第5話 アール・ハリの襲撃
青白い顔をした一般人に囲まれたJK四人組である。
「きゃ! 何?」
「ゾンビみたい。何なの?」
「みんな普通の人だよ。どうしよう」
星子と波里の二人は動揺を隠せない。しかし、知子とコニーは冷静だった。
「仕方がない。私がやる」
知子はスカートをまくり、太もものホルダーから銀色の筒を取り出す。それを握って構えると、筒の先端から青白い光の刃がすらりと伸びた。銀色の筒は光剣の柄だった。
「ぶはっ。知子のやつスカートまくって丸出しじゃないか。バッチリ見えたぞ」
「何を見たんだ」
「下着だ。あいつに似合わない可愛い下着、水色の縞パンだったよ」
「縞パン?」
「ああそうだ。ヤツは学園一の美脚と言われてるんだ。だから下着も黒とかレースのやつとか、そういうそそるのを期待してたんだが違っていたという訳だ」
「お前はおっぱい星人ではなかったのか?」
「もちろん俺はおっぱい星人だ。だからと言って、女性の脚や尻に興味がないという訳ではない。まあ、美しい女性を愛でることには変わりがないではないか」
「そうかもしれんな。しかし明継。問題は知子の光剣ではないか」
「あんなものをスカートの下に隠しているとはヤバイ女だ。ところであの光剣は、何でも切れるって設定の奴だよな」
「設定上はな。まさか、アレで切り刻むつもりなのか?」
「まさか、一般人相手にスプラッタショーはやらんと思うが……」
物陰から心配そうに様子をうかがう明継とアール・ハリ。
知子は光剣をブンブンと振り回し、近寄ってくる青白い顔の一般人に斬りかかろうとしたのだが、コニーが知子の肩を掴んで静止した。
「待って知子ちゃん。私がやります」
「え?」
「コニーちゃん?」
「消えた?」
知子の傍にいたコニーは一瞬で数メートルを移動し、サラリーマン風の背広を着たオヤジのみぞおちを掌底で叩いていた。そして、時計回りに次々と、彼女達を囲んでいたゾンビもどきの人々を倒していった。
コニーは約3秒で十数名を昏倒させていた。
「信じられない。何という高速移動!」
「囲んでいた一般人をすべて倒した。あの格闘術は何なんだ? 強すぎるぞ」
「そうだな、明継。注目すべきは高速移動術、アレはまさか『加速装置』なのか?」
「加速装置?」
「そうだ。伝説のサイボーグ技術として名高い」
「伝説って。そんなサイボーグ技術はまだ実現されていないぞ」
「いや、我々の世界での話だ。その素案は日本発だったと聞いていたが?」
「アニメの話を信じるな」
「そうなのか? しかし、現実に目の前で起こっているのはそれしか考えられない。人の視力ではとらえられない高速での移動と攻撃、時々目に留まる残像がそれを物語っている」
「コニーの特殊能力とは、高性能サイボーグだったという事か?」
「その線が濃厚だ。人を操る能力と言うのはデマだったようだ」
「デマか。ではどうする?」
「コニーの能力を探る。戦闘用アンドロイドを用意しているので、それを使ってコニーの実力を探ろうではないか」
「マジかよ、ぶっ壊すなよ」
「安心しろ、明継。被害は出さんよ」
アール・ハリがパチンと指を鳴らすと付近の空間が揺らぎ、その中から黒い人型の影が出現した。
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