第7話 敵地への侵入
ミミ先生の操縦する三式戦車が、ディーゼルエンジンの黒煙を吹き出しながら走り出す。砲手席には羽里が、ギー先生は装填手として中に乗り込んでいる。車長席にはミノリン先生が座り、砲塔の上から上半身を出して前方を睨んでいた。トリニティは砲塔の上、ミノリン先生の左後ろでしゃがんでいる。
私はというと、何と、宇宙人より供与された
この、全長が10メートル以上あるロボット兵器は漆黒の装甲を持ち、古代の重装歩兵を思わせるデザインをしている。このロボットに乗った星子は超絶ご機嫌だった。
「エリダーナ・セイバー発進」
「十時の方向に敵機。対空砲射撃開始。てー!」
こんな感じでキャーキャー騒いでいる。私の膝の上で。
このセイバーは私の思考を読んで動く。訓練された兵士であれば自由自在に操れるのだろうが、私はそうはいかない。AIの補助があるものの、動きは何だかぎくしゃくしている。それでも重力制御を駆使して空中を飛行し、学園までたどり着いた。
ミミ先生の操縦する三式戦車も校庭に入る。学園の周りには人だかりができているのかと思ったが誰もいなかった。周囲の人も巻き込まれたのだろう。
私たちの乗ったエリダーナ・セイバーは唐突に黒い渦に巻き込まれ、そして知らない場所へ移動していた。ミミ先生の戦車も一緒だった。
見渡す限り草原の続く場所。全く平坦ではなく、なだらかな起伏がある。その草原には所々、樹木が生い茂っている小さな林が点在していた。中央アジアのどこかだろうか。そんな印象の風景だ。
セイバーのモニターには赤い文字で[位置情報不明]との警告メッセージが表示されていた。
「よく来てくれましたね。戦車と人型機動兵器を引っ張り出すなんて奇想天外な人達です」
その場に現れたのはクラスメイトの
「君たちが異世界人だったのか」
戦車から飛び降りたミノリン先生が銃を向ける。しかし、明継に動じた気配はない。
「まあ、事を荒立てたくはないのです。話し合いをしませんか?」
「学園を丸ごと消し飛ばして何を言う。話し合うと言うなら学園とさらった人員を元に戻せ」
「それはできません。あなた達が私のいう事を聞いてくれるまでは」
「要求は何だ」
「それは星子さんです。来ているんでしょう。出てきてください」
「星子をどうするつもりだ」
「いじめたりはしませんよ。私の妻として愛でるだけです」
「妻だと」
「ええ。彼女は気の毒です。預言者としての資質を持つ高貴な魂の持ち主であるのに、同性の羽里さんや知子さんに告白され、冴えない三谷に熱を上げたりしています。気の毒でしょうがない。だからこの世界の太子である私が、彼女を娶り幸せにしてあげるのです」
「三谷のゲップは?」
「あれですか。わが国でもアレは罪になります。王が怒ったのですから罪は軽くはありません。とは言え、侵攻の口実ですね。そういう事です」
確かに、ゲップはマナー違反だがこれが国際問題になるとは思わなかった。しかし、星子を要求されては引き下がるわけにはいかない。明継の日ごろの目つきから、星子に気があることはわかっていた。
こんな奴らに星子は渡せない。
私は徹底抗戦すると心に誓った。
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