第11話 「ハーレム王」と「海賊王」

「うーん、どうしようかな?」


 目の前で星子が迷ってる?

 星子、波里の告白は断るんじゃなかったのか……。


 いや、そう思っていたのは自分であって星子ではない。私はいてもたってもいられず三人の前に飛び出していた。


「ちょっと待て羽里。私の告白が先だ。私がきちんと返事もらえるまでは待て」

「そんなの関係ないわ。決めるのは星子ちゃんだから」


 なるほどその通りだ。星子、どうするんだ。私と羽里に見つめられ、頬を赤く染めた星子が頷く。


「そうね。じゃあ、みんなでミミ先生と付き合うのはどうかな? ミミ先生にハーレム王になってもらおうよ」

「突然何を言ってるんだ、黒田。私はハーレム王なんかにはなりたくないぞ。強いて言えば海賊王だが……」

「じゃあ私たちを略奪してください。略奪王になって」

「星子ちゃんと一緒なら賛成」


 馬鹿な。星子も羽里も正気か?

 しかし、あの、微妙に冴えない風体のミミ先生に興味があったのは私も同じだ。彼の、女遊びをしていない純朴な雰囲気は、私にとってポイントが高かったのは事実だった。


「それは教師として許されない行為だ。教え子に手を出すなんて。しかも三人だぞ。な、そうだろう綾川」


 突然、私に話を振るミミ先生。

 その顔面は蒼白で、額には脂汗が滲んでいた。


 私はぼそりと呟いた。


「ミミ先生なら良いかも……。男の人ならミミ先生がイイって、前から決めてた……」


 私のその一言で、顔面蒼白になったミミ先生は逃げるように屋上から走り去った。


「あーあ。ミミ先生、逃げちゃった。私、わりと本気だったんだけどな」


 星子の言葉に波里はうんうんと頷いていた。


「私もね。結構気になってたんだ。クラスの男子なんかとは全然違っててね。ミミ先生、もう三十歳なんでしょ。それでいてあの純情な感じが素敵なんだよね」


 波里の熱弁に星子が頷いていた。


「そうなんだよね。あの浮世離れした感じが超個性的なんだよね。で、知子ちゃんもミミ先生が好きなんだよね。ね」


 星子がにじり寄ってくる。私は星子にうんうんと頷いていた。


「じゃあ私たちは同志だね。三人でミミ先生にアタックしようね。ね」


 星子が抱きついて来た。

 胸だけじゃなく、全身がぽよんぽよんと柔らかい。ああ。この柔らかい極上の感触はやはり星子だけのものだ。私はしばし、その感触を堪能していた。


「はいはい。離れて離れて。そんなに熱く抱き合ってたら嫉妬しちゃうよ」


 波里に星子から引き離されてしまった。


「じゃあ知子さん。ここは休戦ってことでよろしいかしら」

「ああ。構わない」

「私たちは、ミミ先生に三人同時攻撃、ジェットストリームアタックを仕掛けます」

「賛成!」


 星子もノリノリだ。しかし、ジェットストリームアタックは同時と言えば同時だが、それ、時間差攻撃じゃなかったのかという疑問が沸き上がる。

 まあ、そんな事はどうでもいい。

 無鉄砲な恋に突き進むのも悪くはない。こんな楽しい高校生活なら、むしろ大歓迎だと思った。


[おしまい]

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