第10話 雷の魔人アスモデ その②
「実弾射撃だ。残り二つの核を撃て!」
『了解』
AIが返事をした後、右肩のガトリング砲が再び火を噴く。機関砲弾はアスモデの左胸に吸い込まれていくのだが、無数の金属片が集中して防御された。そして雷精の両腕より放たれた幾多の雷がセイバーを直撃した。
「きゃ!」
機体が激しく揺れ、星子が悲鳴を上げる。そしてモニターがホワイトアウトし何も見えなくなる。
また視力を奪われた。
奴はここで仕掛けてくる。
そう直感した私は、セイバーの実剣を水平に薙ぎ払う。牽制になればと、咄嗟に取った行動だった。空を切ると思っていた剣は、ガキンと音を立てて何かと衝突し阻まれた。
すぐにモニターが回復し状況が判明した。奴が全身にまとっていた金属片が大ぶりな剣へと形を変え、その剣でセイバーの剣撃を受け止めていたのだ。
凄まじい雷撃でセイバーの目を潰し、その隙に攻撃しようとしたのだろうが、そのタイミングで私が剣撃を加えていた。そんな事だろう。
先ほどは無数の金属片に阻まれ機関砲弾は奴の核を撃ち抜けなかった。しかし、その邪魔な金属片は剣となっている。核は無防備だ。
セイバーの照準は、残り二つの核を捉えていた。私は迷わず引き金を引く。ブーンと響く連続音と共にガトリング砲が火を噴いた。そして、アスモデの頭部と左胸にある核を撃ち抜いていた。
アスモデが携えていた剣、即ち、奴がまとっていた金属片が集合した剣は再び無数の金属片となり地面へと落ちていく。
アスモデはひとたび激しく発光した後、火花を散らしながら消滅した。
「消えちゃったね」
「そうだな……あそこ!」
私は思わず指さしていた。アスモデが消えた場所、その地面の上に何かの小動物がいたからだ。一瞬、三毛猫かと思ったのだが、よく見るとネズミのようだった。AIが気を利かせてくれたようで、モニターがそのネズミを拡大表示した。
「あれ、ゴールデンハムスターだよ。白黒茶のまだら模様が可愛いんだ」
「確かに。ペットショップで見た事がある」
そのハムスターはポリポリと頭を掻きながらぼそりと呟いた。
「あー。こんなに強いなんて聞いてませんって。こりゃ追加料金を貰らわにゃ合わねえって」
そのハムスターは、そんな台詞を吐きながらアッカンベーをした。そして草むらの中へと消えた。
「あのハムスターが雷の魔人?」
「多分そうだ。しかし、正体があんなネズミだったとは……」
正直驚いた。
しかし、勝ったのは私たちだ。私たちのセイバーが、あの雷の魔人アスモデに勝ったんだ。
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