第8話 魔物との決戦
「素直に引き渡してはくれないようですね。ではこうしましょう。貴方たちの代表と私たちの代表が勝負します。三試合して二勝した方が勝ち。負けた方は勝った方の要求を受け入れる。いかがですか」
「受けてやる。お前達はぶっ飛ばす!」
私は思いっきり叫んでいた。
明継の隣にいた春彦が頷いた。彼は右腕の包帯をほどいていく。すると、その右腕から三つの黒い影が飛び出し、巨大化していく。
それは神話に出てくるような、巨大な三体の魔物に変化していった。
一体は、炎のような鱗に包まれた赤いドラゴン。その鱗の一枚一枚が、めらめらと赤く燃えていた。体長は20メートルほどであろうか。もう一体は、全身に青白く輝く氷の鎧をまとった戦士だった。しかし、鎧の中身は、正体不明の真っ黒な霧であり、怪しく輝く双眸しか確認できない。身長は10メートル程度だろう。そして最後の一体は、いくつもの幾何学的な金属片が雷光によって繋がれ、大まかには人間の姿を形作っている。その金属片の一つ一つが電気火花を発している。その身長は概ね10メートルほどだった。
「ほう。炎の精と氷の精、雷の精の三体を呼び寄せましたか。なるほど、これは強敵だ」
戦車の砲塔にしゃがんでいたトリニティが立ち上がって呟く。
「トリニティ、どうする。私の装備があいつらに通用するとは思えんのだが」
「ミノリン先生は戦車で指揮をお願いします。きっと大丈夫ですよ」
「どういうことだ?」
「あのセイバーは完璧に強いし、この三式戦車も連合宇宙軍の技術で改造されていますしね。私自身はあのような魔物に引けを取るつもりはありません」
「自信満々だな」
「ええ。対戦順はセイバー、私、三式戦車の順で」
「分かった」
何故トリニティが自信満々なのか、私には分からなかった。ミノリン先生は声を張り上げ、明継に告げる。
「こちらはセイバー、トリニティ、三式戦車の順で戦う。それでいいな」
明継はニヤニヤしながら頷いていた。
「構いませんよ。春彦の魔法生命体に勝てればいいですね。火竜の名はベルフェ。氷の戦士はレヴィア。雷の魔人はアスモデ。お見知りおきを。そうそう。万一、誰かが死亡した場合は自己責任とする。我が国における魔法戦の原則を適用させていただきます」
「分かった。後悔するなよ」
「そちらこそ。ふふふ」
明継の言葉に頷くミノリン先生だった。明継は不敵な笑みを浮かべつつ、春彦と共に後退していく。
「綾川。第一戦は任せた。頼んだぞ」
「分かりました」
私は頷く。当然だ。こんな訳の分からないヤツに負けてたまるかってんだ。
トリニティを砲塔に乗せたまま、三式戦車はバックして下がっていく。そして、三体の魔法生命体のうち、あの、無数の金属片をまとったアスモデが前に出て来た。
雷の魔人アスモデ。電撃やあの金属片を飛ばして攻撃してくるのだろうか。それとも、
「春彦。やっておしまいなさい」
「はい、かしこまりました」
春彦の合図で、雷の魔人アスモデが襲いかかって来た。
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