第3話 アール・ハリの秘密

「美味しかった!」

「さすがは星子ちゃん。食べっぷりが凄まじいよ」

「羽里ちゃんそんなこと言わないでよ。私が大食いみたいじゃないの」

「事実だ。あの化け物プリンアラモードを完食するなど正気の沙汰ではない」

「もう、知子ちゃんまで」

「でも、楽しかった」

「そうだね。コニーちゃん」


 知子、波里、コニーの三人は普通サイズのショートケーキやパフェを注文したのだが、星子だけ特盛のフルーツ山盛りプリンアラモードを注文し、そして完食したのだ。その名も『超重戦車系プリンアラモード〝マウス〟』であった。四名のJKは笑顔で店を出ていく。


「不味い。店を出て行くではないか。すぐに追うぞ、明継」

「分かった」


 その四名の後を追おうとした明継とアール・ハリだったが、まだ勤務時間中であったため、当然、待ったがかかる。


「お前ら遊んでないで仕事しろ。ホールの片づけが済んだらゴミ出しだ。サボるな!」

「げ、店長!?」

「仕方がない。追跡は断念する」

「分かった。アール・ハリ」

「心配するな。奴らの行先は限られている」

「よく知っているな」

「任せておけ」


 店長に命じられ、渋々と仕事に専念する二名だった。そして勤務時間が終了した後、二人はロッカールームで話し合っていた。


「やっと終わったな」

「ああ。これから偵察活動に移行する」

「待て、アール・ハリ。着替えないのか? この格好のままなのか。ウェイトレスの制服だぞ」

「これは変装だ。明継」

「かえって目立つのではないか?」

「そんな事は無い。貴様など美女過ぎて明継だと分からないさ」

「そうかな……だが時間が惜しい。すぐに出発しよう。ところで何処へ向かうのだ?」

「コニーのマンションだ」


 明継はアール・ハリの返事に対して訝し気な表情を隠せない。


「おい、アール・ハリ。何故そんな事が分かるのだ?」

「ふふーん。私の一部をコニーのカバンに忍び込ませているのだ」

「ミ、ミミズをか?」

「嫌そうな顔をするな。貴様は私の体が環形動物ミミズの集合体で構成されている事を知っているではないか」

「ううう。その通りだが……それは知識として一応、認識しているだけであって、未だそんな突拍子もない事実に納得している訳ではないぞ」

「ふん。考えるな。感じるんだよ、明継」

「分かっている」

「さあ急ぐぞ。私の分身が干からびる前に、接触したい」

「干からびる……」


 アール・ハリを構成するミミズであるが、それは空気中では容易く乾燥し干からびてしまうのであった。

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