第11話 女装した明継と冬支度のアール・ハリ

「似合うじゃないか。なかなかの美人だと思うが、気に入らんのか?」

「気に入らない。何でこんな格好をさせる」

「それは、貴様が美しいからだ」

「美しいだと? 男に女装させて何が楽しい!」

「??」

「何とぼけてるんだよ」

「私にはね。その男女の性というものがなかなか理解できないのだよ」

「何故わからんのだ」

「興奮するな、明継。我々は貴様達人間と違って雌雄同体なのだ。男女の性について表面的な知識はあっても、本質的な部分は理解できないのだ」

「理解できないのか……これ以上話をしても無駄なようだ」

「うむ。では店に入るぞ」


 明継とアール・ハリは、カフェ〝シャーマン・ファイアフライ〟の鋼鉄製の扉を開いて店内に入った。


「いらっしゃいませ~」

「いらっしゃ……」


 星子は暢気に挨拶をしていたが、すぐに気づいた波里はその場で固まっていた。店の奥では知子とコニーが相談している。


「来たわ。アール・ハリと明継よ」

「凝りない奴らね。今度は何を企んでいるのかしら」

「何かあれば私がぶった切る」

「まあまあ知子さん。今日はお客さんとして来てるみたいだし、何かあれば私が対処するからね。仕事に集中しよ」

「分かったよ。コニー」


 波里と星子が接客し、明継とアール・ハリを席へと案内した。二人はひそひそと小声で言葉を交わす。


「おい、アール・ハリ。ちゃんと撮れているか」

「問題ない。今日は骨格と筋組織、そして血流にフォーカスを当てて撮影している」

「あの……服だけ透視は?」

「やらない。まだこだわっているのか?」

「こ、こだわるさ。星子ちゃんの巨乳は永遠の憧れだ」

「夢を追い続けるのもいいが、少しは現実を見つめろよ」

「そんな事は無い」

「どういう意味だ?」

「努力が報われる可能性があるからだ。星子ちゃんと結婚できればあの巨乳は触り放題……」


 バコン!


 波里が金属製のトレーで明継の頭を叩いた。


「聞こえたわよ。馬鹿明継」

「何するんだ、羽里。痛いじゃないか」

「星子ちゃんの胸は私の物です。あんたには触らせないんだから」


 ゴチン!


 今度は知子が波里の頭をグーで殴った。


「痛いよ、知子ちゃん」

「馬鹿はお前だ。星子の胸は星子の物だ。他の誰の物でもない。強いて言えば、その管轄権は私にある」

「それは強引だよ。それじゃあ知子ちゃんの許可が無いと星子ちゃんの胸に触れないじゃない」

「当たり前だ。星子の胸に関しては私がルールだ」


 そこへもう一人の男子生徒が現れた。竜王学園の校章が入ったブレザーを着ている彼は、知子たちの同級生だった。


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