第2話 カスタムフリーク2
僕は30歳を過ぎた頃、憧れてたクルマを買った。1991年式ローバーミニメイフィア。 1000ccのATで色はブリティッシュグリーンだった。練馬にあった英国車の専門店で中古で買ったんだけど、買った時はカスタムなんて全く考えてなかった。お店のショールームに色々雑誌が置いてあったんだけど、ミニフリークというミニの専門誌があった。それをパラパラと見ていて、ミニのカスタムが人気だということを知った。僕としては願ったりかなったりではあった。
最初にやったのは、大阪のガレージアウトデルタのブレーキペダルカバーだった。ミニのブレーキペダルは踏み面が小さくて強く踏むと足が疲れたり痛くなったりした。まあ足つぼマッサージをしている感じだ。このカバーを付けると踏み面が広くなって、そんなこともなくなった。取り付けはノーマルのゴムのカバーを外して、新しいカバーをボルトで固定するだけだったので、自分でやった。
自転車のカスタムは自分でやっていたけど、クルマに関しては作業ミスのリスクを考えると自分でやる気にはなれなかった。自分でするのは、走るのにはあまり関係ない、ちょっとしたアクセサリーを付ける位にとどまった。
ラバーコーンをコイルスプリングに換えたり、各部のブッシュを強化品に換えたりして、やることもあまりなくなってきた頃、ミニフリークで1000ミニをツインキャブ化してジムカーナをしているという記事を読んだ。
エンジンに手を付けるのは、お金がかかるし耐久性も気になる。ミニのツインキャブはクーパーなどの車両では標準装備で、リスクも少ないように思えた。僕はその記事に紹介されていた千葉のショップに行って色々話を聞いた後、作業を依頼した。
ツインキャブ化されたミニはとても速かった。帰りの高速道路では、そのスピード感に感激したものだ。だが、それは長くは続かなかった。リッター9キロほどだった燃費は一気に6キロまで落ちてしまい、春になって暖かくなると水温計は常に標準より上がってしまって、高速道路や渋滞の時は水温計から目を離せなくなった。オーバーヒート寸前でサービスエリアやコンビニにミニを停めることもしばしばだった。
良く良く考えれば、僕はミニにスピードなんか求めてなかった。今さら元のシングルキャブに戻すこともならず、僕はこのミニに冷めてしまった。
今まで色々なカスタムをして、大満足だったり、それほどでもなかった時もあったけど、失敗したと思ったのは初めてだった。
僕は、このミニで、カスタムというのは得てしてやりすぎてしまうという教訓を得ることになった。そして同時にやり過ぎにならないのは、とても難しいということも。
今の僕はクルマのカスタムはしていない。クルマのカスタムは贅沢な遊びで、今の僕には、そんな経済力も元気もないからだ。
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