新鮮なトマトジュースをお出し!

『おい、そこのお前止まれっ!!』


 陽介は最後のトマトが入った袋を持って行かれそうになると、とっさに男を呼び止めた。すると大柄な男が後ろをゆっくりと振り向いてきた。よく見ると、筋肉ムキムキの大柄な男だった。しかもノースリーブに短パンと言ったラフな服装だった。毬栗頭の筋肉ムキムキの男を目の前にすると、陽介は呼び止めたことを一瞬にして後悔した。


「マ、マジかよ……!?」


 どうみても力の差では相手に敵わないと悟った。むしろ、喧嘩を売ったら間違いなく自分の方が体系的にも不利な状況だった。陽介は毬栗頭の筋肉ムキムキの男を目の前に、顔から思わず冷や汗を垂らした。


(なんだ)

「トマ~ト?」


「ッ……!?」


 筋肉ムキムキの男は、謎の言葉で彼に返事をするとそのまま近づいてきたのだった。呼び止めた以上、引き下がることもいかずに、陽介は勇気を出して男に話しかけた。


「おっ、おい……! ちょっと待てそこのガチムチ野郎! 一人でトマトを全部買い占めるんじゃねぇ、最後のひとつくらいそこに置いて行け!」


(なんだと)

「トマ~~?」


 陽介がそう言って必死で訴えると、筋肉ムキムキの男はカゴからトマトが入った袋を片手に威張り返した。


(このトマトは俺のだ。誰が渡すか)

「トマトトマト、トマ~ト、トマト!」


「な、なにぃ……!?」


 陽介は男の謎の言葉を雰囲気のみで解釈すると、負けじと言い返した。早くトマトを買って帰らないっと黒薔薇姫に怒られる。ついでにご褒美のキスも貰えない。そんなヨコシマな思いが見え隠れする中、陽介は男にトマトを置いていけと必死で訴えた。



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