形見分け

母の着ていた服の中で、傷みの少ないまだキレイなものを形見分けとして、義母に進呈。

義父のMRI検査の日だったので、さっそく上着を着て外出してみる。

話しながら歩いていたがふと義母が隣にいない。

振り向くと少し遅れて、なにやら上着をさすりながら歩いてきた。


「これ、私のじゃないね。誰かの持ってきちゃったかな」


母の形見分けだからと説明して着てもらえるとありがたいというと


「そうなの。じゃあ、ありがたくもらっておくね」


数歩歩いて


「これ、誰かにもらったのかな?」


病院の待合室で


「あら、誰かの着てきちゃった」


「暑いから脱いでいようかな。これ誰にもらったやつだろう」


帰りに食事に寄った先で


「これ誰のかわからないけど、持って行っておく?」


「あらー誰にもらったやつかしら」



アラームのスヌーズのように一定の時を刻む。

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