第9話 透視撮影は阻止すべし
知子の後ろから星子と波里も顔を出す。
「大騒ぎしちゃって恥ずかしいなぁ」
「そうそう。星子ちゃんだって人前じゃあそこまで馬鹿やらないよ」
「羽里ちゃん。そんな事言わないでちょうだい」
「落ち着け星子。で、喧嘩の原因は何だ?」
知子の問いにアール・ハリが答える。
「いやいや、ちょっとコニーちゃんと記念撮影がしたかっただけなんだ。その段取りでな。意見が少し食い違ってただけなんだ。な、明継」
「そ、そうなんだ」
二人共落ち着かない様であり、特に明継の方は露骨に目が泳いでいた。そんな様子なので、知子はかなりの不信感を抱いていた。
「何だか怪しいな」
知子がぼそりと呟く。しかし、明継は焦ってその言葉を否定した。
「そ、そんな事は無いぞ」
「でも残念だよね。コニーちゃんはさっき飛行機に乗ってアメリカへ帰っちゃったんだよ」
「まさか? 星子ちゃん。本当なの?」
「本当だよ。仕方がないから私達と記念撮影する?」
「さ、賛成だ。アール・ハリ、頼む」
「わ、分かったよ」
明継は相変わらず頬を赤らめ目が泳いでいる。知子はそんな明継に不信感を抱いていたが、星子と波里は記念撮影だとはしゃいでいた。
「その、すんごいヘルメットがカメラなの?」
「そ、そうだよ星子ちゃん」
「じゃあ、みんなでキラッ☆彡ってするからちゃんと撮ってね」
「分かったよ」
明継を中心にして、その両側に三人のJKが並ぶ。アール・ハリは自身が被っているヘルメットを触りつつ、何かを調節していた。
「じゃあポーズ行くよ。明継君も一緒にね」
「わかったよ」
「せーのー」
「キラッ☆彡」
「キラッ☆彡」
「キラッ☆彡」
「キ……ラッ……☆彡」
人差し指と親指、そして小指を立ててポーズを取るJK三名に対し、明継は一呼吸遅れてポーズを取った。アール・ハリの被るヘルメットがブーンと唸り、カシャリとシャッター音が鳴る。
「ちゃんと撮れたかな?」
「多分大丈夫だよ」
星子の問いにアール・ハリが笑いながら答えた。
「じゃあね」
「またね」
「さようなら」
JK三人組は手を振りながら去って行った。
「行ったか」
「行った。もう見えないから大丈夫だ。さっそく画像を見ようではないか。当然、衣類だけ透視しているのだろうな」
「そのつもりだ………( ゚Д゚)ゲゲゲ……」
「どうした?」
「あ、これは不味い」
「何が不味いんだ?」
「皮下脂肪ばかり写っている」
「え??」
「やはり、お前の好きな星子が一番多いな」
「そそそそそうだな」
「くくく。残念だったな」
「ここが胸。ここがおしり……」
「いつまでもやってろ」
「星子ちゃん」
アール・ハリと明継はすっかり忘れていた。肝心のコニーを撮影できなかった事を。
こうして地球の平和は守られたみたいだった。
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