SOL.3:『射手座』を狩れ!
ドシュゥゥゥゥゥッッ!!
基地を飛び出す、8機のBBB。
ルル達足の速い汎用機を先頭に、陸戦機4機が続いていく。
『各機、敵の情報は少ないとは言え、まず相手は敵初の重陸戦型!!
汎用機じゃ当たり負けするから距離をとって戦って!』
『『『『『『『了解!!』』』』』』』
『聞いてたろヒルド3?突出すんなよ!』
『言われなくても、こんなワイルドボアじゃわたくし流の戦い方は無理ですわ』
この前と引き続きワイルドボアのパッケージに換装して出撃したヒルド3、ことシャルロッテは膨れ気味に答える。
『そんなに悪い機体ではあるまいヒルド3。何が不満だ?』
『倍の速度と倍の装甲を』
『また始まったよシャルのブルーローズ好きが』
『そういえばヒルド3はあの欠陥機に好んで載っていたと聞いてるでござるがー?』
『欠陥機でもわたくしには最高の機体でしたわよ、ヒルド1?』
『なんとまぁ、物好きな。ヒルド3、ゲテモノ好きは理解されにくいぞ?』
『あーら、ヒルド4みたいなお堅い現代剣士様に言われるだなんて』
『ヒルド隊!ふざけてる場合じゃなくなったっぽい!!12時方向!!』
オルトリンデ1、ルル機のブライトウィングからの無線に全機が前方を向く。
『うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっっ!!!』
馬の様な体の横で、左腕の残ったままバチバチと漏電する大型Eシールド発生装置で殴るブルドックが一機。
『海兵隊をナメるなぁーッ!!』
その一撃で完全に壊れた左腕のユニットがパージされ、へこんだ馬の様な胴体へ両肩にそびえる砲身が少し縮んだ280ミリ砲が向く。
ズドォンッッ!!!
炎を吐く様な勢いで、へこんだ部分に風穴をあける様な一撃が放たれる。
『どうだこんにゃ、ろ……』
しかし、煙が晴れればそこには多少ヒビの入った黒曜石の様な面しか見えない。
理解する間もなく、無慈悲な半馬半人の敵機は槍型の武器を振り下ろす。
ボシュウッ!!
───半ば振り下ろされたその武器が、穂先全て撃ち落とされる。
『────ヒュー!誰か狙撃勲章くれよ!!大当たりだ!!』
遠く、左腕のシースルーキャノンを構えたダンデライオンからヴェロニカが声を上げる。
『帰ったらちゃんと申請するよ!!』
そして、敵の反応するまもなく真上からライフルを構えたルルのブライトウィングが、人型の頭からシースルーウェポンの光を貫かせる。
一瞬で、一機の新型のシュバルツが爆散した。
『よし!!
そこの機体!!無事!?』
『無事だよ、レディーエース!
────腕が筋肉痛じゃなきゃもっとまともに戦えたけどね!!』
『え!?まさか、ヨークシャテリアちゃん!?』
『テリア・ヨークシャー!!ワンワンじゃなーい!!』
そのズタボロながらもタフに動くブルドッグの中には、朝にあった少尉がいた。
『はいはい!ヨークシャー少尉、一度基地に戻って補給を!!動ける機体が欲しい!!』
『わかった!!撤退以外ならなんでもするよ!!』
海兵隊に下がれと言うのは基本的に聞き入れられないので、ルルはそう言葉を選んで言う。
こう言う言い方なら素直に下がってくれる。
後ろを見、即座に再び周りを警戒する。
「うわ……!」
火星の荒野を疾走する半人半馬のシュバルツ機動兵器群。
動きながらも馬部分の背部からアームでせり上がった弓に似た形の兵器を向けている。
「まずい!!砲撃くる!!」
ピュンッ!!
それは、シースルーウェポンではなかった。
とっさに、ルルはブライトウィングを地面すれすれまでしゃがませて回避したそれは、ルルの動体視力にはビームを纏った『弾丸』が見える。
「シースルーエンチャントキャノン……!!」
ズガァンッッ!!
数瞬後には、背後の火星らしい赤い色の大きな岩を砕く音が響く。
シースルーウェポン単体なら穴が開くだけだが、衝撃波があると言うことは実体弾だと理解できた。
「今の
コックピットの中、ルルは冷静に叫ぶ。
『ハァ!?野郎どもアタシのダンデライオンパクったのかよ!!』
『うわー、だとしたら数日で技術パクリ出来るとかいうクソどチートではー?』
降り注ぐSEキャノンの集中砲火。
元々防御できない攻撃相手は手慣れた面々が多く、光の雨とでもいうべき中を上手く動いて避け続ける。
「面倒な相手だな……ええと、」
『こちらスルーズ3。敵呼称には『ザジタリウス』はどうか?』
「良いんじゃないかな!
そういえば今日の星座占いは射手座が最下位だっけ!!」
『火星の星座占いも射手座使ってるんでしたっけ!?』
『そんなこと言ってる場合じゃないよオルトリンデ3!』
敵の新型───ザジタリウスの猛攻を避けるだけでも、命の綱渡り同然の感触を得る。
(……なんか避けやすいですわね……あらよっと!)
(恐ろしいのは変わらないが……妙にこの機体の動きが慣れている……?)
