第39話
聖なる夜は、高級レストランで夜景を見ながら、恋人と過ごす。
誰もが夢見る事だろう。
でも、それは僕の性に合わない。
僕のような陰キャラがやっても、後ろ指を差されるだけだ。
ああいうのは、美男美女がやって絵になるのだ。
言われなくてもわかっている。
なので僕は、聖なる夜はおこたにはいって、鍋を囲んでの、
差しつ差されつが、理想の過ごし方。
そして、ゆげの向こうには、彼女の笑顔がある・・・
それば僕の夢。
夢なのだが・・・
「どうや、よっちゃん。惜しいやろ?鍋を囲んでの食事は」
ゆげの向こうには、瀬梨お姉ちゃんの笑顔がある。
確かに、かわいい。
でも、昨日会ったばかりで、彼女ではない。
「まずは、野菜からや」
「野菜?」
「それから、お肉。後、これな・・・」
瀬梨お姉ちゃんは。ウィンナーを出した。
「よっちゃん、鍋のウィンナー好きやろ?親御さんから訊いてんで」
スコットランドにいる両親。
元気かな。
ふと家族が懐かしくなる。
春先まで、家族で鍋を囲んでたな。
取り合いになっていたが・・・
「瀬梨お姉ちゃん」
「なんや?」
「本当に関西人?」
「せやで」
「でも・・・」
不思議に思う。
「でも、地元離れて長いからな。忘れているところもあるんや」
「いや、忘れないでしょ?」
「東京来た時、方言で笑わるのが嫌でな。必死に隠したんや」
「そうですか・・・」
「でも、それは間違いやったな。方言は大事にせな」
家族とも、こんな他愛のない会話をしていたな。
「ありがとう」
心の中で呟いた。
言葉にする勇気は、なかった。
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