【3000文字美人】クィア・アイ in Japan 疲れ気味の日本に彩りを添えに来た、五人のゲイ!

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

あなたは決して、ダメじゃない!

 この番組が日本に来ることを、オレは心待ちにしていた!


 5人のゲイ男性「ファブファイヴ(Fab 5)」が、

「冴えない男女を美容・ファッションによって垢抜けた感じにする」

 という、リアリティ番組だ。

 家を改造する「ビフォー・アフター」のファッション版というと分かりやすいか。


「クィア・アイ」の「クィア」とは、セクシャルマイノリティの総称「LGBTQ」の「Q」の部分だとされている。


 自分がどの性別か分からない人たちである、

「クエスチョニング」という意味と、

「クィア」

 という意味を持たせているらしい。


 クィアとは元々差別用語で、一言で言うと「ヘンタイ」。


 セクシャルマイノリティの方たちを「ヘンタイだ」と差別するときに使われていたという。


 だが、LGBTはそれを逆手にとって、

「自分たちはクィアだが、文句があるのか」

 というニュアンスで自分たちをそう表現しているという。



 彼らは


 ファション:タン

 理容美容:ジョナサン

 インテリア:ボビー

 カルチャー、カウンセリング:カラモ

 料理:アントニ


 それぞれ、エキスパートである。

 

 オレがこの番組を知るきっかけは、「世界まる見え」である。

 2003年から2007年まで海外で放送されたものを、見たことがある。


 そんな人気番組が、メンバーを入れ替えてNetflix番で復活!


 ファッションビフォーアフター系番組は、メジャー局、ローカル局問わず数々ある。


 が、

「志願者の内面まで美しく変えていく」

 アプローチは、あまり見たことがない。

 

 クィア・アイは、対象の内面の美しさを引き出すから、素晴らしいのだ。


 

◆「介護士に自己愛を教えるわ!」


 

 来日したゲイたちが癒やす最初の相手は、介護士のヨウコさん。


 自分の家をホスピスとして開放し、世代を超えたコミュニケーションを取れる場所として経営している。

 だが、自分のファッションや生き方には無頓着。テーブルの下で寝ていても平気だ。


 日本酒のグラスはコレクションしているのに、洗面所の鏡は小さい。しまも手持ちで老手を使えない。

「これではキレイになんてなれないわ!」

 


 ローマの休日に憧れているが、実生活はヘプバーンにはほど遠い。

 

 ファブ5は、カノジョの「強すぎる自己犠牲」に着目する。


 ずっと病室生活を続けて死んでいった姉を見て、「最期の時が過ごせる家」をめざし、ホスピスをはじめたという。


 カルチャー担当は言う


「他人に喜びを与えるときは、自分にも喜びを与えるべきだ」


 ファブ5の出した結論は


「ヨウコには、自分をケアする時間すらない。我々が、それを与えるわ!」

 


ポイント:自分を許す


 番組ガイドの水原希子と一緒に、ホテルのスイートでファッションショーを行う。

 このとき、太った体形を気にしているヨウコさんに、ゆったりしてもキレイに見える洋服をチョイスして上げる。

 この精神が素晴らしい。

 


 ベーカリーに行ってアップルパイを焼く。


 そうやって、ヨウコさんの心も解れていく。 


 だが、姉の夫と仲違いし、甥っ子と離ればなれになっていた。


 ヨウコさんをジェラート屋に連れてきたカウンセラーは


「大切な人が死ぬと、自分はもっと何かできたのではないかと傷つく」


「だが、あなたは精一杯やったんだ。自分の為に生きなくちゃ」

 

「大切な人が優れていたとしても、あなたが劣っているわけじゃないんだ」

 

「あなたは素晴らしい仕事をしている。もっと誇りを持っていい」


 とアドバイスをする。

 

「自分を許すって言ってごらん」

 カウンセリングを受けて、ヨウコさんは自分を許すことを覚える。  


 最後に、彼はローマの休日に憧れているヨウコさんを、ベスパに乗せる!

 この粋な計らい!



 美容担当は、父親を自宅で亡くした。そのときの介護士に感謝している。

 彼はその介護士たちと、ヨウコさんを照らし合わせた。


「死にゆく患者に幸せを添える介護士が幸せじゃないなんて、ありえないわ!」


 だから、精一杯ハサミを振るう。


 

 インテリア担当のサプライズは、ヨウコの部屋。


「ヨウコは患者の為に、自分のベッドすら明け渡していた。だから、彼女専用の部屋を用意したよ」


 さらに、庭に植えたオリーブの木。姉と語らうために用意された。


 ヨウコは自分を許すことにより、新しい一歩を踏み出した。



◆「自信喪失した漫画家志望を、人生の主役にするわ!」



 日本版クィア・アイ 第三話に登場する、二人目の女性は、漫画家志望のサエ。


 彼女の妹と母親が依頼人だ。


 漫画家志望なのだが、過去のイジメが原因で自分を信じられない。


 部屋は妹と共同。ベッドは空箱とペット用のケージで埋め尽くされている。


 母親からのリクエストは「大人の女性としてちゃんとして欲しい」とのこと。

 

 身体のラインが目立つから、細身のファッションは苦手。

 