ふと、ワイルドボアの中にいる二人が、むしろ違和感を感じられない違和感に気づくが、そうも言っていられない猛攻が続く。
「やられっぱなしもあれだな……オルトリンデ4!」
『はい!!』
ふと、その言葉とともに、志津きのブライトウィング両肩に取り付けられた二つの筒が何かを放つ。
敵の前で放物線を描いて緩やかに落ちるそれが破裂した瞬間、ボフゥ、と真っ黒な煙が一瞬で広範囲に広がる。
─────敵センサーは、光学と赤外線、レーダーの3つが複合されている。
だが、このSSDF特製の『ペンタガス』は、自分たちもそれらが使えなくなることと引き換えにそれらを阻害し、シースルーウェポンから身を守ることができる。
そしてここが重要なのだが、
BBもBBBも、いや、海中で作業をすることもあるボーンにすら、
標準的に『
「スルーズ1、2!!
撃って!!」
『自信ないですが了解ぁーい』
『その指示待ってたぜ!!』
シュバルツの混乱の最中、煙を吹き飛ばす勢いで放たれる2機のダンデライオンのシースルーエンチャントキャノン。
逃げ遅れた一機がEシールド発生装置の盾ごと撃ち抜かれ、数機の固まった近くの地面が爆ぜる。
『ヒルド2、命中凄くなーい?』
『伊達に何度も奴等のドタマ吹き飛ばしちゃあいませんって!!』
晴れた煙から、脚部から伸びるキャタピラの駆動で逃げ出し、敵が混乱しているうちに距離を取る。
同じ場所にいるスナイパーなどいない。
だが、敵も恐怖は知らないのか、冷静に反撃の一発を放つ。
『
瞬間、形通りの構えで上へ向けられた武器から、黄色い光が放たれ、上空で放物線を描き曲がる。
『『ゲッ!?!』』
疾走するダンデライオン達に襲いかかるビームの雨。
上空から次々と襲いかかり、地面を穴だらけにしながら二つの陸戦機を追う。
『うひゃあぁぁぁ……!?!』
『クッソ、人気者はつらいぜ!!ケンタウロスって確か女の尻追いかけるの得意なんじゃなかったっけか!?』
『あーら、なら丁重にお帰りいただかないと!』
『我々の尻は軽くも安くもない!!
チェァァァァァァァァァァッッ!!!!!!』
砲撃を行うザジタリウスの一角へ、煙の残滓に紛れて近づいたワイルドボア───ジャネットの機体がサムライソードを構えて一瞬で距離を詰める。
ザンッ!!
まさに雲に耀く雷の如き速さと威力で、上半身だけでなくその先の馬の体まで切り裂く。
が、瞬間サムライソードの刃がバキン、と音を立てて割れズドンと重そうな音と共に大地へと落ちる。
『む……!?
硬いか……流石は新型』
『言ってる暇があったら下がっていただけますヒルド4!?
ほら!!』
と、シースルーバルカンで牽制し、ジャネット機を下がらせる。
しかし、対シースルー防御も流石は高く、左腕の盾より展開したEシールドで防ぎながら突撃を敢行するザジタリウス。
『まずい!!』
『だから言ったのに!!』
いくら陸戦汎用機といえど、質量の差とパワーの差で本格的な近接戦は危険である。
おまけにこの装甲の硬さで、突っ込まれては……
『───こっちだ!!ザジタリウス!!』
そこへ、ルルの引き連れたオルトリンデ隊がまた別方向から攻撃を加え始める。
『そのまま一機づつ仕留める!!無理ならすぐ下がって!!無理に撃墜数は稼がなくていい!!』
『りょ、了解!!』
『でも、数も多いですよ大尉!!』
『これじゃあ、撤退した海兵隊達が戻ってくるまでもたないんじゃ!?』
『待ってるのはそっちじゃない。
コイツらを地上戦で片付けるつもりはないよ』
ジョアンナ機のスターゴーストに隠れ、シースルーライフルのコンデンサを交換してルルは言う。
『どう見ても、奴らの性能が高い。
だから、いつだって、
────勝つために『反則技』を使うの』
***
格納庫
『BBB、インストレーションシステムコール、
リディアの機体が、海猫のパッケージへと換装され、黒い機体が前に出る。
『インストレーションシステムコール、
同じく、無人機であるBBBフレームが、フレーム単位で組み替えられ、背が低い百々目鬼がフル爆装で出来上がる。
『インストレーションシステムコール、
リュカの音声認証とともに、素体フレームへ装着される海猫と共通の飛行型BB装甲。
頭部はブレードアンテナが一本伸びる流線型の物にされ、背部のエンジンは単発の物へ。
そして、全身へと満遍なく配備される、6機のドローンユニット。
カラーリングが白とオレンジの『試作機』カラーへ変わり、換装を完了させる。
「BBB、インストレーションシステムコール!
そして、萌愛の音声認証コードと共に、
新型のパッケージが装着を開始する。
脚部と胸以外の空戦型基礎の装着。
フレームごと外された脚部が、大型エンジン内蔵の脚部ユニットに換装される。
長い2枚の翼型反重力ユニット、短い2枚の翼型スラスターが取り付けられ、胸部に空力を意識した装甲と吸気口が取り付けられる。
シャープで三角をイメージする頭部が取り付けられ、左手に巻く様に補助用兵装の3連シースルーガンを、
そして────自身の全長とほぼ同じ長さの巨大なライフルを掴み、換装を終える。
「スルーズ2、BBB全システムセッティング!」
『滑走路出るわよ!!
一歩、バランスに注意して進み出す。
タキシング、アフターバーナー、反重力装置全開、滑走路へ出た瞬間から走り出す。
『スルーズ隊、全機発進!!』
4つの空戦機は空へ飛行機雲を引いて、戦場へ舞い上がる───────
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます