」
ここはカフェ〝シャーマン・ファイアフライ〟である。JK四人組がアルバイトに入っている時間帯を狙い、客として店内に侵入してきているのが明継とアール・ハリだった。
「あの二人、また来てる。何かキモイわ」
「何なのかな? コニーちゃんに付きまとってる感じがする」
コニーと星子が頷き合っている。その会話に波里と知子が加わる。
「明継の目線は星子ちゃんの胸に刺さりっぱなしです。許せないわ」
「落ち着け羽里。問題は変態王子の方だ」
噂をすれば何とやら。変態王子ことアルブレヒトが颯爽と店内へ入って来た。
「はぁ~い。美少女たち。僕を呼んだかな?」
「呼んでません。この変態王子」
苦虫をかみつぶしたような渋い表情の波里が、アルブレヒトの接客をする。
「冷たいね、羽里ちゃん。僕は君に親近感を持っているんだよ。とても他人とは思えないんだ」
「どうかしら。狙いは星子ちゃんの胸だってのは分かってるんだから」
「ふふ。僕が星子ちゃんの胸だけを狙っているとでも?」
意味深なセリフを吐くアルブレヒトだったが、波里はそっぽを向いていいる。そこへ光剣の柄を握った知子がやって来た。
「そんなことはどうでいい。客なら早く席に就け。そこの怪しい二人組と同席するのを勧める」
「あ。知子さんの手に筒状の光るものが……これがうわさに聞く光剣ですね。ここは素直に従いましょう。失礼」
アルブレヒトは躊躇なくアール・ハリと明継がたむろしている四人掛けの席へ座った。
「何故ここに座るのだ」
「気にするなよ。僕はブルマンで」
「ブルマンだと? このブルジョアが」
アルブレヒトは迷わず高額のメニューを注文した。アール・ハリは率直に嫌味を言うのだが、明継は何のことか理解していない。
「ブルマンって、絶滅危惧種ブルマ超大好きマンの事か?」
「いや、ブルセラ営業マンの事……じゃなくて高級コーヒー豆の事だ。ブルーマウンテンを知らないのか? 明継」
「すまない。知らなかった」
アルブレヒトはアール・ハリと明継の漫才をニヤニヤ笑いながら眺めていた。
「ふふふ。私は王族。上流階級ですからね。コーヒーも最上級の物しか飲まないのです」
「貴様の言葉一つ一つがムカツク。嫌味な奴め」
異世界の太子、つまり次期国王であるはずの明継だったが、彼の感覚は非常に庶民的だった。
「ふふ。それは褒め言葉として受け取りましょう」
「褒めていない」
ムスッと頬を膨らませる明継だった。そこへアール・ハリが話しかける。
「ちょうどいい、アルブレヒト。君に聞きたいことがあったんだ」
「何でしょう、アール・ハリ」
「コニーとはどういう関係なのかな? かなり仲が悪いみたいなのだが」
「それは簡単ですよ。彼女は外交官の娘なのです」
「外交官の娘だと?」
「アルマ帝国のね。我が惑星国家ファルヴェードはアルマ星間連合に加盟するかどうかの協議をしていたのですが、それに付随してアルマ帝国側が婚礼を勧めて来たのですよ。まあ、政略結婚ですね」
「結婚か……羨ましいぞ」
アルブレヒトの言葉に頷きながら明継がぼそりと呟く。
「外交官と言っても、帝国の貴族なのですよ。身分的には申し分ない。あのバーンスタインの近親でしてね」
「バーンスタイン?」
「アルマ帝国四大公爵家の一つ。皇家に次ぐ格式の家です。バーンスタインから皇帝に嫁いだ妃から生まれた皇女がいますね。帝国最強戦力と言われている彼女は皇帝警護親衛隊の隊長を務めています。その、ララ准将の従姉がコニーなのです」
アルブレヒトの突拍子もない告白に、アール・ハリと明継は顔を見合わせて驚いていた。
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