「お尻が大きく見えるのはイヤ」

「何を言ってるの? 海外ではお尻を大きくするために、高いお金を払うのよ!」

 


 女の子の絵が多いことに着目したカウンセラー。


「理想の自分を描いている。自分がこうだったらいじめられないだろうという願望があるのかも」

 カウンセラーは結論づける。

「もし、憧れの女性に見られたいなら、否定的な自分を克服することだ」

 


 料理担当は、サエが家で料理をしないことに注目した。

「昔失敗して、モノを大事にしないと思われているから、厨房に立たせてもらえない」

 とのこと。

「君は自分に厳しいね」


 親が厳しいせいで、自分を責めているのではと、料理担当は考えている模様。

 


ファッション担当

「彼女は美しいくびれがある。隠すなんてもったいないわ! 誇るべきよ!」


 買い物に行って、カエが「自分を隠すために服を選んでいると判断した。

 他人の意見に流されず、自分で「カワイイ」と思う洋服を選ばせた。


 お尻の大きさを気にしてパンツを選ばないカエに対し、

 

「一番魅力的だと思う身体の部分を強調するには、よく見せる服を着てみて、どう見えるかを考えるの」

 と、アドバイスをする。


 選んだのはゆったりとした服だが、下品に見えない。


 次はパンツ。いざ穿いてみると、笑顔が浮かぶ。


 無理にホットパンツを着せるといった安易な改造ではなく、彼女の性格や自主性に合わせたコーディネートに注視した。


 そのおかげで、カエは自由に自分の着たい服を着れるように頭を切り替えられるようになった。


 

カウンセラー

「理想を持つことは悪影響を与える! 否定的なイメージを克服して欲しい」!」


 

 自分はどんな困難にも打ち勝つことができると思える場所、「柔道場」へ連れてきた。


 自分の弱い部分はどこか、と問いかける。


「ブスだとか、真に受けなくていいところを真に受けてしまう」

「そうか。じゃあ、君と同じ、外見コンプレックスを持っていることで悩んでいた人を連れてきたよ」

 と、カウンセラーが連れてきたのは、なんと渡辺直美!

 ありのままの自分に自信と誇りに満ちていると、連れてきたのだ。

 カエにないのはコレだと。


「こんなわたしでも好きだって入ってくっる人が要るんだと思えるようになって強くなれた。自分にぶつけられるネガティブなパワーを、自分のエネルギーにした」

 ナオミはそうアドバイスをする。

 

 自画像を描いてくるように宿題を出していたが、カエは目しかかいてこなかった。


「自分の体型から目をそらし続けると、ありのままの自分を受け入れられなくなるよ」

 と、カウンセラーは助言する。

「ゼッタイできると思うよ!」

 ナオミはそう励ます。


 続いて、ファブ5全員も参加して、柔道の大外刈りを習う。



 最終的に、彼女は自分の全身を描けるように。

 

 

ヘア担当

「髪型やメイクは自分を反映させるの! だからこそ『自分は美しい』って思えるわけ!」


 美容学校に通っていたころのこと。

「初日に先生ができるまでできるフリをしろとボードに書いたわ」

「新しい技術を習得するまで、できるフリをしながら学べと教わったの」

「だから本当に自信が付くまで、『自信があるフリ』をするわけ!」



料理担当

「彼女は親と一緒に料理すべきだ。互いを理解するには、料理が一番よ!」


 野菜中心の麻婆豆腐を、母親と一緒に作らせる。


「母親は、カエを「部屋を片付けられない怠け者と思い込んでいるわ」

「それは、カエの心の痛みを理解していないから」

「ボクが家族と大事な話をする場所は、決まってキッチンか食卓だったわ」


 

 料理担当は、食事の席で自分の身の上を話す。

 

「ボクは昔、悪ガキだった。心の悩みを親に打ち明けられないだけだったのに、親にただの反抗期と見なされていたわ」

「カエは子どもの頃の苦悩を今でも抱えて大人になったの。隠しているだけで、痛みは消えたわけじゃないのよ。親に悩みを話すのは、大変なことなの」


 母親も、親に悩みを打ち明けられないタイプだった。

 

「親とうまくいかないのは、コミュニケーションが足りていないか、お互いの理解が足りていないのよ」


 カエの母に、料理担当は問いかける。

 

「カエにちゃんと愛情を伝えられている?」

 

 その場で母は、愛していると伝えた。

 


 インテリア担当

「本当のインテリアというのは、人生の見方も変わることなの! 人生をも変えるの!」


 彼はカエの部屋を、カオジョの好きな映画「グランド・ブダペスト・ホテル」さながらにコーディネートした。



◆総括◆

   

『クィア・アイ』の魅力は、


「対象に自分の価値観を人に押しつけない」


 ことと、


「対象を否定しない」


 ことである。

 

 対象を全面的に肯定し、否定的な言葉を投げかけない。

 優しくエスコートすることに、この番組の魅力がある。


 テレビ番組だと、やたらキツい言い方をしたり、過剰な演出で盛り上げようとする。


「クィア・アイ」から学ぶべきは





「あなたは決して、ダメじゃない」





 というスピリッツだ。


 それにより、対象の背伸びしない、等身大で自然な美しさが引き立つのである。


 


 もう一度、言う。


「あなたは決して、ダメじゃない」

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