第12話 変態王子登場

「そのセリフ、聞き捨てなりませんね」


 後から来た男子生徒が言い放つ。


「何だ貴様は?」

「相変わらず凄いコスプレだな。それは狼人間なのか?」


 真っ先に反応したのはアール・ハリと明継だった。


 そこに立っていたのは銀色の髪をした男子生徒。その頭頂部にはぴょこんと狼の耳が立っており、また、フサフサの尻尾も生えている。彼は学園内でコスプレ変態王子と呼ばれていた。


「ふふふ。私も星子さんの胸を愛でる一人です。私は〝惑星王国ファルヴェード〟の第一王子、アルブレヒト・ファルヴェード・ハーラルト」


 フフッと笑いながら自己紹介をするその姿は、自身の容姿に酔いしれているかのようであった。


「あっ! あれは隣のクラスの電波だな」

「星子と一緒で妄想駄々洩れの変態王子ですね!」

「一時期、星子と妄想癖同士で気が合うんじゃないかとか」

「そんな噂が流れてましたね」

「そうそう」


 知子と波里が説明しているのを頷きながらコニーは聞いていた。そしてアルブレヒトに話しかけた。


「そうなんだ……アルブレヒト。貴方、地球でよろしくやっていたようだわね」

「え? コニーか? どうして君が地球にいるのだ」

「貴方には関係ない」


 いきなり対峙したコニーとアルブレヒト。二人は何故か敵対しているかのような態度であった。そしてその関係性に興味を持ったのがアール・ハリと明継だった。


「となりのクラスの変態王子とコニーちゃんが知り合いだったらしい。どういった関係なのだろうか」

「何か肉体組成が近いのかもしれんな」

「DNA鑑定はできないのか? アール・ハリ」

「そこまではできないさ」

「ところで星子ちゃんの画像はとれたかな?」

「撮っていない。撮っているのはコニーとアルブレヒトだけだ……何? あの男??」

「どうした、アール・ハリ」

「尻尾に骨があるぞ。あの尻尾は本物だ」

「マジで?」

「マジだ。それにあの耳だが、基本構成が軟骨だ……これも本物だ」

「本物の耳と尻尾?」

「ああそうだ。あの構成は惑星アルマの獣人に近いな」

「それって、アルブレヒトが宇宙人って事か? 信じられない」

「そういうカテゴライズならば、私も宇宙人なんだが?」

「そ、そうだったな」

「アルブレヒトの方が人間に近いぞ。私は基本ミミズの集合体だからな」

「……すまない。アール・ハリ」

「気にするな。我々には人権や差別という概念が無い。ただし、単純に宇宙人だからという理由で差別すると、そういった人権擁護団体に弾劾されるぞ」

「そうなのか?」

「ああそうだ。だから、コニーに対しても注意しておけ。アメリカ人だと名乗っていても、その実はアルマ帝国の人間かもしれないからな」

「アルマ帝国……聞き慣れない名だな。アール・ハリ」

「まあな。私たちとは対立している陣営になる」


 うーんと腕組みをして顔をしかめる明継は、話の内容について行けないようだった。


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