第14話 事件の後で

 その後、学園は元通りになった。消えた人々もすべて元に戻り、行方不明となった人は誰もいなかった。そして信じられないことに、その事件を覚えている人はいなかった。知っているのは私たちだけ。他の人の記憶は消されたらしい。


 更に信じられないことに、明継と春彦は学園へ通っていた。春彦はミノリン先生の奴隷にされたのだから仕方がないとしても、明継の方まで堂々とクラスに顔を出しているのはどうなのだろうか。厚顔無恥とはこの事だろう。二人は特に何かするわけではないが、羽里が星子にちょっかいをかける瞬間だけは見逃さないようだ。そして、春彦だけでなく明継もちょくちょくミノリン先生に呼び出され、何か仕事を押し付けられている様だった。


 あのロボット、エリダーナ・セイバーはミミ先生の家に保管してある。そして、霊力駆動型のロボットも追加で配置された。星子は何故かその霊力駆動型の操縦適正があるらしく、専用の物を貸与されたらしい。

 ミミ先生の自宅が広いとはいえ、10メートル級のロボット二機が入るわけがない。このロボットは、ミミ先生が発明した異次元倉庫に隠してある。戦車はそのまま一階に保管されている。警察やら自衛隊やらの世話になりそうなものだが何故かおとがめはない。「何処かから盗まれたものなら探すだろうけど、そんなものは何処にもないからね。砲身はプラ製のギミックだしいいんじゃないの?」とはミミ先生の弁である。砲身や弾薬、機関銃は例の異次元倉庫に隠してある。


 星子は相変わらずボーっとして妄想の世界に浸っている。最近はアカンサスやゼクローザス、リナリア等の単語が追加された。これは、異星人から貸与されたロボットの名前とその派生型らしい。そんなものでご機嫌になれるのだからこいつは幸せ者だ。当の本人が何を考えているのかはわからない。


 しかし、私はいつも星子の傍にいる。私が常に隣にいる。この事実が私を満足させる。そう考えると私は幸せになれる。


 さあ、今日も羽里の馬鹿から星子の胸を守るぞ。私の日々は充実しているのだ。


[おしまい]

 

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