第22話 1950FL
PanheadはKnucklehead の次世代のエンジンを搭載したモデルとして1948年に発売された。エンジンのロッカーアームカバーが浅い鍋を伏せたような形状をしているのでPanhead と呼ばれる。特に1948年のファーストイヤーモデルはスプリンガーフォークやリアリジッドのフレームなどエンジン以外はほとんどKnucklehead と同じ外観をしていることから、ヨンパチと言われて人気がある。
僕の目の前にあったPanhead は1950年のHydra Glide だった。フロントフォークが油圧のテレスコピックになったモデルである。リアはリジッドのままだった。Hydra Glide とは油圧のフロントフォークで滑るように走るという意味だろうか。Harley Davidson はこのGlide という名称が気に入ったらしく、その後もDuo GlideやElectra Gride といったモデルに引き継がれていく。
この車両は色は黒で、やはりオリジナルペイントだった。保管が良かったのか、塗料の質が良くなっていたのか分からないが、赤が日焼けして煉瓦色になっていた僕の47FLに比べると艶があって綺麗な状態だった。
さすがにKnucklehead の後では、それほど威圧感は感じなかったが
(笑)。
Knucklehead に比べるとずいぶん大きくて重そうだな、というのが僕の第一印象で、エンジンをかけてもらうと異音もなく調子は良さそうだった。
僕はこのHydra Glide を購入することにした。すごく気に入ったというよりはKnucklehead にけりを着けて早く次に進みたいという気持ちが強かったように思う。
接客担当の奥さんが、Knucklehead との交換で良いと言ってくれたのはありがたかった。同じような程度なら、Panhead はShovelhead に比べれば価格が高いがKnucklehead に比べれば、はるかに安かった。それでも実際、下取りとなれば、かなり金額が下がるのが常だから本来交換ということはないはずで、もともとの千葉のお店が程度の良い車両を輸入代行という形で良心的な値段で僕に売ってくれたことがここで生きた。
この50FLをハンドクラッチ、フットシフトに変更してもらって、僕は乗り始めた。
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