新鮮なトマトジュースをお出し!
――黒薔薇姫の為に朝からトマトを買いに街に繰り出した。でも朝の6時じゃ、どこのお店も開いていない。商店街の方に行っても八百屋さんは開いていなかった。そして、困り果てた俺は駅前にあるスーパーマーケットに向かった。
さすが24時間営業。これならすぐにトマトを買える。そして、買ってきたついでに彼女は俺に感謝するだろう。
「まあ、美味しそうな新鮮なトマト! さすが陽介だわ、貴方って見かけによらずに頼りになるのね?」
「はははっ。なーに、この俺様にかかれば新鮮なトマトなんて直ぐに手には入るさ! だから黒薔薇姫、いつでも俺に頼んでいいぞ!?」
「まあ、なんて頼もしいの陽介……! お礼にご褒美のキスをあげるわ!」
「えっ……?」
「ほら、ジッとしてなさい――」
その瞬間、彼女からご褒美のキスを陽介は唇から貰ったのだった。
「な~んてな、ムハハハハハハッ!」
陽介は自分の妄想の世界に入ると、彼女から誉められると言った単純な妄想を頭の中で膨らませた。そして、そのまま電信柱に手をつくとスケベな顔で笑い続けた。
「よし、さっそく黒薔薇姫の為にトマトをGETだぜ!」
彼はそう言って意気込むと、スーパーマーケットの中へと入って行った。店内は広々としていた。そして、どこか清潔間が漂っていた。朝の店内は買い物客が少なかった。陽介は買いものカゴを片手に野菜コーナーへと真っ先に向かった。学生でアルバイトで、毎月ギリギリの生活をしていた彼には、スーパーマーケットは無縁の場所だった。滅多な時にしか訪れず。買い物はほとんど、商店街にある安いお店で買い物をしていた。野菜コーナーへと向かうと、野菜の値段に彼は驚いた。
「えっ、キュウリが3本で280円……!? マジかよ、高~っ! これだったら商店街で買った方が全然安いじゃないか!?」
陽介は野菜の値段に驚くと、辺りをキョロキョロしながら他の野菜の値段もチェックした。
「――それにしてもトマトはどこだ? 早く買って帰らないと、黒薔薇姫に殺される」
そう言ってポツリと呟くと、トマトが並べてある棚へと向かった。
「確かこの辺にあったよーな……えっ!?」
その瞬間、目の前の光景に体がピタリと固まった。彼が見たのは、大柄な男がトマトを一人で大量に占めしている姿だった。大柄な男が持っていたカゴの中には大量のトマトの袋がいくつも入っていた。そして、彼は棚から最後のトマトが入った袋を手に取るとカゴの中にポンと入れた。それを見た瞬間、陽介は急いで彼のもとに慌てて駆け寄ったのだった。
「ちょっと待った~~っ!」
「ん?」
大柄な男は陽介に呼び止められると、ゆっくりと後ろを振り返った。
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