第4話 カスタムフリーク4

僕が今までカスタムをした車両の中で一番お金がかかったのは、ハーレーダビットソンである。車両本体が高価であるし、カスタムパーツもたいがい高い。そしてバイクのパーツの他に、革ジャンやブーツ、レザーウォレットなどハーレーに乗るのにお約束のスタイルがある。ハーレーは単なるバイクではなく、乗り手のファッションも含めたトータルなライフスタイルなのだ。


今はどうか知らないがハーレーを新車で購入すると、ぶ厚いカタログがもらえた。その中には、実用的なオプションパーツやスクリーミングイーグルという性能アップのパーツ、ハーレー純正の革ジャンやウェアが掲載されている。


それ以外にも『Vibes』という雑誌の別冊で『Biker’s Correction 』(だったかな?)という本があって、ありとあらゆる革ジャンやブーツ、レザーウォレット、バッグが掲載されていて、ずいぶん物欲を刺激されたものだ。


僕が最初に買ったハーレーは、スポーツスター883である。これは純正の風防やミスミエンジニアリングのレバーを入れた位のカスタムで、しばらくはおとなしく乗っていたが、ビッグツインに興味が出て乗り換えることにした。当時はツインカムエンジンが出たばっかりで試乗に行ったのだが、いわゆるハーレーのイメージとは違って大人しくてスムーズな感じだった。


ちょっと納得できなくて、一世代前のエヴォリューションエンジンのハーレーにしようかと思って中古を探し始めたんだけど、みな同じことを思っているのかエヴォのハーレーの中古は高価で玉数も少なかった。またほとんどの車両は何らかのカスタムがされていて、それもあまり気に入らなかった。


身勝手なようだけど、僕の場合カスタムのベースにする車両はゼロから始めるという意味でノーマルが良かった。


結局、岐阜県のお店でほぼノーマルのダイナを見つけて購入した。この時は新幹線で日帰りで見に行った。


なぜダイナにしたのか?というと、あまり意味はない。たまたまほぼノーマルで見つかったのが、そのダイナだったというだけだ。当時ツーリングモデルはあまりカスタムパーツがなかったので検討外だったが、別にソフテイルでも良かった。


そのダイナを川口市にある走りを重視したカスタムをするお店に持ち込み、色々いじってもらうようになった。ミクニHSR42のキャブレター、オーリンズのリアサスペンション、APレーシングのブレーキキャリパー、K&Hのシート、モーターステージのマフラー、パフォーマンスマシーンのビレットホイールなどなど。


この中で満足度が高かったのはミクニHSR42のキャブレターとオーリンズのリアサスペンションだったな。オーリンズの良さは知っている人は説明しなくても分かってもらえると思う。ミクニHSR42のキャブレターも良かった。エンジンのノッキングがなくなって発熱も抑えられ、走りが良くなった上にどういう訳か燃費も悪くならなかった。お店の店主曰くノーマルのキャブレターは排ガスの関係か、かなり口径が小さくガスも薄いセッティングなのだそうだ。後のパーツはまあ、カッコ良くなって性能も多少は良くなったという感じ。


ハーレーのカスタムパーツはだいたい高価でローンを組むのもなんだから、ボーナスの時にやっていた。そうするとカスタムするのは年2回だから遅々として進まなかったね。ハーレーのカスタムをしている間は、他のクルマやバイク、自転車には全く手が、と言うよりお金が回らなかった。


ある時、あと完成までどれくらい費用と時間がかかるのか? 大きなところで残っていたのはオーリンズのフロントフォーク、どこかのビレットのスイングアーム、でショップのスペシャルオーバーホール、タンクやフェンダーのワンオフカスタムペイントで、クールブレイカーかホットロッドカスタムショー辺りにお店の看板で出展するというのがお店の常連の最終的なコースだった。それに至るお金をまじめに計算してみたら正直馬鹿馬鹿しくなってしまった。たぶん僕は自分が思っているより、せっかちな人間なのだろう。カスタムにそんな時間と費用を費やしたくなくなった。


ここに至って、僕はカスタムをしなくても楽しめるバイクを探し始め、旧車にたどり着くことになる。旧車の話もいずれ書きたいと思ってはいる。


昔はハーレーの似合うカッコいい大人になりたいと思っていたものだが、今の年になると、重い革ジャンや革のロングブーツは鬱陶しいし、重いバイクを取り回すのもかったるい。今、ハーレーに乗るお金があったら? 老後のために貯金するね、たぶん。

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