新鮮なトマトジュースをお出し!・

「あっ、しまった……!?」


「どうしたの?」


「そろそろバイトの時間だ! こうしちゃいられん、早く行かないとヤバイ!」


「あら、本当だわ。間抜けな下僕2号ね、何のために部屋に時計があるのかしら?」


 彼女は慌ててる様子の彼を見ながら、テーブルの上に置いてあった目覚まし時計を手に取った。


「それにしてもこの目覚まし時計、センスが無いわね。もうちょっとエレガントなものに換えなさいよ?」


「どうせ俺は貧乏学生ですよ、目覚まし時計に使うお金なんてない!」


「まあ、開き直り?」


「そうだな、宝くじくらい当たれば買い換えてやってもいいぞ?」


「宝くじ? 何かしらそれは?」


 陽介は仕事に行く準備をしながら、彼女と他愛もない会話をした。そんな時、急に頭が痛くなった。


「いって……!」


「あら、どうしたの?」


「っ……! なんか頭にタンコブが……!」


 陽介は自分の頭を片手で触ると、痛がった様子で彼女に話した。黒薔薇姫は立ち上がってテーブルから離れると、不意に彼の頭を擦った。


「まあ、大きなタンコブね。頭に何かぶつけたの?」


「んー。そういえばさっきトマト男と戦った時、棚にぶつかって頭に缶詰めが何個か落ちてきたような?」


 彼は思い出したようにさっきの出来事を話すと、黒薔薇姫はプッと目の前で笑った。


「貴方ってホントに間抜けね。こんなに大きなタンコブが出来てるのに、今まで気づかなかったの?」


「ちょっ、いきなりわらうなーっ!」


 目の前でバカにされると、陽介はムキになって言い返した。


「これはだな、勲章だ! 傷は男の勲章ってよく言うだろ!? つまりそういうことだ…――!」


「まあ、凄いお馬鹿な例えね。思わず呆れてしまうわ」


 彼女はそう言って呆れた表情で呟いた。陽介は上着を羽織ると、黒い鞄を肩に下げて玄関へと移動した。そして玄関の前でスニーカーを履くと、彼女に背中を向けたまま話した。


「今日は夜までバイトが遅いから、先に寝ててもいいからな?」


「陽介――」


「ん?」


 彼女に話しかけられると、不意に後ろを振り返った。すると、ぽっぺたに軟らかい感触が触れた。


「えっ……!?」


 それは一瞬の出来事だった。後ろを振り返ると、黒薔薇姫が陽介のぽっぺたにキスをしたのだった。軟らかい唇の感触に胸がドキッとすると、顔を真っ赤にさせながら彼は驚いた。


「なっ、なっ……何っ!?」


 驚いてる彼を見ながら、黒薔薇姫は小悪魔な表情で笑って話した。








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