第9話 雷の魔人アスモデ その①
セイバーのモニターはアスモデの姿を捉えている。そして、アスモデの体を構成している金属片の一つ一つをロックオンしていた。
モニターには射撃準備完了と表示され、セイバーのAIがアナウンスを始める。
『射撃準備完了しました。発射の指示をどうぞ』
「撃て!」
「撃っえぇ~」
私と星子が同時に叫んだ。セイバーが腋に抱えているビームライフルから眩い光芒が数度発射され、そのビームはアスモデの体で弾け、その無数の金属片を吹き飛ばした。しかし、飛ばされた金属片は雷を帯びたまま、再びアスモデの体へと戻って行く。
「あれ? 全然効いてないの?」
星子の疑問ももっともだ。雷の魔人とはエネルギー体なのだろう。私はセイバーのAIに語りかける。
「効果がないな。ビーム砲だからか。実弾兵器ならどうか?」
『了解。ガトリング砲の射撃を開始します』
セイバーの右肩部分の装甲が開き、中から4砲身のガトリング砲が顔を出す。そして射撃を開始した。
ブーンと唸るような発射音と共に、幾多の機関砲弾がアスモデに吸い込まれる。しかし、アスモデがまとう金属片を散らしただけで効果があるようには見えなかった。
『目標に損傷は見られません』
冷静なAIの報告に星子が腕組みをして唸っている。
「これはね、きっと核になる何かがあるんだよ。そこを突かないと倒せないんじゃないかな?」
もっともらしい星子の言い分だが全く根拠は無い。
「ウゴゴゴゴ!」
アスモデが唸る。そして雷光と共に、体を構成している金属片が弾けた。
「防御」
『了解』
セイバーが大きな盾を構えると同時に無数の金属片と雷に叩かれた。モニターがホワイトアウトし、情報が表示されなくなった。
「どうした?
『肯定。高エネルギーを帯びた、強力な過電粒子を一気に放出しました。光学モニター、およびレーダー系受信機を一時的にシャットダウンしましたが、当機の機能は正常です』
つまり、一時的に目が見えなくなったという事か。
「実剣抜刀、前方を突け!」
セイバーは抱えていたビームライフルを投棄し、腰の実剣を抜く。そしてそれを、当てずっぽうだが前に突き出した。
けん制のつもりだった。
しかし、右腕が衝撃を受ける。大きな質量を持つ何かを貫いたかのようだった。
メインモニターが回復し、視界が回復した。正面に真っすぐ突き出されたセイバーの剣に、黒い球体が突き刺さっていた。それはちょうど、アスモデの心臓の位置だった。
「え? 何が起こったの?」
星子が私の膝の上から立ち上がって正面のモニターにかぶり付いている。よく見えないので星子腕を掴んで私の膝に座らせた。
「まさか、星子が言ってた核を貫いたのか?」
『肯定。当機の実剣が高エネルギー体を貫いています。ただし他に二つ、同様の物体を確認』
なるほど。咄嗟に剣で突いたのだが、それが偶然命中したって事か。
剣の先端に突き刺さっていた黒い球体は激しく発光した後に爆発した。その閃光が消えた後、数十メートル先に再び雷と金属片が集まり人型を形成した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます