第21話

太宰治作の「走れメロス」


「先生、いつ読むんですか?」

「田上くん、今です」

「感想文は?」

「今日中に書きなさい。ていうか、授業中に」

「無理」

「だめ」

「先生の言う事聞きなさい」


こちらを、睨みつける先生・・・


「なずな先生・・・」

「何ですか?」

「性格、変わってませんか?」

「教室は戦場です。戦場では戦士らいくありなさい」


どういう理屈だ・・・


「えーと、走れメロスと・・・」

「よろしい。では、読みなさい」

「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくの王を除かなければならぬと決意した・・・」

「黙読しなさい」

「なずな先生、わがままですね」

「他の生徒に迷惑です」

「僕しかいません」

「先生に迷惑です。黙読しなさい」

「へいへい」

「返事ははい」

「はーーーーーい」

「伸ばさない」

「はい」

「よろしい」


わけわからない・・・


「・・・おしまい」


「先生、読みましたよ」

「早いね」

「速読は得意です」

「初耳」

「言ってませんから」


先生から、原稿用紙を渡される。


「はい。感想文」

「今ですか?」

「はい。宿題にはしません。残り時間で、書き上げなさい」

「どのくらいの文字数ですか?」

「君に任せます」

「了解」

「了解?」

「はい先生」

「よろしい」


仕方ない、書くか・・・




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