第126話『不名誉除隊』



 ルィル・ビ・ティレナー少尉の不名誉除隊は世間に大きな衝撃をもたらした。


 一兵士の不名誉除隊は大したニュースにならず、精々その基地周辺で終わるところだった。しかし、ルィルの知名度は細々とした報道で終わるような功績を残してはいなかった。


 史上初の異星人とのファーストコンタクトを果たし、異星語の習得に深く貢献。異星国家日本との根強い交流の中核まで成したのだ。


 勲章の数も少尉の中ではずば抜けて多く、日本からも授与されてと軍人としてこれ以上ない誇れる道を進んでいた。


 そんな彼女が機密情報の流出を行ったのだから、国への最上級の反逆として評価は天から地に急降下することとなる。


 ネットでは支持するコメントと中傷するコメントが乱立した。


 ただ、ネット内でのコメントは公表された情報を元に各々の価値観と匿名性から解釈や取捨選択をするのでそれが世間の声ではないが、一番メディアに取り上げられる指標とはあった。


 一体どんな機密情報を流出しようとしたのか、日本絡みなのか自軍絡みなのか、機密情報故にどんな内容なのか分からず好き勝手な憶測が広がる。



「おーおー、好き勝手な言われようだな」


 リィア少佐はパソコンに映し出される自由と言う名の悪意のコメントを見ながら呟いた。


「失望したとかファン止めますとか、殺害予告までわんさかだな」


「世間の考えなんてそんなものよね。特に熱意もなく盛り上がっては、きっかけ一つで転じて盛り下がる。日本ではこういうのを炎上って言うらしいわね」


「良い意味でも悪い意味でも一気に燃え上がって一気に消える。炎上とはいい比喩表現だ」


「ネットの世界で勝手に出来た私を相手に何してるのかしらね。当事者からしたら誹謗中傷されても笑っちゃうわ」



 ネットで生きる人物からすればそれだけで精神的ダメージを受けるのだろうが、ネットよりリアルに生きるルィルから見たら滑稽としか思えない。


 もちろんネットの声を蔑ろにしていいわけではないにしても、ネットで生きない側からしたら自然と嘲笑してしまう。



「けどこの分じゃチャリオスも表向きは信用しそうね」


「これほど話題になればエミエストロンも出し抜けるでしょう。自作自演と思わせないために実際に情報流出までさせようとしましたし」



 ウィスラーの証言ビデオでは、エミエストロンは最上級のクラッキング能力の他にネット内の数多のビッグデータから対象の総合評価を出すと言われている。


 あるユーザーの言動に対して、それが本人か否かと真実か虚偽かだ。


 そうなると表面上の自作自演であっては見破れる恐れがあったため、実際に流出を行う必要があった。ルィルは機密情報のファイルに実際に少尉としての権限でアクセスしてコピーを取り、それを流出するやり取りを経て流そうとしたところで憲兵にわざと捕まえさせた。


 そして送り主も一考してより信ぴょう性を高める細工もしている。


 元々軍人故にどのような過程を経るかはルィルたちは把握していたため、知名度や功績から軍法会議には掛けずに不名誉除隊にする公算が高かった。


 それでも賭けに違いはないが、だからこそエミエストロンを欺くことができる。


 果たしてルィルは投獄されることなく、不名誉と言うレッテルこそつけられたが自由なまま退職する次第となったのだった。


 これでもバーニアン達が信じるかは分からない。今まで清廉潔白が素で行く素行だったルィルが情報流出を信じるかは分からないし、ルィルの行動を遡って不審とエミエストロンが判断スル可能性もある。


