第2話 前進立体陳列

 ララとシュシュの元に一通の洋封筒が届いた。

 前回と同じ封筒だった。


「ララ様。その封筒は?」

「うむ。差出人は不明だ。宛名は我々だな。中には……やはりカードが入っている。何々? 読んでみるぞシュシュ姫」


 ララがそのカードを読み始める。


「前進立体陳列とは何か? 小売業者には至極当然な単語である。本日はこの陳列の陳を平仮名に置き換えよ」

「えーっと。書いてみますね」


 シュシュはペンを握ってメモ紙にお題を書く。


『前進立体ちん列』


 その瞬間、頬を赤く染めるシュシュ。

 そしてララも同様に頬を赤く染め、額に手を当てる。


「ララ様。これはもしや……下ネタでは??」

「何か邪な意図を感じる。まさかとは思うが……」


 その時、リオネが会議室へと入って来た。


「何をやってるの? 何々? 『前進立体ちん列』って?」

「リオネさん。大きな声で言わないで」

「少し恥ずかしい……」


 口々に文句を言う二人。しかし、リオネはカードの意図を見抜いたようだ。


「ぷっ。これは下ネタね」


 クスクス笑っているリオネ。


「何を想像していたのかしら?」


 シュシュが顔を赤く染め返事をした。


「だって。『ちん』ってひらがなで書くとアレを想像しちゃって」

「アレってなあに?」

「何でもいいだろう。アレだアレ。そのアレが立体的に列を作って前進してくる姿を想像したんだ」


 頭から湯気を吹き出しそうな勢いでララが叫ぶ。

 それを片手で制しリオネが呟く。


「ララさん抑えてさえて。貴方が盛り上がったら仕掛けた人の思うツボ」

「そうだな。ここで私が取り乱しては話にならん」

「では仕掛け人は……」

「有原だ」

「有原ね。あの変態に決まっていますわ」


 二人が有原を非難する。


 その時、何故か有原はその会議室の隅でスマホをいじっていた。

 彼は突然の非難に度肝を抜かれ青ざめていた。


「ち、違う。僕じゃない。僕はそんな小売業の業界用語なんて知りません」


 必死に否定する有原だった。


「それもそうね」


 リオネが有原の言葉に頷いた。


「そうか」

「とすると仕掛け人はただ一人ですわ」

「馬鹿作者」

「ええ。あの腹黒いエロ作者」

「暗黒星雲」

「覚えてなさいですわ」

「次のターゲットは貴様だ」


 メラメラと燃え上がる復讐の炎。

 それは二人の少女の瞳の中で激しく燃え上がっていた。

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