沙魚人の問わず語り
沙魚人
第一部
第1話 カスタムフリーク1
僕はカスタムが好きだ。良さそうなパーツを探す楽しみ。交換してカッコが良くなったり、性能が向上したように感じた瞬間。そして、世界に一台だけの自分の一台に仕上がっていく喜び。カスタムは自由の象徴なのだ。
カスタムといっても色々あるけど、ショップが作るコンプリートモデルや原型を留めない様な物もあるので、ここでは基本的に車両の原型を生かして、部品を交換するなどして自分の好みに合った車両にする行為としよう。
車両がもう一台買えるくらい、どころか車両をはるかに超えるお金をかけちゃったりして、バカじゃないの?とか言われたりするけど別にいいんだ。だってカスタムはそういうものだから。
僕がカスタムを始めたのは、自転車が最初だ。中学に入った時、親がお祝いにブリジストンのユーラシアという入門向けのランドナーを買ってくれた。ランドナーというのはフランス式の旅行用自転車のことで、ドロップハンドルでシティサイクルと同じくらいの太さのタイヤを履き、ドロヨケとキャリア(当時はラックとは言わなかった)の付いた比較的軽装備で中距離のツーリングをするための自転車という位置付けだった。
ちなみに当時はスポーツサイクルというのは、ロードレーサー、スポルティーフ、ランドナー、キャンピングしかなかった。日本でマウンテンバイクが出てくるのは、もう少し後だ。野山を走る自転車として、パスハンターという車種もないではなかったが、フラットハンドルでドロヨケのないランドナーという感じだったな。
あと同じブリジストンからロードマンという自転車があって人気があったけど、すごく重くてランドナーの見た目をしたシティサイクルと言ったところだった。
ところで勝手なこだわりだけど、僕は『ママ○ャリ』という言葉は使わない。○ャリという語感が好きではないのだ。だから、シティサイクルとかタウンサイクルと呼んでいる。
子ども心にはロードレーサーが格好良く見えて、そちらが欲しかったが当時のロードレーサーはチューブのようなタイヤをリムにリムセメントという接着剤で付ける、いわゆるチューブラータイヤがスタンダードで中坊には敷居が高かった。金持ちでもない普通の家の子が乗れるものじゃなかったね。
それでカスタムの話に戻るけど、サイクルスポーツという雑誌を読んで気に入ったパーツがあると池袋のスポーツサイクルのお店に買いに行った。このお店は今もある。確か最初に買ったのは白い布のバーテープだった。ノーマルは茶色だったので、ダサいと思ってたんだ。雑誌で巻き方を勉強して、自分で巻き替えた。あまり上手くいかなかったが、白いバーテープはおしゃれで僕はすごく満足していた。だが、しばらく乗っているうちに白いバーテープは手垢で黒ずんで汚らしくなってしまって、黒いバーテープに再度巻き替えた。二回目だから一回目よりは上手く巻けた。黒は黒で引き締まって格好良いと僕は再び満足した。当時のバーテープは綿布だったので、洗って巻き直す強者もいた。
Rディレイラーやシフトレバーをシマノの600EXにしたり、ブレーキをシマノデオーレXTにしたり、シートピラーをサカエSRに交換したり、ハンドルを日東のB105に換えたりした。工賃の分のお金がなくて、サイクルスポーツを読みながら自分でやった。工具はダイエーとか西友で安い工具を買った。たまにどうにもならなくなって途方に暮れた時、父があっさり直してくれたりして、そんな時だけは父を少し尊敬したものだ。
学生のことだからお金がなくて大したことはできなかったけど楽しかった。取り替えた部品で一番高かったのは、ブルックスプロフェッショナルというイギリス製の革サドルで当時でも一万数千円した。今の価格とあまり変わらないね。
乗る方は通学に使うくらいで、あまりツーリングとかはしなかったけど。
さて、ユーラシアの話はこの辺までにしよう。自転車の話はカクヨムでは受けが悪い。次回はクルマかバイクのカスタムの話をしようかと思う。
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