第10話 告白対決は屋上で

 私に刺激されたのか、羽里も星子に告白しようとしていた。放課後、星子を屋上へ呼び出したのだ。さすがの波里も、教室で堂々と告白する勇気は無かったらしい。


 気が気ではない私は屋上へと先回りし、物陰に隠れて入り口を見張る。波里の告白がうまくいくのかどうか、確認する必要があるからだ。


 約束の時間に羽里は屋上へと来ていたが、星子の姿はない。あの馬鹿、どこかで妄想にふけっているに違いない。星子を探して連れてくるべきか、私は真剣に悩んでしまった。しかし、私にとって波里が無視された方が都合がいい。あはは。まるで自分の事のように気が動転しているじゃないか。情けないったらありゃしない。


 私がその事実に気づいた時、屋上へと人が入ってきた。男女二人の声がした。そこへ来たのはミミ先生と星子の二人だった。


「あ、羽里ちゃん待った? ごめんね」

「いや、そんなに待ってないけど。どうしてミミ先生と一緒なの?」

「下で偶然出会ってさ。ミミ先生も屋上へ用事があるからって言ってたんで、一緒に来ちゃったよ」


 このナイス馬鹿(笑)。こんだけ空気読めない馬鹿は天然記念物級だ(爆)。


 私は心の中で拍手喝采していた。


 天然な星子の態度に面食らっていた波里だが、腹をくくったらしい。その羽里が高らかに宣言した。


「じゃあミミ先生。証人になってください」

「え?」

「私、今から告白します!」


 マジかよ。羽里の奴、ミミ先生の前で告白するのかよ。教師の眼前で告白するとは、こいつも大馬鹿だ。しかし、その根性には敬意を表したい。これも、正しい意味での破天荒だと思った。


「星子ちゃん。貴方の事が好きです。特に胸元が大好きです。私と付き合ってください」


 ミミ先生の前で言いやがった。しかも、胸元が好きだとか公言しやがった。羽里の根性に心が揺さぶられる。圧倒的ともいえる圧力を感じた。これは不味い。星子が波里に奪われるかもしれない。

 私は焦った。しかし、今、飛び出すわけにはいかない。星子の返事を確認しなくてはいけないからだ。

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