第6話 戦闘用アンドロイドを撃破せよ

 不意に現れたそれは概ね人の形状をしていて、青黒い鎧をまとっていた。身長は2メートル50センチほどで細長い顔と長い尾があり、まるでトカゲ人間といった姿をしている。そして、赤く輝く三つ目が特徴的だった。


「あれは?」

「我がアルゴル族の誇る戦闘用アンドロイド・ラプトルだ。対人殺傷用の最終兵器だな」

「?」

「どうした?」

「いや……お前たちはミミズだよな。何でトカゲ人間っぽいデザインなんだ?」

「細かいことは気にするな。ゴリラ枠の短足タイプや、猪型の四足歩行タイプとかあるんだが、一番見栄えの良い奴を用意したのだ。これは女性に大人気だと思うぞ」

「うむ。確かに星子ちゃんが好きそうなデザインだ」

「行け! ラプトルよ。あの四人のJKを捕まえてこい」


 ウゴゴゴアアアア!


 青黒い鎧を着たトカゲ人間型の戦闘用アンドロイド、ラプトルが声高々に吠えた。そしてのっしのっしと歩き駐車場中央にいるJK四人組へと近づいていく。


「ところでアール・ハリ。あのラプトルって奴は危険じゃないのか。星子ちゃんに怪我させたりしたら許さんぞ」

「安心しろ。危険な装備は外してあるし、人を傷つけないようにプログラミングしてある」

「なるほど」

「さあ行け。ラプトルよ。コニーを叩くのだ」


 駐車場の中央。

 JK四人組が接近してくる戦闘用アンドロイドに気づいた。


「きゃ。また何か出て来たよ」

「大きい。2メートル以上あるじゃないの」


 星子と波里は手を握り合って怯えていた。しかし、知子とコニーは冷静に相手を分析している。


「青黒い装甲が渋いな。トカゲ人間っぽいデザインは案外格好いいじゃないか」

「でも、赤い三つ目は変態チックだわ」

「まあいいさ。こいつでぶった切ってやる。でやああ!」


 光剣を構えた知子が素早く踏み込み、光の刃を上段から振り下ろす。しかし、刀身は青黒い装甲に弾かれた。


「嘘。光剣が弾かれた?」

「表面に対ビームコーティングが施されているわ。光学兵器は全て弾きます。私に任せて」

「コニーちゃん!」

「頑張って!」


 星子と波里の声援を受け、コニーが飛び出す。ラプトルは右腕で殴ろうとするのだが、コニーは残像を残して懐へと飛び込んでいた。そして、ラプトルの腹に正拳を打ち込む。

 轟音と共にラプトルの腹に大穴が開いた。そしてコニーはラプトルの両腕を引きちぎった後にジャンプし、回し蹴りで頸部を叩き折った。


「嘘だろ。一瞬で破壊された。どんな腕力してんだ?」

「握力は2トン以上あるし、パンチの貫通力は120ミリ滑腔砲を超えてる。めちゃくちゃ高性能なサイボーグだ」

「貧乳なのに、どうしてそんなに高性能なんだかな」

「そのセリフは不味いぞ。明継……」


 明継のつぶやきを聞き取ったコニーの顔色が変わる。


「聞こえた……胸の寂しい乙女を傷つける言葉」

「不味い。逃げるぞ、アール・ハリ」

「もちろんだ」


 咄嗟に逃げようとする明継とアール・ハリだったが、コニーに回り込まれてしまう。


「加速装置か? 駄目だ補足されている」


 退路を断たれた二人は潔く土下座をしていた。


「許して。悪気は無かったんだ」

「ほんの出来心だったんだ」

「貧乳などと言う不埒な言葉を使用する輩には天誅を加えます。お覚悟!」


 必死に謝る二人だが、コニーの怒りは収まらない。明継とアール・ハリは超高速の往復ビンタを喰らっていた。


「うぎゃぁ~」

「あぎゃ~」


 そして再び土下座して謝罪する二人。


「ごめんなさい。もう二度とやりません」

「胸の形容詞に関しては以後厳重に注意いたします」


 しかし、コニーの怒りは収まらない。再び往復ビンタの嵐が吹きすさぶ。鼻血を垂らし、両頬を腫らした明継とアール・ハリは、何度も謝罪と再発防止の誓をした。そしてようやく、コニーの怒りは収まったようだ。


 こうして地球の平和は守られたらしい。

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