第38話

「ほな、初めよか」

「何をですか?」

「鍋の食べ方。うちがしっかり伝授したる」


伝授って・・・

鍋ぐらい好きに食べさせてほしい。


「ほな、温めなおそか」

「瀬梨お姉ちゃん」

「なんや?よっちゃん」

「僕、猫舌・・・」

「そんなん。知ってる」

「じゃあ、何で」


瀬梨お姉ちゃんは、人差し指を立てる。

「治しとかんと、社会生活でけへんで」


猫舌でも、出来ると思う。


「あかん。そのために、鍋にしたんや」

「したって・・・ミスリードですか?」


笑顔が怖い。

どうやら、本当のようだ・・・


「でも、さっき僕に合わせるって・・・」

「でも、うちの好きにしたい」


我がままだ・・・


「冗談や。ある程度温まったら、火はとめるさかい、安心し」

「じゃあ、鍋奉行というのか?」

「食べる順番や。うちはたらふく食べたらから、しっかり伝授したる」


いえ、結構です。


「ほんまはな、よっちゃんともっと大切な事を教えたいんや」

「何ですか?」


「温もりの向こう側や」

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