 ただ、ルィルは一つ身内にも秘密裏にその行動を裏付ける行為を行っていた。


 それを無事にエミエストロンが拾ってくれれば、情報流出の裏付けがされて自作自演の線を消してくれる。


 常に賭けが付きまとう事前準備だが、時には敵である相手を信じることもまた軍事には求められた。


 あとはユーストルを離れてアプローチを待つだけである。



「……そろそろ時間ね」


 不名誉除隊として退職したルィルは、最早ユーストルにいることは許されない。


 ユーストルにリーアンの民間人の立ち入りは業者以外許されておらず、民間人となったルィルは退去が命じられていた。


 ユーストルから出るルートは一つ。ラッサロンからマリュスに向かい、そしてロケット旅客機かジェット旅客機で遠方へと移動をするだけだ。


 ただ、ルィルは大学を卒業後すぐに一般曹候補生として入隊して今日まで来たから家がない。通常であれば実家となるが、家族とは半ば勘当状態で仲違いしているからしばらくはホテル住まいだ。


 出来ればこちらからアプローチを掛けたいところだが、向こうから来なければ意味がない。


 ルィルはカバン一つに纏めた荷物を背負った。



「ルィルさん、ここから先は身一つで行くことになります。お気をつけて」


「でもまずは勧誘の電話が来ない事には始まらないけど」


「来ますよ。狙いはどうあれ、軍を離れたルィルさんを不名誉のレッテル程度で諦めるとは思えないので」


「ルィル、くれぐれもすぐに受ける返事はするなよ。初っ端で受けたら感づかれる」


「そこが最大の正念場ですからね。気を付けます」



 別動隊メンバー一同がルィルを見る。


 ここからは完全に単独で後方支援無しでの活動となる。


 チャリオスから連絡がなければ文字通り不名誉除隊のまま終わり。勧誘があってもバーニアンに悟られたら終わり。気づかれなくてもテロやペオに関する証拠を押さえなければこれまた終わりだ。


 ウィスラーの遺言動画を確証に移すべく、正解の道はたった一本の失敗の脇道だらけの前途多難な道をルィルは一人で進んで行く。


 大役を一人に任せるからこそ、別動隊メンバーは皆ルィルに無言のエールを送った。


 もちろんこれは自ら志願してのことだ。全てが失敗したところで強要などされず、自ら選んだのだから誰も責めたりはしない。


「それじゃ、送信データの追跡お願いね」


 それを最後にルィルは別動隊本部のある駐日大使館の入り口を後にした。


 次に戻ってくるときはテロ事件が解決した後だ。



「ルィルさん」


 日本が来て六年。ラッサロンに配属してからは八年となるユーストルを後にすると流石に思うところがあると日本語で声が掛けられた。


 声の先に目線を向けると、そこには羽熊やその妻の美子を始めルィルと関わりのある日本人が集まっていた。


「昨日ニュース見たよ。本当に辞めるの?」


「ええ。つい魔が差してしまってね」


「もう会えないの?」


「民間人の立ち入りは出来ないから難しいかな。ごめんなさい、こんな終わり方で」


「ルィルさん……あのね、亜季……私と洋一さんとの娘を連れて来たの」



 言動から美子は潜入捜査で一時辞めることも知らないのだろう。妻だからつい話してしまうのかと思えば羽熊はちゃんと守っているようだ。


 美子は胸に抱える赤ん坊を見せて来た。


 映像や写真では見たが、実際では初めて見る二人の子供だ。


 まだ生後一ヶ月程度だからか小さく、目を瞑って眠っている。


「亜季ちゃんね。ようやく会えたわ」


 さすがに抱き上げることはせず、薄い前髪を少し撫でる程度の挨拶に留める。


 日本とは六年関わったが、赤ん坊を見るのは今回が初めてだ。リーアンの赤ん坊と上半身は変わらず、生体レヴィロン機関も未発達でちゃんと抱きかかえてあげないと地面に落ちてしまう。


 寝るのが仕事の共通のようで前髪を触った程度では起きようとはしなかった。



「ルィルお姉ちゃんだよ。ルィルお姉ちゃんのお陰で亜季は生まれたんだからね」


 羽熊と美子がくっつくきっかけこそ作ったが、そうはっきりと言われるとこそばゆくなる。


「ルィルさん、私ができることは多分あまりないけど、連絡はしてね?」


「もちろん」


 笑顔で答えると美子は下がり、日本人の中で一番の古株である羽熊が一歩前に出た。


「色々と大変だろうけど、信じてるから」


 その一言でこちら側が何を考えているのか察していると理解する。


「ええ、信じてて」


「ああ、あとこれ雨宮さんから預かって来た。餞別みたいなものだけど」


 羽熊は手のひらサイズのケースを取り出して自分の顔より高い位置に持ち上げた。


「落ち着いた後で開けてほしいって」


「ありがとう」


 昨日言っていた秘密兵器だろう。日本軍が用意したものだ。きっと役に立つものに違いない。


「名残惜しいけど便の時間が迫ってるから行くわね」


 これ以上いれば罪悪感からボロが出てしまいかねない。


「それではみなさん、さようなら。今までありがとうございました」



 他国の兵士を出迎えるなど異例であろうが、日本と言う国家の体現なのだろう。


 ルィルは日本人に見送られながら、単身ラッサロンへと移動した。


 全ては演技。そう分かっていても胸に抱く痛みはなんだろう。


 日本にも迷惑を掛けていると言うのに、あの見送りの顔を見ると胸が苦しくなる。


 だからこそ己に課した至上命令を完遂して再びこの地へと戻ってくる。


 ルィルはその誓いを新たにして速度を上げた。



      *



 チャリオスからの接触は思いのほか早く来た。


 不名誉除隊されながらも暖かい送り出しをされてから二日後。ユーストルから乗り継ぎをして丸一日かけて到着する、浮遊都市ロコトスの低価格ホテルにチェックインした初日にチャリオスから着信が来た。


 一週間は様子を見るつもりで、エミエストロンに拾わせるべく室内のパソコンから転職サイトを見ていたら早速来たのだった。


 大体数ヶ月置きに掛かってくる連絡故に携帯電話にしっかりと登録してある番号と名前。


 以前は鬱陶しく、連絡をするなと言っておきながらも掛かってきて、その都度着信拒否をしていればよかったと思いつつ忘れていたのが功を奏した。


 着拒していたのにここに来て解除していたら待っていたと思われてしまうからだ。


 ただ、すぐには出ない。


 腕時計の秒数を数え、三十秒ほどして着信が切れる前に通話ボタンを押した。



「もしもし?」


『チャリオス人事部のレイミーと申します。ルィル様の携帯電話でお間違いありませんか?』


 毎度のあいさつだ。


「……そうだけど、あなたも大変ね。毎度毎度電話を掛けて来て」


『そんなことございません』


「で、今日の要件はなに?」


 ここまではテンプレートだ。互いに分かっていながらもあいさつとして次につなげる。


『ルィル様、先日退役されたとお聞きしまして』


 あれだけ大々的に報道していれば知って当然で、当然それをネタに迫って来る。



「そうね」


『弊社ではルィル様を受け入れる準備があります』


「軍を辞めたからと言ってそっちに入るとは限らないんじゃないかしら?」


『もちろんです。ですが現実的な話としまして、英雄から堕落した方がこの先まともな職につけますでしょうか。ルィル様が名誉除隊となられたのであれば引く手数多でしょうが、わざわざ悪評を背負う企業は表舞台にはおりません。裏企業ならいざ知らずですが』


「そう言う私を勧誘しているそちらは裏企業だったかしら?」


『我々チャリオスは民間に対して事業はごく一部のみですので、市民の声に影響はありません』


 兵士にしろ兵器にしろ、契約を交わして輸出する相手は国家だ。世間の評判はさして意味はない。


「けれど私はお金欲しさに機密情報を売ろうとした裏切り者よ。国相手なら尚の事信用度が落ちるんじゃない?」


『軍役時代の十五倍の給与を手取りとして支払います。情報流出の目的が金であれば、相応の金額を支払えばする理由はないでしょう?』



 目的の違いだ。情報流出がスパイ行為か報酬目的かでコントロールできる。


 スパイに偽装した報酬目的だから、チャリオス側としては報酬を提示することでルィルをコントロールしようとする。


 十分な金を渡せば情報を売ることはないのだから、企業としては安全に引き込むことができる。だから十五倍と言う大企業の幹部でさえごく一部しかもらえないだろう報酬を明言した。


 逆を言えば、正規軍では少尉でしかない三十前半の女に対してそれだけの額を払う価値があると言うことだ。


 尉官程度で手に入る軍の情報はたかが知れている。


 日本に関する情報を得るためならば分からなくはないが、それは一度きりで十分で毎月尉官の十五倍の給与を払うほどではないはずだ。


 ルィル視点からすればチャリオスに入れるのは願ったりだし、そのついでに大金を得られるのは嬉しい。が、チャリオス視点での勧誘の意図が掴めない。


 純粋に報酬を上回る利益を得られる事業計画がルィルを中心にあるのか、ルィルの抱えている情報に継続的な利益を生む何かがあるのか。


 その意図はチャリオスに入ったからでよい。まずは連絡を待っていたことを悟らせないことが肝要だ。



「それだけ貰えば数年働くだけで遊んで暮らせるわね」


『少なくとも弊社以外で裕福な暮らしは難しいかと。大型浮遊都市から離れた小中の浮遊都市で、非正規で細々と暮らしたいのであれば構いませんが、堕落した英雄を非正規でも雇用するとは思えませんし、ルィル様であれば知名度は随一。後ろ指をさされて暮らすことになりますよ?』



 ある意味勧誘で優位な立場だからこそ、ここぞとばかりに煽りを入れてくる。


 これが除隊する前であれば憤慨して通話ボタンを切るところ、後ろめたさがあるため切りにくくなる。


 ルィルは敢えて通話を切った。


「演技とはいえ、金で動くとなると自己嫌悪になるわね」


 ホーム画面に戻った画面を見ながらルィルは嘆息する。


 これも駆け引きの一つだ。


 ここで報酬に目が眩んで煽られようと勧誘に乗っかれば主導権は向こうにあるとなる。雇用主になるのだからそれは自然だが、元々誘っているのは向こうの方だ。


 餌を目の前に吊るされようと、誘惑に惑わされず終始ルィルが主導権を握っていなければならない。


 それに今まで頑なに断って来たのに、とんとんと勧誘に乗れば向こうもまた疑いを抱かせてしまう。


 もっとも、向こうもそれを分かった上でしているだろうが。


 これは化かし合いだ。


 お互いに本音は分かっていながらも、確証を得ていないために探り合いをしながらどちらが先に証拠を手にする。


 敵陣で活動する分ルィルが不利だが、アンチエミエストロンやウィスラーの証言とバーニアンにはないアドバンテージもある。


 なにより陰から見守ってくれている仲間達がいるのだ。


 単独潜入であっても不安はない。


 時計を見て、そろそろかとルィルは着信履歴から先の電話に折り返しの電話を掛けた。



『チャリオス人事部レイミーです』


「ルィルよ」


『考え直してもらえましたか? それはそうですよね。不名誉除隊では年金も受け取れませんし、再就職も厳しいですね。結婚して主婦として生きる道もありますが、ルィル様の経歴ではそれもしないでしょうし』


 ルィルから連絡したことで主導権を握れたと思ったのか、より煽りを入れてくる。


 再び通話を切った。


「この女、自分の立場勘違いしてない?」


 演技だろうとそれを言われては通話を切るのは自然の動きだ。


 すると今度はチャリオスから着信が来て、今度はすぐに出る。


「あなた、人を馬鹿にするのが趣味なわけ?」


『いえ、そんなことは……』


「確かに私は軍規に反したけれど、だからってあなたに馬鹿にされる筋合いはないわ」


『すみません』


「勧誘の件には前向きに考えるけれど、あなたとは話したくないわ。他の人と代わって」


『……分かりました』


 向こうも向こうでここまでは織り込み済みであろう。


 でなければここまで露骨な煽りはしない。


『では折り返しお電話します。一旦失礼します』


 本当に堪えたのか演技か、先の声とは打って変わって落ち込んだ様子で通話は切れた。


「とりあえず初動はこれでいいかな?」



 このやり取りで勧誘に乗っかりつつも、金だけでコントロールはさせない旨は伝えられたつもりだ。


 一応向こうからの催促だからチャリオス自体の入社は可能だろう。


 次の問題はチャリオス本社か支社、どちらに配属されるかである。


 さすがにペオが微塵も関わりのない辺境の支社に配属されてはこの潜入捜査は無駄に終わる。だがそうはならないとルィルたちは予測していた。


 十五倍もの収入を自ら発言しておきながら収益が限られる支社に送られることはまずない。仮にイルリハラン軍からルィルを引き抜くだけだとしても、一尉官を抜いたところで影響はほぼないし、影響力もさほどないから捜査に関しては低速になろうと対策への影響はなかった。


 ルィルが敵側だとしても、高くの給金で手に入れたとしても辺境に追いやっては損でしかない。


 間違いなく本社に配属されるはずだ。


 携帯電話を目の前に腕を組んで着信を待つこと十五分。


 着信が来た。



「…………もしもし」


『チャリオス人事部チーフのウリスです。ルィル・ビ・ティレナーの携帯電話でよろしいですかな?』


「ええ」


『先ほどは担当が不愉快な言動をしてしまい申し訳ありません。責任者として謝罪します』


「そちらは私を雇いたいのか貶したいのかどちらなのかしら」


『彼女には厳重に注意いたします。これからは私が対応させてもらいます』


「そう。さっきの人には伝えたけれど、勧誘に関しては前向きに考えてるわ。プライドだけで食べてはいけないから」


『では契約についてお話をしたいので、お手数ですがチャリオス本社までお越しいただけますか?』


「もちろん構わないわ」


『今お住まいはどちらに?』


「ロコトスよ」


『ロコトス…………海岸から一万四千キロと離れておりますね。では海岸沿いの浮遊都市ヤーラットの空港に向かってもよろしいでしょうか。そちらより本社宛てのロケット旅客機を手配させてもらいます』


「いいけど、明日出発しても数日は掛かるわよ? 便によってはもっと掛かるかも」


『到着予定日が分かりましたらこの番号にお電話ください』


「分かったわ。ただ、一つ伝えておきたいんだけど」


『はい、なんでしょうか?』


「もし多額の給料をダシにしてイルリハラン軍や日本の機密情報を聞き出そうとするなら減額して構わないわ。この前のは売り先が売り先だったからしてしまったけど、チャリオス相手なら言い値でも言わない」


『分かりました。では連絡をお待ちしてます』


 そして通話は終了した。



「……とりあえず本社への道は繋がったわね」


 埋め込まれた通信機によってエルマ達もこのやり取りは耳にしているだろう。一方通行だからエルマたちの反応を知ることは出来ないが、きっと聞いてくれているはずだ。


 エミエストロンを警戒して独り言でも報告的なことを自身に言うことは控え、ルィルは再び旅支度を始めた。


 まずはジェット旅客機で最寄りのロケット旅客機空港のある浮遊都市へと向かい、ロケット旅客機でヤーラットへと向かう。


 チャリオス本社はシィルヴァス大陸の南方海域。直線距離でも五万キロは離れている。


 一度大気圏を越え、低軌道飛行して再突入するロケット旅客機でなければ七日近くは掛かるからこれが最短だ。


 パソコンを手早く操作してヤーラットへの最短ルートを検索し、席の有無を確認してオンラインでチケットを取った。


「さて、行きますか」



 舞台は敵地のど真ん中。


 危険以外の要素は一つもない。


 気分は上々。決意も覚悟もある。


 目的は卑劣なテロ行為を証明する物的証拠だ。


 大勢の命と無念。共にいけない仲間達の想いを背負って、決して表舞台に出ることのない戦いに、ルィルは挑む。

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